報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「座敷童の最期」

2019-04-21 10:18:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月10日13:30.天候:晴か曇 夜ノ森家・蔵内]

 私の前に現れた座敷童。
 恐らくこれがアクションゲームであるならば、私は手近にあった武器を手に彼女と戦っていただろう。
 いや、高橋もか。
 しかし、これは違う。
 これはあくまでサウンドの無いノベルなのである。

 愛原:「感染させられるならさせてみろ!」

 私はそう言って、あえて座敷童の顔面に左手を突き出した。

 座敷童:「……!」

 座敷童は面食らった顔になって、私の手を掴む。
 見た目は10歳くらいの少女なのに、握力は大の男並み。
 やっぱり痛い。

 愛原:「いってーな!いつまで掴んでんだよっ!」
 座敷童:「きゃっ!」

 私が振り払うと座敷童は、跪くように転んだ。

 高橋:「先生!童様に何てことを!」
 愛原:「うるせっ!」
 座視童:「なに……?どうして印が付かないの……?」
 愛原:「知らんよ!」

 座敷童は慌てたように、蔵の外へ逃げようとした。

 愛原:「ま、待てっ!高橋、鍵寄越せ!」
 高橋:「ダメです!」
 愛原:「お前、クビだ!」
 高橋:「ええっ!?」

 私は高橋の顔面を殴り付けた。

 高橋:「ガハッ!」

 女なら最低だが、男ならどこ殴り付けてもいいだろ!
 仰向けに倒れた高橋の拳銃を取り上げると、それで座敷童の背中を狙ったが、その頃には座敷童は持ち前の腕力で鍵を壊していた。

 愛原:「止まれ!」

 私は座敷童に向かって何度も発砲した。
 が、威勢の良い発砲音がするだけで銃弾の飛ぶ感じがしない。

 高橋:「先生……それ、偽物です……」
 愛原:「はあ!?」

 バンッ!(蔵の扉が開いた音)

 愛原:「あっ、待てっ!」

 扉が大きく開いて、光が差し込む。

 高橋:「ぎゃああああああっ!」

 高橋は両目を押さえてのたうち回った。
 どうやら、まともに光を目に受けたらしい。
 常人の私ですら、『うおっ、眩しっ!』と思ったくらいだからな。

 愛原:「座敷童!!」

 だが、次の瞬間、私は咄嗟に体を地面に伏せた。
 座敷童の向こう側にいたのは、武装ヘリと武装した軍人達の姿。
 座敷童目掛けて、一斉射撃される。

 それが座敷童の最期だった。

[同日14:30.天候:晴 夜ノ森家・庭内]

 善場:「愛原さん、無事で良かったです」
 愛原:「随分遅かったじゃないですか」

 夜ノ森家の内外に設置されたいくつかのテントのうち、敷地内に設置されたテントの中で高橋が治療を受けている。

 善場:「BSAAの出動要請をしていて遅れたんです。申し訳ありませんでした」
 愛原:「でもまさか、本当にBSAAが出動するとは……」
 善場:「『エブリン』というBOWを御存知ですか?」
 愛原:「『エブリン』?」
 善場:「2017年にアメリカのルイジアナ州にある農場で起きたバイオハザード事件です」
 愛原:「ああ!ニュースでもやってましたし……」
 善場:「そのバイオハザードを引き起こしたBOWの名前です」
 愛原:「ほお……」
 善場:「その亜種と呼ばれる物が、どういう経緯か日本に侵入したという情報をBSAAは受けていました。愛原さんの通報内容の中に、それと思しき情報が入っていたので、それでどうにかBSAAを出動させることができたというわけです」
 愛原:「あの座敷童が『エブリン』だと?」
 善場:「その後の調査にもよりますが、恐らくそうではないかと……」

