[4月8日13:21.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
私と高橋は依頼人の元へ、リサは斉藤絵恋さんと一緒に斉藤さんの実家へ行こうとしている。
行き先が同じ市内なので、4人で行くことになった次第。
〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。黄色いブロックの内側で、お待ちください。この電車は、笹塚から京王線内快速となります。急行の通過待ちはありません〕
高橋:「先生、車なら俺の仲間に頼んで出してもらえますよ?」
愛原:「途中で警察の御厄介になりそうだからいいよ」
トンネルの向こうから風を巻き起こして電車が接近してくる。
やって来たのは都営地下鉄の車両。
リサや絵恋さんの髪がその風に靡く。
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。京王新線、笹塚まで各駅に止まります。きくかわ〜、菊川〜〕
菊川駅にもホームドアが設置された。
安全にはなったと思うが、ドアの開閉などで数秒のブランクが発生したように思う。
まあ、細かいことではあるが。
〔1番線、ドアが閉まります〕
チャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
電車のドアだけでなく、ホームドアも閉まり切らないと電車が発車しないのだが、これが数秒間のブランクを生む理由だ。
外国ではどうなんだろう?
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔「この電車は新宿線内、途中駅での通過待ちはありません。京王新線、笹塚まで1番先に到着致します。笹塚から先は快速、大沢……失礼しました。橋本行きとなります。京王線内、停車駅にご注意ください」〕
愛原:「依頼人がパチ屋の店長で、依頼先が群馬県だろ?実は場所、パチンコ台の工場だったりしてな」
高橋:「ついでに打ってみるというのはアリですか?」
愛原:「もちろん自腹だぞ?」
高橋:「分かってますって。先生に依頼する以上、確変出さなきゃおかしいですよ」
愛原:「……遠隔操作は違法だからな?」
昔、静岡県辺りで店員がやらかし、遠隔操作がバレて店が潰されたというようなことがあった。
今ではパチンコ業界は見た目の健全化を図っているが、当時はまだまだガラの悪かった時代だったはず。
やらかした店員は、恐らくコンクリート詰めにされ、駿河湾に【お察しください】。
愛原:「そういった意味では、まだスロットの方が大丈夫か?だってスロットのドラム、遠隔できないだろ?構造上」
高橋:「どうなんですかね。スロットは目押しができないとダメですからね。でも今は目押しできてもダメなようになっているらしいです」
愛原:「スロットはやらないから分からんけど」
高橋:「もしやる時は、俺も誘ってください」
愛原:「お前、スロットできるのか?」
高橋:「仲間に目押しできるヤツがいるんで、そいつに稼いでもらいます」
愛原:「オマエさっき、『今は目押しできてもダメ』とか言ってなかったか?」
[同日14:27.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]
新宿まで都営地下鉄で向かい、そこからJR埼京線に乗り換える。
多くの人でごった返す新宿駅の様相を見たリサが、『これだけ人がいると、一思いに薙ぎ払いたくなる』と物騒なことを言い出したので、私は慌てて空いている埼京線ホームの後方に連れて行った。
リサの場合、本当にやろうと思えばできるわけだから。
幸い新宿駅始発の電車があるので、それで悠々と着席し、最寄り駅の北与野駅に着いたわけだ。
〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます。次は終点、大宮に止まります〕
斉藤絵恋:「また帰って来ちゃったな……」
愛原:「じゃあ、一旦ここでお別れだな。俺と高橋は依頼人の所へ行くから、リサは絵恋さんちで遊んでて」
リサ:「はーい」
愛原:「話が終わったらまた連絡するから」
リサ:「分かった」
私達は改札口を出て駅前ロータリーを通り過ぎると、そこでリサ達と別れた。
