[4月10日08:30.天候:晴 夜ノ森家1F仏間]
私は気になっていた部屋があった。
その襖を開けると、そこにあったのは仏間。
高橋:「仏間ですか。さすが先生、目の付け所が違いますねぇ」
愛原:「おいおい、急に何言ってるんだ?」
高橋:「金目の物なら、仏壇の下とかいうのは常識ですよ」
愛原:「泥棒じゃあるまいし、何言ってんだ」
と言いつつ、私は辺りを確かめるようにして仏壇の下の観音扉を開けようとした。
高さは1メートルくらいしか無いので、しゃがんで覗き込むような形になるか。
愛原:「あれ?」
だが、その扉はビクともしなかった。
どうやら鍵が掛かっているようだった。
しかし、鍵穴らしきものは存在しない。
高橋:「やっぱり金目の物が入ってるんですね」
愛原:「そう……かもな。でも、それが目的で来たんじゃないし」
それに、座敷童は仏間に現れるという怪談話もあるようなので来てみたのだが、ここではそれは単なる怪談話だったようだ。
高橋:「これだけの金持ちの家ですから、きっと仏像も純金ですよ?」
愛原:「だからそれが目的じゃないって。……あれ?」
私がふと仏壇の方に目をやると、肝心の仏像が見えないようになっていた。
まず、外側の厨子の観音扉は開いている。
それはいい。
だが、肝心の仏像が鎮座している所には更に木製のシャッター(この場合、鎧戸と言った方がいいのか?)が閉じてあった。
どうも売店とかにあるような、横引シャッターらしい。
それを手で開けようとしたが、これも鍵が掛かっているのか開かなかった。
しかも、やはり鍵穴は無い。
愛原:「まあ、その……何だ。よほど大事な物がしまっているんだろうな」
高橋:「でしょうねぇ……」
この仏間も外は雨戸が閉め切られていて、やはり電球1個だけの照明であった。
確か仏壇は光るようになっていなかったかな?
それを点ければ、もう少し明るくなるかも。
愛原:「コンセントが抜けてる」
私がコンセントを入れると、仏壇の照明が点いた。
高橋:「うおっ!まぶしっ!」
高橋、思わず顔をしかめる。
愛原:「大げさだな。……ん?」
仏壇の前にある経机の上にはスイッチがあった。
今は『閉』になっている。
愛原:「もしかして!?」
私は『開』のボタンを押した。
すると、モーターの音がして鎧戸が開いていった。
高橋:「さすが先生っス!」
愛原:「いや、大したことは無い」
しかし、鎧戸の奥に仏像は無かった。
そこにあったのは掛け軸。
高橋:「これが値打ち物っスか?」
愛原:「多分な」
確か、法華経を唱える宗派の中には、仏像ではなく、『南無妙法蓮華経』と書かれた掛け軸を拝む一派があると聞いたことがある。
夜ノ森家もそういう宗派だったのだろう。
高橋:「じゃあ持って行きましょう」
愛原:「だから泥棒じゃないって」
どうやら仏間にはもう何も無いようだ。
他の部屋を探すことにしよう。
[同日09:00.天候:晴 夜ノ森家]
仏間の他に部屋を探索した。
だが、座敷童と会うことも無ければ、夜ノ森家の人々と会うこともない。
床の間らしき部屋もあったが、きっとそこで寝ていると思われ、そこに入るのは遠慮しておいた。
高橋:「それにしても、何か人の気配無さ過ぎじゃないっスか?」
愛原:「うーん……。そうだなぁ……」
2階に上がってみたが、そこにも人の気配は無かった。
高橋:「先生、これ見てください」
高橋はチェストの上に置かれた写真を指さした。
そこには無造作に置かれた写真があり、そこには1機のヘリコプターが写っていた。
愛原:「BSAAのヘリコプターだ!」
世界的に頻発したバイオテロを鎮静する為、2000年代は一介のNGO組織だったものが、ヨーロッパでのバイオテロ事件後に国連直轄の組織になったものだ。
もちろんアジア地域にも支部を持ち、日本語では極東支部という。
日本にも地区本部がある。
