報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「決闘前」

2020-10-30 19:55:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日14:30.天候:晴 東京都港区新橋 都営バス新橋停留所→都営バス業10系統車内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「帰りはバスにしよう。これなら乗り換え無しで菊川まで帰れる」
 リサ:「分かった」

 バス停はデイライトの事務所に近い。
 そこでバスを待っていると、オーソドックスなノンステップバスがやってくる。
 都営バスは早くから全国に先駆けて、全車両ノンステップバス統一を果たしている。

 愛原:「大人2人お願いします」
 運転手:「はい。どうぞ」

 往路の電車の時、リサは自分のPasmoで改札口を通過していたが、そもそもこれは私が善場主任に頼まれてリサを連れて来たわけだから、交通費は私が出すべきであろう。
 帰りのバス代は私が負担してあげた。

 リサ:「いいの?」
 愛原:「これは仕事の一環なんだから、後で交通費は経費で落とすよ」
 リサ:「ありがとう」

 バスに乗り込むと、1番後ろの席に座った。
 隣に座ると、スマホをいじり出すリサの姿は、どこにでもいる普通の女子中学生と変わらない。
 たけど、これは世を忍ぶ仮の姿。
 今のところ本来の姿は、額に一本角の生え、両耳は長く尖り、口には牙が生え、両手の爪は長く鋭く伸びる鬼そのものだ。
 善場主任達の目的は、今のリサの人間の姿が本来のものであることにすることである。
 そんなリサが、木刀でもモノが斬れるという異能を持った相手と戦うことになるとは……。

 愛原:「ん?」

 その時、私はふと思った。

〔発車致します。お掴まりください〕

 その時、バスが前扉を閉めて走り出した。
 時計を見ると、ちょうど発車時刻になったことが分かる。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。この都営バスは、銀座四丁目、勝どき駅前、豊洲駅前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。……〕

 新橋から豊洲というと、新交通ゆりかもめが通っているが、時刻表上はこちらの都営バスの方が速い。
 但し、景観に関してはゆりかもめの方に軍配が上がる。

 愛原:「リサ」
 リサ:「なに?」
 愛原:「決闘の話だけど、俺はリサの方が勝つと思っている」
 リサ:「うん。私も、第一形態になれば勝てると思う」
 愛原:「だけどよくよく考えてみたら、栗原蓮華さん、化け物の姿をしているリサ・トレヴァーを今まで斬り殺しているんだよ」
 リサ:「あー……『10番』もそうだね」
 愛原:「だろぉ?もしかしたら、油断しちゃいけないのかもな」
 リサ:「大丈夫。今まで倒された奴らは、アンブレラも見捨てた欠陥達。中には太陽の下に出られない奴らもいた。私はそいつらより強い。だから、大丈夫」

 だがリサ、お前は宮城県で『欠陥者』と戦った時、倒せなかったじゃないか。
 公一伯父さんがプリウスで強行突入(という名のブレーキとアクセルの踏み間違え)しなければ、高橋はやられていたというし。

 愛原:「自信を持つのはいいけど、本当に油断するなよ?」
 リサ:「分かってる。私、絶対に勝つ」

 リサはグッと右手で拳を作った。

 愛原:「殺さない程度にだぞ?」
 リサ:「うん」 

 もっとも、栗原さんにはリサ殺しが禁止されていないんだよな。
 善場さん達が、そうなる前にレフリーストップでも入れてくれるんだろうが……。

[同日22:00.天候:晴 東京都墨田区江東橋 都立墨東病院]
(※ここから先は三人称視点になります。また、エロシーンが含まれていますので、御注意ください)

 栗原蓮華:「…………」

 消灯時間になり、看護師が見回って行く。
 栗原は入院時は左肩を化け物の触手に貫かれる重傷を負っていたが、今ではだいぶ傷も塞がっている。
 とはいえ入院期間は1ヶ月。
 家の財力で個室に入れているとはいえ、剣道の猛者でもあり、体力には自信のある栗原には苦痛でしかなかった。
 病室の入口にはドアが付いているが、基本的には開けられたままである。
 但し、プライバシー保護の為に消灯時間中はカーテンが閉められている。
 大部屋の場合は更に、ベッドの周りもカーテンで仕切られるわけである。
 看護師が栗原の部屋を見回り終えて出て行くと、栗原はベッドの下から何かを取り出した。
 それはバイブレータ。
 本来はハンドマッサージャーとしての用途だが、AVなんかでは『電マ』として使われる。

 栗原:「ん……」

 これは愛原に頼んで見舞いの品として持って来てもらったもの。
 もちろん、愛原にはオナニー用としては言っていない。
 あくまでも、ずっと同じ体勢で寝ているので、凝った体をほぐす為と言っている。

 栗原:「んん……ッ!」

 なるべくモーターの音が漏れないように、モーター部分をタオルで覆い、頭から布団を被って声が漏れないようにする。
 それでも漏れそうな場合はタオルを噛んで、声が漏れないようにする。
 リサ・トレヴァー『1番』に左足を食い千切られ、義足を使う身体障碍者となってしまったとはいえ、それ以外は健常なのである。
 体力自慢の10代の少女が1ヶ月もの間の禁欲生活に耐えられるわけが無く、かといって昼間はいつ見舞客が来るかも分からないし、看護師の巡回や担当医師の回診もある。
 結果的に消灯時間中を狙うしか無いのだ。
 幸い看護師の巡回は時間が決まっているので、既に把握している。
 医師だって患者の容体が急変でもしなければ、消灯時間中に病室に入って来ることはない。

