報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「JR東海の正式名称は東海旅客鉄道株式会社だが、鉄の字が違う」

2019-04-23 19:01:30 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月21日07:43.天候:晴 JR東京駅・東海道新幹線ホーム]

〔新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。まもなく14番線に“こだま”637号、新大阪行きが到着致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に止まります。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は1号車から7号車と、13号車から15号車です。この電車は、全車両禁煙です〕

 先頭車の1号車のドアが来る乗車位置に立つ1人の男性乗客。
 他のホームから発着する“のぞみ”や“ひかり”は混んでいるが、“こだま”は空いている。

〔「14番線、ご注意ください。7時56分発、“こだま”637号、新大阪行きの到着です。安全柵の内側までお下がりください」〕

 N700系と呼ばれる16両編成の列車が軽やかに入線して来る。
 基本的に東海道新幹線ホームは曲がっているが、『第7ホーム』と呼ばれる14番線と15番線はもっと曲がっている。
 これは旧国鉄時代、元々はこのホームを東北新幹線に使うつもりだったからだ。
 下り方向のどん詰まりが上野方面に向いているのは、この為である。
 東海道新幹線の本数が逼迫した為、やむ無く国鉄当局は第7ホームを東海道新幹線に転用し、民営化後もそれが続いている。

〔「14番線、ドアが開きます。乗車口までお進みください」〕

 安全柵のドアが開く際、“乙女の祈り”のメロディが流れる。
 かつてはJR東日本管内で、発車メロディに使われていたこともあった。
 スーツ姿の男性乗客は、空いている自由席の2人席に座った。
 テーブルを出して、コンコースの売店で買った駅弁を広げる。

〔ご案内致します。この電車は、“こだま”号、新大阪行きです。新大阪までの各駅に停車致します〕

 男性はスーツ姿……というより、喪服姿であった。
 そろそろ昼間は暑くなる時期に黒服に黒ネクタイは、さぞかし暑いだろう。
 もっとも、新幹線車内は空調が効いているが。

〔「おはようございます。本日も新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は7時56分発、“こだま”637号、新大阪行きです。終点、新大阪まで各駅に停車致します。名古屋、京都、新大阪へお急ぎのお客様は、18番線から発車致します“のぞみ”207号をご利用ください。静岡、浜松へお急ぎのお客様は、19番線から発車致します“ひかり”463号、岡山行きをご利用ください。……」〕

 明らかにバンバン他の後続列車に抜かれる案内など馬耳東風に、男性乗客は朝食の駅弁を一心不乱に食べていた。
 で、発車時刻前に食べ終えてしまう。

 男性:「ふう……」

 見た目は20代くらい。
 発車時刻前には食べ終えてしまう。
 この時点でも、まだ1号車は窓側席ですら埋まっていない。

 男性:(食後にコーヒーでも……)

〔「……尚、“こだま”号では車内販売の営業はございません。……」〕

 男性:(マジか!?)

 男性は急いでホームに降りようとした。

〔「……お買い物等でお席を離れられる際は、現金・貴重品などは身につけてお持ちください。……」〕

 男性:(おおっと!)

 男性は急いで貴重品の入っていると思われる上着だけを持って、ホームに1度降りた。

[同日07:56.天候:晴 JR東海道新幹線637A列車1号車]

〔「レピーター点灯です」〕

 かつては“のぞみ”の車内チャイムで使用されていたメロディがホームに響き渡る。

〔14番線、“こだま”637号、新大阪行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕
〔「乗降よーし!ITVよーし!14番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ブー!という客終合図のブザーの直後に、再び“乙女の祈り”が流れる。
 こうして、“こだま”637号は時刻通りに発車した。

 男性:(“こだま”にしか乗れないんだよなぁ……。新富士駅は“こだま”しか止まんないんだから……)

 男性はスマホで時刻表を検索しながらそう思った。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、新大阪行きです。終点、新大阪までの各駅に止まります。次は、品川です〕

 TOKIOの“AMBITIOUS JAPAN!”のイントロ部分が車内チャイムで流れる。
 しかし、そんなことは気にせず、並走する在来線を横目にスマホでネットに興じる男性。
 この辺は他の乗客と同じだ。
 尚、これでこの車両がJR東海のものだと分かる。

[同日08:00.天候:晴 JR東京駅・東海道新幹線ホーム]

 敷島:「おい、本当にここに反応があったのか?」
 エミリー:「はい、間違いありません」
 敷島:「よりによって東海道新幹線か。本数が多過ぎて、対象者がどの列車に乗ったのかさっぱ分からんぞ」
 エミリー:「一足遅かったようです」
 敷島:「何ぃ?トレスできんのか?」
 エミリー:「元々微弱な反応でしたので……。ただ、ここで途切れているということは、何らかの列車に乗った公算は大きいかと」
 敷島:「あ、そう。ちょっと待て。時刻表で調べる。直近で14番線と15番線から発車した列車は……“こだま”だぁ?しかも新大阪行き」
 エミリー:「最悪ですね。駅の数が多過ぎます」
 敷島:「ま、まあ、普通に考えて次の品川で降りたってこたぁ無いだろ」
 エミリー:「名古屋や新大阪まで乗って行くのも考えられません」
 敷島:「いや、分からんぞ。混んでる“のぞみ”が嫌で、ガラガラの“こだま”に乗ったという……」
 エミリー:「雲羽監督みたいなこと言わないでください」
 敷島:「すいません」

 全くである。
 そもそも作者はここ最近、高速バスである。
 新幹線は高いからだ。

 敷島:「やっとアメリカに再度行けて、重要な情報を掴んだというのにな。こりゃお手上げだ。一旦、会社に帰るか」

 敷島は肩を竦めて、改札口への階段を下りようとした。

 エミリー:「あ……」
 敷島:「どうした?」
 エミリー:「重要なデータがヒットしました。私のメモリーの中から」
 敷島:「何だ?」
 エミリー:「本日は吉塚広美博士の命日です」
 敷島:「吉塚広美……?」
 エミリー:「KR団最後の女性科学者で、妖精型ロイド、萌の製作者です」
 敷島:「ああ!南里所長の葬式にしれっと来てた人!」
 エミリー:「そうです」
 敷島:「確か吉塚博士の実家、静岡県だったよな?」
 エミリー:「はい。静岡県富士宮市です」
 敷島:「そうだそうだ。どっかの新幹線の駅から、タクシーで向かった記憶がある。平賀先生も一緒だったな」
 エミリー:「はい。新富士駅です」
 敷島:「もしかしたら、吉塚博士の法事なんかやってるかもしれない。もしも対象者がそっちの関係者だったら、そこに行ってる可能性もあるな!」
 エミリー:「公算はゼロではありません」
 敷島:「よっしゃ!俺達も行ってみるぞ!次の列車はいつだ?」

 エミリー、自分の機能で検索する。

 エミリー:「あー、次の列車は8時26分発、“こだま”639号、名古屋行きです」
 敷島:「えっ?!“のぞみ”も“ひかり”も止まんなかったっけ?」
 エミリー:「はい。ですので、前回も“こだま”で往復しました」
 敷島:「マジか。あ、それでその対象者も“こだま”に乗ったんだな、きっと!」
 エミリー:「公算は大きいです」
 敷島:「……分かった。新富士だな。行ってみることにしよう。幸い、富士市も富士宮市もそんなに大きな町ではないから、何とかお前の機能で探し当てることができるかも」
 エミリー:「お任せください」
 敷島:「何番線だ?」
 エミリー:「18番線です。まもなく入線します」
 敷島:「早っ!」
コメント (2)
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