[同日14:40.天候:晴 同区内 パチンコ“サトー御殿”]
駅から徒歩10分強歩いたところで、依頼人が店長を務めるパチンコ店に到着した。
高橋:「あ?何だこれ?」
愛原:「どうした?」
高橋:「『新台導入!“CRケンショーレンジャー”』?」
愛原:「何だか当たらなさそうな名前だな」
高橋:「全くですね。確変リーチが『必殺技!ケンショーブルー・タイフーン』?意味分かんねー」
愛原:「……おい、スロットでもあるぞ。“ケンショーレンジャー”って」
高橋:「深夜番組辺りでやってるヤツっスかね?」
愛原:「俺は特撮には興味無いんでね」
高橋:「『悪の秘密結社ソッカー』その首領『ダイ・サーク』?ちょっと何言ってるか分かんないっスねー」
愛原:「まあ、いいから。打つのは依頼人の話を聞いてからな?」
高橋:「うっス」
私達は店内に入った。
店はなかなか盛況のようだ。
こんな平日の昼下がりから賑わってるなんて、結構当たりやすいのかもしれない。
その分、どこかでガッツリ回収されるのだろうが。
愛原:「すいません」
店員:「はい、いらっしゃいませ」
愛原:「店長の渡辺さんに会いたいんですけど。東京から来た愛原と申します」
店員:「あ、店長のお客様の愛原様ですね。はい、すぐご案内します」
昔は店員のガラも悪く、高橋みたいなのでも紳士的なくらいだった。
しかし今では、ヘタな飲食店の店員よりも接客は良くなっている。
私達はバックヤードに連れて行かれ、その奥にある店長室へと案内された。
確かにここでもホール内の賑やかな音は聞こえるが、壁1つ隔てられており、更に隔てられている店長室は比較的静かな所だった。
ここなら電話で話しても、通話に支障は出ないだろう。
愛原:「こんにちは。探偵の愛原と申します」
高橋:「助手の高橋っス」
渡辺:「店長の渡辺です。早速の引き受け、ありがとうございます。どうぞ、お掛けになってください」
私達は店長室内にある応接セットに案内され、そこのソファに座った。
愛原:「なかなか繁盛されているようで、いいですね」
渡辺:「チェーン店の1つなもので、私は雇われなんですよ。もっとも、経営者一族の1人ではあるんですが……」
渡辺店長は室内にある、小さな流しにあるコーヒーメーカーでコーヒーを入れてくれた。
愛原:「それで依頼の内容について、詳しい話を伺いたいのですが?」
渡辺:「はい。実は私の実家は群馬県にありまして、そこでのことなんですが……」
店長はまるで怪談話を聞かせるかのような語り口で私達に語った。
といっても、稲川淳二みたいなあからさまな言い方ではなかったが。
実際それはまるで怪談みたいな内容だったのだが、それはどんなものだったのかは、次回へのお楽しみとさせて頂こう。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
私と高橋は依頼人の元へ、リサは斉藤絵恋さんと一緒に斉藤さんの実家へ行こうとしている。
行き先が同じ市内なので、4人で行くことになった次第。
〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。黄色いブロックの内側で、お待ちください。この電車は、笹塚から京王線内快速となります。急行の通過待ちはありません〕
高橋:「先生、車なら俺の仲間に頼んで出してもらえますよ?」
愛原:「途中で警察の御厄介になりそうだからいいよ」
トンネルの向こうから風を巻き起こして電車が接近してくる。
やって来たのは都営地下鉄の車両。
リサや絵恋さんの髪がその風に靡く。
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。京王新線、笹塚まで各駅に止まります。きくかわ〜、菊川〜〕
菊川駅にもホームドアが設置された。
安全にはなったと思うが、ドアの開閉などで数秒のブランクが発生したように思う。
まあ、細かいことではあるが。
〔1番線、ドアが閉まります〕
チャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
電車のドアだけでなく、ホームドアも閉まり切らないと電車が発車しないのだが、これが数秒間のブランクを生む理由だ。
外国ではどうなんだろう?
