報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「依頼人の元へ」

2019-04-09 18:57:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月8日13:21.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 私と高橋は依頼人の元へ、リサは斉藤絵恋さんと一緒に斉藤さんの実家へ行こうとしている。
 行き先が同じ市内なので、4人で行くことになった次第。

〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。黄色いブロックの内側で、お待ちください。この電車は、笹塚から京王線内快速となります。急行の通過待ちはありません〕

 高橋:「先生、車なら俺の仲間に頼んで出してもらえますよ?」
 愛原:「途中で警察の御厄介になりそうだからいいよ」

 トンネルの向こうから風を巻き起こして電車が接近してくる。
 やって来たのは都営地下鉄の車両。
 リサや絵恋さんの髪がその風に靡く。

〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。京王新線、笹塚まで各駅に止まります。きくかわ〜、菊川〜〕

 菊川駅にもホームドアが設置された。
 安全にはなったと思うが、ドアの開閉などで数秒のブランクが発生したように思う。
 まあ、細かいことではあるが。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 チャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
 電車のドアだけでなく、ホームドアも閉まり切らないと電車が発車しないのだが、これが数秒間のブランクを生む理由だ。
 外国ではどうなんだろう?

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔「この電車は新宿線内、途中駅での通過待ちはありません。京王新線、笹塚まで1番先に到着致します。笹塚から先は快速、大沢……失礼しました。橋本行きとなります。京王線内、停車駅にご注意ください」〕

 愛原:「依頼人がパチ屋の店長で、依頼先が群馬県だろ?実は場所、パチンコ台の工場だったりしてな」
 高橋:「ついでに打ってみるというのはアリですか?」
 愛原:「もちろん自腹だぞ?」
 高橋:「分かってますって。先生に依頼する以上、確変出さなきゃおかしいですよ」
 愛原:「……遠隔操作は違法だからな?」

 昔、静岡県辺りで店員がやらかし、遠隔操作がバレて店が潰されたというようなことがあった。
 今ではパチンコ業界は見た目の健全化を図っているが、当時はまだまだガラの悪かった時代だったはず。
 やらかした店員は、恐らくコンクリート詰めにされ、駿河湾に【お察しください】。

 愛原:「そういった意味では、まだスロットの方が大丈夫か?だってスロットのドラム、遠隔できないだろ?構造上」
 高橋:「どうなんですかね。スロットは目押しができないとダメですからね。でも今は目押しできてもダメなようになっているらしいです」
 愛原:「スロットはやらないから分からんけど」
 高橋:「もしやる時は、俺も誘ってください」
 愛原:「お前、スロットできるのか?」
 高橋:「仲間に目押しできるヤツがいるんで、そいつに稼いでもらいます」
 愛原:「オマエさっき、『今は目押しできてもダメ』とか言ってなかったか?」

[同日14:27.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]

 新宿まで都営地下鉄で向かい、そこからJR埼京線に乗り換える。
 多くの人でごった返す新宿駅の様相を見たリサが、『これだけ人がいると、一思いに薙ぎ払いたくなる』と物騒なことを言い出したので、私は慌てて空いている埼京線ホームの後方に連れて行った。
 リサの場合、本当にやろうと思えばできるわけだから。
 幸い新宿駅始発の電車があるので、それで悠々と着席し、最寄り駅の北与野駅に着いたわけだ。

〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます。次は終点、大宮に止まります〕

 斉藤絵恋:「また帰って来ちゃったな……」
 愛原:「じゃあ、一旦ここでお別れだな。俺と高橋は依頼人の所へ行くから、リサは絵恋さんちで遊んでて」
 リサ:「はーい」
 愛原:「話が終わったらまた連絡するから」
 リサ:「分かった」

 私達は改札口を出て駅前ロータリーを通り過ぎると、そこでリサ達と別れた。

[同日14:40.天候:晴 同区内 パチンコ“サトー御殿”]

 駅から徒歩10分強歩いたところで、依頼人が店長を務めるパチンコ店に到着した。

 高橋:「あ?何だこれ?」
 愛原:「どうした?」
 高橋:「『新台導入!“CRケンショーレンジャー”』?」
 愛原:「何だか当たらなさそうな名前だな」
 高橋:「全くですね。確変リーチが『必殺技!ケンショーブルー・タイフーン』?意味分かんねー」
 愛原:「……おい、スロットでもあるぞ。“ケンショーレンジャー”って」
 高橋:「深夜番組辺りでやってるヤツっスかね?」
 愛原:「俺は特撮には興味無いんでね」
 高橋:「『悪の秘密結社ソッカー』その首領『ダイ・サーク』?ちょっと何言ってるか分かんないっスねー」
 愛原:「まあ、いいから。打つのは依頼人の話を聞いてからな?」
 高橋:「うっス」