ヘリコプターの写真は角度のせいでその所属が分からず、いつどこで撮影されたものなのかまでは分からない。
しかも裏を見ると、こう書いてあった。
『いつものヘリ。監視されてる?』
と。
愛原:「どういうことなんだ?」
高橋:「もしかして……ここ、バイオハザードと関係あるってことっスか?」
愛原:「分からん。分からんが……もしそうだと仮定するなら、ちょっとヤバいことになるかもしれないぞ?」
高橋:「そうなんスか?」
愛原:「2017年にアメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件、知ってるか?」
高橋:「いいえ」
愛原:「最近のバイオハザードはウィルスじゃなくて、特異菌……まあ、カビを利用したものらしいぞ」
高橋:「か、カビっすか!?」
愛原:「適合者は人間の姿を保ったまま驚異的な力を持たせて操ることができ、できなかった者は死ぬか、クリーチャー化するらしい」
高橋:「まるでリサみたいですね」
愛原:「違うな」
高橋:「えっ?」
愛原:「リサはむしろ操る側だ。タイラントを見ろ」
高橋:「あっ……!」
愛原:「ひょっとして座視童というのは……」
高橋:「でも、先生の仮定ですよね?失礼ながら……」
愛原:「まあな。だけど、不自然じゃないか。失礼ながら、夜ノ森さん達の生活体系。病気みたいだ」
高橋:「それは確かに……」
愛原:「それが本当に病気だとして、それを引き起こしたのが『座敷童』だったとしたらどうする?」
高橋:「この家でバイオハザードが起きていて、ここのオヤジさん達は感染し、感染元は『座敷童』ってことっスか」
愛原:「そうだ」
高橋:「ちょっ……!?俺達も感染してなくないっスか!?」
愛原:「分からん。取りあえず一旦、外に出よう。そろそろ高野君も出勤してるだろうから、取りあえず事務所に定時連絡だ」
高橋:「はい!」
私達は階段を下りて、玄関に向かった。
そして、私は外に出た。
昨夜と打って変わって、今日はいい天気だ。
愛原:「よし!幸い電波が入るぞ!」
私はスマホを出して、まず電波状況を確認した。
ところが、高橋が玄関から出て来ようとしない。
愛原:「どうした、高橋?早く来いよ」
だが、私は半分くらい分かっていた。
高橋:「せ、先生……!すごく……眩しいです……!何も見えません……!」
高橋は感染していた!
幸い私は特に異変を感じていないから、私は感染していないのだろう。
或いは、感染はしているものの、まだ発症していないだけかもしれない。
愛原:「っ……!分かった!そこにいろ!今、事務所に連絡入れる」
私はスマホで事務所に連絡した。
愛原:「もしもし!高野君か!?……ああ、そうだ。今、現地にいて、現地を調査中だ。それで、ちょっと大変なことになった。どうも現地はバイオハザードが起きてるみたいで、高橋が感染した。すぐにエージェントさんに連絡してくれないか?場所は俺のスマホのGPSで分かるな?それから……」
高橋:「うああああああああっ!目がぁぁぁぁっ!目ぐぁああああああっ!!」
愛原:「!!!」
高橋は両目を押さえながら、家の奥へと走り去った。
愛原:「一刻の猶予も無い!BSAAの出動も要請してくれ!俺は高橋を何とかする!……ああ、分かった!それじゃ、よろしく!」
私は電話を切って、再び家の中に入ろうとした。
愛原:「!?」
だが、家に飛び込む直前で、何故か開けっ放しの玄関の引き戸が乱暴にピシャッと閉まった。
びっくりした私は一瞬の足止めを食らったが、鍵が掛けられた様子は無い。
もう1度玄関の扉を開けようと、取っ手に手を伸ばした。
???:「おじさーん」
その時、背後で少女の声がした。
リサよりも幼さそうな声。
振り向くと私は……。
1:後ろから首を絞められた。
2:腕を掴まれた。
3:首筋を噛まれた。