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔「この電車は新宿線内、途中駅での通過待ちはありません。京王新線、笹塚まで1番先に到着致します。笹塚から先は快速、大沢……失礼しました。橋本行きとなります。京王線内、停車駅にご注意ください」〕
愛原:「依頼人がパチ屋の店長で、依頼先が群馬県だろ?実は場所、パチンコ台の工場だったりしてな」
高橋:「ついでに打ってみるというのはアリですか?」
愛原:「もちろん自腹だぞ?」
高橋:「分かってますって。先生に依頼する以上、確変出さなきゃおかしいですよ」
愛原:「……遠隔操作は違法だからな?」
昔、静岡県辺りで店員がやらかし、遠隔操作がバレて店が潰されたというようなことがあった。
今ではパチンコ業界は見た目の健全化を図っているが、当時はまだまだガラの悪かった時代だったはず。
やらかした店員は、恐らくコンクリート詰めにされ、駿河湾に【お察しください】。
愛原:「そういった意味では、まだスロットの方が大丈夫か?だってスロットのドラム、遠隔できないだろ?構造上」
高橋:「どうなんですかね。スロットは目押しができないとダメですからね。でも今は目押しできてもダメなようになっているらしいです」
愛原:「スロットはやらないから分からんけど」
高橋:「もしやる時は、俺も誘ってください」
愛原:「お前、スロットできるのか?」
高橋:「仲間に目押しできるヤツがいるんで、そいつに稼いでもらいます」
愛原:「オマエさっき、『今は目押しできてもダメ』とか言ってなかったか?」
[同日14:27.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]
新宿まで都営地下鉄で向かい、そこからJR埼京線に乗り換える。
多くの人でごった返す新宿駅の様相を見たリサが、『これだけ人がいると、一思いに薙ぎ払いたくなる』と物騒なことを言い出したので、私は慌てて空いている埼京線ホームの後方に連れて行った。
リサの場合、本当にやろうと思えばできるわけだから。
幸い新宿駅始発の電車があるので、それで悠々と着席し、最寄り駅の北与野駅に着いたわけだ。
〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます。次は終点、大宮に止まります〕
斉藤絵恋:「また帰って来ちゃったな……」
愛原:「じゃあ、一旦ここでお別れだな。俺と高橋は依頼人の所へ行くから、リサは絵恋さんちで遊んでて」
リサ:「はーい」
愛原:「話が終わったらまた連絡するから」
リサ:「分かった」
私達は改札口を出て駅前ロータリーを通り過ぎると、そこでリサ達と別れた。
[同日14:40.天候:晴 同区内 パチンコ“サトー御殿”]
駅から徒歩10分強歩いたところで、依頼人が店長を務めるパチンコ店に到着した。
高橋:「あ?何だこれ?」
愛原:「どうした?」
高橋:「『新台導入!“CRケンショーレンジャー”』?」
愛原:「何だか当たらなさそうな名前だな」
高橋:「全くですね。確変リーチが『必殺技!ケンショーブルー・タイフーン』?意味分かんねー」
愛原:「……おい、スロットでもあるぞ。“ケンショーレンジャー”って」
高橋:「深夜番組辺りでやってるヤツっスかね?」
愛原:「俺は特撮には興味無いんでね」
高橋:「『悪の秘密結社ソッカー』その首領『ダイ・サーク』?ちょっと何言ってるか分かんないっスねー」
愛原:「まあ、いいから。打つのは依頼人の話を聞いてからな?」
高橋:「うっス」
私達は店内に入った。
店はなかなか盛況のようだ。
こんな平日の昼下がりから賑わってるなんて、結構当たりやすいのかもしれない。
その分、どこかでガッツリ回収されるのだろうが。
愛原:「すいません」
店員:「はい、いらっしゃいませ」
愛原:「店長の渡辺さんに会いたいんですけど。東京から来た愛原と申します」
店員:「あ、店長のお客様の愛原様ですね。はい、すぐご案内します」
昔は店員のガラも悪く、高橋みたいなのでも紳士的なくらいだった。
しかし今では、ヘタな飲食店の店員よりも接客は良くなっている。
私達はバックヤードに連れて行かれ、その奥にある店長室へと案内された。
確かにここでもホール内の賑やかな音は聞こえるが、壁1つ隔てられており、更に隔てられている店長室は比較的静かな所だった。
ここなら電話で話しても、通話に支障は出ないだろう。
愛原:「こんにちは。探偵の愛原と申します」
高橋:「助手の高橋っス」
渡辺:「店長の渡辺です。早速の引き受け、ありがとうございます。どうぞ、お掛けになってください」
私達は店長室内にある応接セットに案内され、そこのソファに座った。
愛原:「なかなか繁盛されているようで、いいですね」
渡辺:「チェーン店の1つなもので、私は雇われなんですよ。もっとも、経営者一族の1人ではあるんですが……」
渡辺店長は室内にある、小さな流しにあるコーヒーメーカーでコーヒーを入れてくれた。
愛原:「それで依頼の内容について、詳しい話を伺いたいのですが?」
渡辺:「はい。実は私の実家は群馬県にありまして、そこでのことなんですが……」
店長はまるで怪談話を聞かせるかのような語り口で私達に語った。
といっても、稲川淳二みたいなあからさまな言い方ではなかったが。
実際それはまるで怪談みたいな内容だったのだが、それはどんなものだったのかは、次回へのお楽しみとさせて頂こう。