 私達は店内に入った。
 店はなかなか盛況のようだ。
 こんな平日の昼下がりから賑わってるなんて、結構当たりやすいのかもしれない。
 その分、どこかでガッツリ回収されるのだろうが。

 愛原:「すいません」
 店員:「はい、いらっしゃいませ」
 愛原:「店長の渡辺さんに会いたいんですけど。東京から来た愛原と申します」
 店員:「あ、店長のお客様の愛原様ですね。はい、すぐご案内します」

 昔は店員のガラも悪く、高橋みたいなのでも紳士的なくらいだった。
 しかし今では、ヘタな飲食店の店員よりも接客は良くなっている。
 私達はバックヤードに連れて行かれ、その奥にある店長室へと案内された。
 確かにここでもホール内の賑やかな音は聞こえるが、壁1つ隔てられており、更に隔てられている店長室は比較的静かな所だった。
 ここなら電話で話しても、通話に支障は出ないだろう。

 愛原:「こんにちは。探偵の愛原と申します」
 高橋:「助手の高橋っス」
 渡辺:「店長の渡辺です。早速の引き受け、ありがとうございます。どうぞ、お掛けになってください」

 私達は店長室内にある応接セットに案内され、そこのソファに座った。

 愛原:「なかなか繁盛されているようで、いいですね」
 渡辺:「チェーン店の1つなもので、私は雇われなんですよ。もっとも、経営者一族の1人ではあるんですが……」

 渡辺店長は室内にある、小さな流しにあるコーヒーメーカーでコーヒーを入れてくれた。

 愛原:「それで依頼の内容について、詳しい話を伺いたいのですが?」
 渡辺:「はい。実は私の実家は群馬県にありまして、そこでのことなんですが……」

 店長はまるで怪談話を聞かせるかのような語り口で私達に語った。
 といっても、稲川淳二みたいなあからさまな言い方ではなかったが。
 実際それはまるで怪談みたいな内容だったのだが、それはどんなものだったのかは、次回へのお楽しみとさせて頂こう。
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“私立探偵 愛原学” 「仕事の依頼」

2019-04-09 12:16:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月8日12:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私はボスからのメールを確認した。
 するとそこにあったのは……。

 愛原:「ブッ!」

 私は思わずコーラを噴き出してしまった。

 高野:「先生!?パソコン壊れるからやめてくださいね!」
 愛原:「わ、悪い悪い」

 私は急いでウェットティッシュでコーラの噴きかかった所を拭き取った。
 いや、何で噴いたかっていうと……。

 愛原:「何だこれ?『確変が止まらない。どうしよう?』」
 高野:「ボスのお茶目ですかね?」

 私はその変なタイトルのメールを開いた。
 すると、どうやら今度の仕事の依頼先は群馬県であるようだ。
 なるほど。
 群馬県と言えば、パチンコ台の工場の多い所だ。
 どうやらボスは、わざとこういう変なタイトルを付けることで、第三者に見られても関心を持たれないように工夫したようである。

 愛原:「なるほど。明日か……」

 何だか難しそうな依頼だ。
 もちろん難しければ難しいほど、高い報酬を得ることはできる。
 私はこの仕事の依頼を受けることにした。

 愛原:「高野君、明日は群馬県まで行ってくるよ」
 高野:「群馬県ですか。微妙な距離ですね。日帰りですか?」
 愛原:「もしかしたら、泊まりになるかもしれないな」
 高野:「了解しました」
 愛原:「高橋!」
 高橋:「はいっ!」
 愛原:「明日、群馬県に行くから。一応、泊まりの準備よろしく」
 高橋:「分かりました」

[同日13:00.天候:晴 愛原学探偵事務所]

 私は昼食を終え、応接室でテレビを観ていた。
 高橋はベランダで一服している。
 この事務所の応接室は一応禁煙にはしていないが、クライアントさんの中には愛煙家はもちろん嫌煙家も多いので、後者に合わせた形だ。
 で、うちの事務所、喫煙者は高橋しかいない為。
 私がそろそろ事務室に戻ろうとした時、そこから電話が掛かって来るのが聞こえた。

 高橋:「はい、愛原学探偵事務所っス!……あ、はい。クライアントの渡辺さんっスか?……あー、了解っス。すぐ先生に変わります」

 高橋の電話応対は相変わらずだな。
 今時ヤクザ事務所でも、そんな応対してたら兄貴さんに怒られるぞ。
 組によっては、コールセンター並みの丁寧な対応を求められるって話だからな。