 その時、善場氏の携帯に着信が入る。

 善場:「ちょっと失礼します」
 愛原:「はい」

 善場氏はスマホ片手にテントの外に出た。

 軍医:「ちょっといいですか?」
 愛原:「あ、はい」

 高橋の治療していたBSAAの軍医が私に話し掛けて来た。
 もっとも、BSAAは国連組織ではあるが、国連軍ではないので、軍医と言っていいのかどうかも分からないが。
 ただ、彼らの装備は殆ど国連軍と変わりは無いので、私はそう呼ばせて頂く。

 軍医:「彼の治療は終わりました」
 愛原:「おおっ!どんな感じでした?」
 軍医:「新型のウィルスに感染してましたので、アメリカから取り寄せたワクチンを投与してあります。ただ、その後遺症で目に大きなダメージを受けています。早急に眼科医の治療を受ける必要があります」
 愛原:「目に!」
 軍医:「はい。直ちに専門の病院に移送してください」

 軍医ではそこまではやってくれないわけか。
 と、そこへ善場氏が戻って来た。

 善場:「愛原さん、ちょっといいですか?」
 愛原:「あ、はい」

 私もテントの外に出た。

 善場:「まず、この家の人達は全員感染していました」
 愛原:「でしょうな。それで?」
 善場:「BSAAの警告に従わず、抵抗して来たので全員射殺したそうです」
 愛原:「マジですか……」

 人権問題とかになりそうだが、BSAAの定義として、人間がクリーチャー化した場合は『人間として死亡したものと見なす』とあるからな。
 だから、人権は喪失しているという見方をしているわけだ。
 高橋の場合は抵抗しなかった為、BSAAは射殺しなかった。
 BSAAの警告に従った場合は、『警告に従うだけの判断能力があり、つまり知性と理性が残っている。よって、人間として死亡したとは見なされない。即ち、人権は喪失していない』という定義があるそうだ。

 愛原:「残念ですね。人間だった頃は、いい人達だったでしょうに」
 善場:「ええ、非常に残念だと思います。これからBSAAが今回の事件について調査を始めるそうですので、高橋さんの治療が終わり次第、ここを離れなくてはなりません。今度は私達のヘリコプターが迎えに来るので、それでここを出ましょう」
 愛原:「先ほどの軍医さんからで、高橋にはワクチンが投与されたそうです」
 善場:「BSAAには全支部にワクチンが配備されていますからね」
 愛原:「それでも、目に受けたダメージが大きいので、今度は眼科に連れて行かないといけないそうです」
 善場:「分かりました。病院はこちらで手配しましょう」
 愛原:「ありがとうございます」
 善場:「いえ。愛原さん達の御活躍のおかげで、また日本に侵入したBOWを処分することができました。愛原さん達の功績は大きいですよ」
 愛原:「善場さん」
 善場:「何でしょうか?」
 愛原:「リサも……ああやって処分するつもりですか?」
 善場:「リサ・トレヴァーに関しては、愛原さん達のおかげで制御できています。このまま計画通りに進めば、政府エージェントとして働いてもらうことになっていますので、暴走したりしなければ、そうはしませんよ」
 愛原:「リサだけは特別、ということですね?」
 善場:「そう捉えて頂いても構いません」

 私達は日本政府機関から飛んで来たヘリコプターに乗った。
 どこの機関のヘリかは、あえて言うまい。

 高橋:「先生……すいませんでした……」

 両目に包帯を巻いた高橋が呟に言った。

 愛原:「まあいいさ。『エブリン』に感染させられた以上は、『エブリン』には逆らえなくなるって聞いたからさ。とにかく、お前は治療に専念しろ」
 高橋:「はい」

 ヘリコプターが離陸する。
 さて……依頼人には何て報告しよう。
 結局、ここの人達を救えなかったのだから、依頼人からは報酬がもらえそうにないな……。
 まあ、いいや。
 多分、報酬は別の所から出そうだから。

 善場:「……はい。そういうわけですので、今回は愛原学探偵事務所の所長さんと助手の方の活躍です。……はい」

 私は上司と連絡を取っている善場氏を見てそう思った。
コメント (4)
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