4:後ろから殴られた。
私は気になっていた部屋があった。
その襖を開けると、そこにあったのは仏間。
高橋:「仏間ですか。さすが先生、目の付け所が違いますねぇ」
愛原:「おいおい、急に何言ってるんだ?」
高橋:「金目の物なら、仏壇の下とかいうのは常識ですよ」
愛原:「泥棒じゃあるまいし、何言ってんだ」
と言いつつ、私は辺りを確かめるようにして仏壇の下の観音扉を開けようとした。
高さは1メートルくらいしか無いので、しゃがんで覗き込むような形になるか。
愛原:「あれ?」
だが、その扉はビクともしなかった。
どうやら鍵が掛かっているようだった。
しかし、鍵穴らしきものは存在しない。
高橋:「やっぱり金目の物が入ってるんですね」
愛原:「そう……かもな。でも、それが目的で来たんじゃないし」
それに、座敷童は仏間に現れるという怪談話もあるようなので来てみたのだが、ここではそれは単なる怪談話だったようだ。
高橋:「これだけの金持ちの家ですから、きっと仏像も純金ですよ?」
愛原:「だからそれが目的じゃないって。……あれ?」
私がふと仏壇の方に目をやると、肝心の仏像が見えないようになっていた。
まず、外側の厨子の観音扉は開いている。
それはいい。
だが、肝心の仏像が鎮座している所には更に木製のシャッター(この場合、鎧戸と言った方がいいのか?)が閉じてあった。
どうも売店とかにあるような、横引シャッターらしい。
それを手で開けようとしたが、これも鍵が掛かっているのか開かなかった。
しかも、やはり鍵穴は無い。
愛原:「まあ、その……何だ。よほど大事な物がしまっているんだろうな」
高橋:「でしょうねぇ……」
この仏間も外は雨戸が閉め切られていて、やはり電球1個だけの照明であった。
確か仏壇は光るようになっていなかったかな?
それを点ければ、もう少し明るくなるかも。
愛原:「コンセントが抜けてる」
私がコンセントを入れると、仏壇の照明が点いた。
高橋:「うおっ!まぶしっ!」
高橋、思わず顔をしかめる。
愛原:「大げさだな。……ん?」
仏壇の前にある経机の上にはスイッチがあった。
今は『閉』になっている。
愛原:「もしかして!?」
私は『開』のボタンを押した。
すると、モーターの音がして鎧戸が開いていった。
高橋:「さすが先生っス!」
愛原:「いや、大したことは無い」
しかし、鎧戸の奥に仏像は無かった。
そこにあったのは掛け軸。
高橋:「これが値打ち物っスか?」
愛原:「多分な」
確か、法華経を唱える宗派の中には、仏像ではなく、『南無妙法蓮華経』と書かれた掛け軸を拝む一派があると聞いたことがある。
夜ノ森家もそういう宗派だったのだろう。
高橋:「じゃあ持って行きましょう」
愛原:「だから泥棒じゃないって」
どうやら仏間にはもう何も無いようだ。
他の部屋を探すことにしよう。
[同日09:00.天候:晴 夜ノ森家]
仏間の他に部屋を探索した。
だが、座敷童と会うことも無ければ、夜ノ森家の人々と会うこともない。
床の間らしき部屋もあったが、きっとそこで寝ていると思われ、そこに入るのは遠慮しておいた。
高橋:「それにしても、何か人の気配無さ過ぎじゃないっスか?」
愛原:「うーん……。そうだなぁ……」
2階に上がってみたが、そこにも人の気配は無かった。
高橋:「先生、これ見てください」
高橋はチェストの上に置かれた写真を指さした。
そこには無造作に置かれた写真があり、そこには1機のヘリコプターが写っていた。
愛原:「BSAAのヘリコプターだ!」
世界的に頻発したバイオテロを鎮静する為、2000年代は一介のNGO組織だったものが、ヨーロッパでのバイオテロ事件後に国連直轄の組織になったものだ。
もちろんアジア地域にも支部を持ち、日本語では極東支部という。
日本にも地区本部がある。