 高橋:「先生!パチ屋の渡辺さんからっス!」
 愛原:「何でパチ屋だって分かるんだよ?」
 高橋:「何か、後ろで確変来てる音がしてるもんで……」
 愛原:「はあ?」

 私はとにかく電話を取った。
 保留ボタンを押して、それを解除する。

 愛原:「もしもし。お電話代わりました。愛原でございます」
 渡辺:「あ、愛原所長さんですか?」
 愛原:「はい、そうですが?」

 なるほど。
 確かに、何だかパチンコ店ならではの賑やかな音が聞こえる。
 ただ、ホール内ではなく、もっとこう何かに隔てられた所から掛けているようだ。
 だから会話に支障は無い。

 渡辺:「この度は私の依頼を受けて下さったそうで、ありがとうございます」
 愛原:「いえ、とんでもないです。確かに内容は難しそうですが、恐らくあれは私共でしか受けられないかと」
 渡辺:「そうです。そうなんです。あの『霧生市のサバイバー』の所長さん達でないとダメかと思って依頼したんです」
 愛原:「ありがとうございます。それでですね、依頼書だけでは内容に不明瞭な点がございますので、宜しければ直接お話の方をお伺いしたいのですが……」
 渡辺:「はい、是非お願いします。お渡ししたいのもありますので。それでですね、私はパチンコ店を経営しておりまして、その……直接そちらの事務所にはお邪魔できないのですが……」
 愛原:「あ、それは大丈夫です。こちらから直接お伺い致します。そのお店の方にお伺いすれば宜しいでしょうか?」
 渡辺:「はい、お願いします。店の場所などは今からファックスで送ります」
 愛原:「分かりました。それではよろしくお願いします」

 私は電話を切った。
 すると、しばらくしてファックスの受信する音が聞こえた。

 高橋:「パチ屋の広告送って来やがった」
 愛原:「まあ、確かにアクセス方法は書いてある」

 そこから手書きで、『店員には伝えておくので、店に着いたら店員に言ってください』みたいなことが書かれていた。

 愛原:「じゃあ、明日午前中に行ってくるか。パチ屋って10時くらいからオープンするよな?」
 高橋:「新台入れ替えだと夕方オープンって所もあるんですよ。ただ、このチラシを見る限り、明日は無さそうっスね」

 場所は埼玉県さいたま市になっていた。

 愛原:「なるほどな」

 で、私がふと思ったことがある。

 愛原:「話を聞くだけなら、今日行ってもいいんじゃないか?どうせ今日は仕事無いんだし」
 高橋:「ああ、まあ、そうっスね」

 私はもう1度、渡辺店長に掛けてみた。
 まさか今日来てくれるとは思っていなかったらしく、驚いた様子だったが、了承してくれた。

 愛原:「それじゃ、早速行ってみるか」

 私が腰を上げた時だった。

 リサ:「愛原さん」

 給湯室からリサと斉藤絵恋さんが出て来た。

 リサ:「これからサイトーの家に遊びに行って来る」
 愛原:「おっ、そうか。行ってらっしゃい」

 私はついそれが、絵恋さんが仮住まいしている墨田区のマンションのことだと思っていた。
 しかし、どうやら違うらしい。

 絵恋:「私の実家なんです」
 愛原:「そうなの!?」

 絵恋さんの実家は埼玉県さいたま市内である。
 中学生がそこから通うのは大変だということで、中等部にいる間だけは近くに賃貸マンションを借り、専属のメイドさんと一緒に住むということになっている。
 金曜日の夜には実家に帰り、日曜日の夜にマンションに戻るという。
 但し、いずれも専属の運転手が運転する車を使う。

 リサ:「今日中に帰るから」
 愛原:「それはいいけど……」
 絵恋:「電車代は私が出しますから、どうかお願いします」
 愛原:「いや、別にいいよ。俺達もちょうど行く所だったから」

 絵恋さんが実家にリサを誘ったのは、昨日まで実家にいたのだが、そこに忘れ物をして来てしまったらしい。
 明日どうしても入用なので、今日中に取りに行かなければならないとのこと。
 それくらい使用人に届けさせるという手もあるようだが、そこは教育の一環で、自分で取りに行かせる苦労を体験するということらしい。
 で、ついでにリサを誘ってみたというわけだ。

 愛原:「せっかくだから、一緒に行くか」
 絵恋:「ありがとうございます!」
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