ヘリコプターの写真は角度のせいでその所属が分からず、いつどこで撮影されたものなのかまでは分からない。
しかも裏を見ると、こう書いてあった。
『いつものヘリ。監視されてる?』
と。
愛原:「どういうことなんだ?」
高橋:「もしかして……ここ、バイオハザードと関係あるってことっスか?」
愛原:「分からん。分からんが……もしそうだと仮定するなら、ちょっとヤバいことになるかもしれないぞ?」
高橋:「そうなんスか?」
愛原:「2017年にアメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザード事件、知ってるか?」
高橋:「いいえ」
愛原:「最近のバイオハザードはウィルスじゃなくて、特異菌……まあ、カビを利用したものらしいぞ」
高橋:「か、カビっすか!?」
愛原:「適合者は人間の姿を保ったまま驚異的な力を持たせて操ることができ、できなかった者は死ぬか、クリーチャー化するらしい」
高橋:「まるでリサみたいですね」
愛原:「違うな」
高橋:「えっ?」
愛原:「リサはむしろ操る側だ。タイラントを見ろ」
高橋:「あっ……!」
愛原:「ひょっとして座視童というのは……」
高橋:「でも、先生の仮定ですよね?失礼ながら……」
愛原:「まあな。だけど、不自然じゃないか。失礼ながら、夜ノ森さん達の生活体系。病気みたいだ」
高橋:「それは確かに……」
愛原:「それが本当に病気だとして、それを引き起こしたのが『座敷童』だったとしたらどうする?」
高橋:「この家でバイオハザードが起きていて、ここのオヤジさん達は感染し、感染元は『座敷童』ってことっスか」
愛原:「そうだ」
高橋:「ちょっ……!?俺達も感染してなくないっスか!?」
愛原:「分からん。取りあえず一旦、外に出よう。そろそろ高野君も出勤してるだろうから、取りあえず事務所に定時連絡だ」
高橋:「はい!」
私達は階段を下りて、玄関に向かった。
そして、私は外に出た。
昨夜と打って変わって、今日はいい天気だ。
愛原:「よし!幸い電波が入るぞ!」
私はスマホを出して、まず電波状況を確認した。
ところが、高橋が玄関から出て来ようとしない。
愛原:「どうした、高橋?早く来いよ」
だが、私は半分くらい分かっていた。
高橋:「せ、先生……!すごく……眩しいです……!何も見えません……!」
高橋は感染していた!
幸い私は特に異変を感じていないから、私は感染していないのだろう。
或いは、感染はしているものの、まだ発症していないだけかもしれない。
愛原:「っ……!分かった!そこにいろ!今、事務所に連絡入れる」
私はスマホで事務所に連絡した。
愛原:「もしもし!高野君か!?……ああ、そうだ。今、現地にいて、現地を調査中だ。それで、ちょっと大変なことになった。どうも現地はバイオハザードが起きてるみたいで、高橋が感染した。すぐにエージェントさんに連絡してくれないか?場所は俺のスマホのGPSで分かるな?それから……」
高橋:「うああああああああっ!目がぁぁぁぁっ!目ぐぁああああああっ!!」
愛原:「!!!」
高橋は両目を押さえながら、家の奥へと走り去った。
愛原:「一刻の猶予も無い!BSAAの出動も要請してくれ!俺は高橋を何とかする!……ああ、分かった!それじゃ、よろしく!」
私は電話を切って、再び家の中に入ろうとした。
愛原:「!?」
だが、家に飛び込む直前で、何故か開けっ放しの玄関の引き戸が乱暴にピシャッと閉まった。
びっくりした私は一瞬の足止めを食らったが、鍵が掛けられた様子は無い。
もう1度玄関の扉を開けようと、取っ手に手を伸ばした。
???:「おじさーん」
その時、背後で少女の声がした。
リサよりも幼さそうな声。
振り向くと私は……。
1:後ろから首を絞められた。
2:腕を掴まれた。
3:首筋を噛まれた。
4:後ろから殴られた。