 栗原:「んんっ……!」

 左手は肩のケガのせいでしばらく固定されて使えなかったが、ようやくここ最近は腕は動かせるようになった。
 なので片手で電マを使い、もう片手で別の性感帯を刺激するということをやっている。
 アニメや漫画などでは剣道少女は常に朴念仁的なキャラで、こういう性関係には無関心というイメージがあるが、実際には違う。
 特に化け物なんかに精神まで潰されてたまるかという根性から、なるべく学校では明るく過ごしていた。
 もちろん、妹のこともある。
 暗く沈んで、唯一難を逃れた妹に心配を掛けたくないというのもある。

 栗原:「はぁ……はぁ……」

 体力自慢の体育会系少女が、たった一度のイキで満足できるわけがなく、次に看護師が巡回に来るまで何回かイくようにしている。
 顔立ちは悪くなく、剣道で鍛えた体は引き締まって体型も良く、学校では明るく振る舞っていることから、彼氏または彼氏候補がいても良さそうなものだが、やはり剣道のイメージか、あるいは高貴な家柄のせいか、どうも敬遠されてしまって、彼氏はいない(性欲を発散できない)状態なのである。
 当然ながら処女の安売り(援助交際、パパ活)は元来真面目な性格の彼女にとっては、選択肢に入ることすらなかった。
 結果的に、自分で発散するしか無いのである。
 で、どういうわけだか今、オナニーのオカズとして思い浮かべているのは愛原学。

 栗原:(素敵なおじ様ね……。“あしながおじさん”みたい)

 そこで栗原、3回目のイキの前にリサの顔が浮かんだ。

 栗原:(何が『うちのリサ』よ……!あんな化け物……!殺す……!絶対に殺してやる……!い、イクッ……!!)

 こんな状態が毎晩続いている。
 今ではリサへの憎しみもまた、オナニーのオカズであるようだ。
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“私立探偵 愛原学” 「新橋へ」

2020-10-30 16:59:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日13:11.天候:晴 東京都港区新橋 JR新橋駅→NPO法人デイライト本部事務所]

 まるで地下鉄のようなトンネルの中を横須賀線電車は進む。
 列車番号も末尾のアルファベットがFからSへと変わる。
 Fは総武快速線の正式名称、総武本線の電報略号『ソフホセ』のフから取ってFだそうだ。
 Sは横須賀線の電報略号『スカセ』のスから取ってSとのこと。
 いわゆる国電と呼ばれた線区を走る『電車』には、Mを使わない(特急などの『列車』にはMを使う)。

 愛原:「電車だとあっという間だな」

 電車が地下ホームに滑り込んだ。
 大昔は横須賀線も東海道本線と同じ線路を走行していたが、逼迫する線路容量問題を解決する為に地下トンネルを掘って別線とした(SM分離という)。

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、品川に止まります〕

 電車を降りる。
 停車時間も短く、三浦半島まで行く電車はすぐに発車していった。

 愛原:「急ごう。善場主任が待ってる」
 リサ:「うん」

 駅の東側に出る。
 外堀通りと中央通りの間に建つテナントビルの中に、NPO法人デイライトの事務所はある。
 国家機関の職員が隠れ蓑にする為の法人の事務所ではあるが、事務所自体はそんなに大きくない。
 それでも私の事務所より家賃は高く、面積もそれなりに広い。

 愛原:「ここだ」

 エレベーターを降りると、事務所の入口は閉じられている。
 ドアの横には電話機が置いてあり、『御用の方は内線○○番へお掛けください』とあった。
 もちろん、私はそうした。

 職員:「はい。NPO法人デイライトです」
 愛原:「こんにちは。愛原学探偵事務所の愛原です。善場主任との御約束で参りました」
 職員:「愛原様ですね。お待ちしておりました。どうぞお入りください」

 電気錠が遠隔で解除される音がした。
 電話機の上にはカードリーダーがあり、職員達は貸与されたカードキーで開けているのだろう。

 愛原:「ありがとうございます」

 私達はドアを開けて中に入った。
 中に入ると、そこは普通のオフィス。

 善場:「愛原所長、お待ちしておりました」
 愛原:「善場主任、今日はよろしくお願いします」
 善場:「どうぞこちらへ」

 善場主任は事務所の奥へ私達を誘導した。
 奥の区画は会議室や応接室があるらしい。
 事務室部分だけでも私の事務所の2倍ほどの広さがあるのだが、会議室や応接室の部分も含めると3倍以上の広さとなるか。
 通されたのは会議室。
 なのでソファではなく、大きな机を囲むようにして事務椅子が10個ほど置いてある。

 善場:「どうぞお掛けください。今、お茶をお持ちします」
 愛原:「恐れ入ります」

 善場主任の部下なのかどうかは不明だが、メガネを掛けて事務服を着た女性職員がお茶を持ってきてくれた。
 恐らくこの事務所の庶務担当か何かなのだろう。
 もしかしたら、さっき外の電話から掛けて出た人かもしれない。

 愛原:「今日はお時間を取って頂き、ありがとうございます」
 善場:「いえ、こちらこそ。一両日中に、私も御伺いさせて頂くところでしたから。却って御足労頂いてしまって、申し訳ありません」
 愛原:「探偵はフットワークが命ですから、御依頼とあらば、尖閣諸島でも北方領土でも向かいますよ」
 善場:「どちらも勝手に上陸されると困りますので、むしろやめてください」

 善場主任に微笑でさらりと釘を刺されてしまった。
 さすがは国家公務員。

 善場:「もっとも、尖閣諸島はともかく、北方領土におきましては、旧アンブレラの陰が疑われるところなんですが」
 愛原:「そうなんですか!」
 善場:「まあ、BSAAはロシアにも展開しておりますので、あまりにも怪しい場合はそこが動きますよ。2011年、ザイン島で起きましたバイオハザードの収拾にも当たりましたし」

 日本で報道されなかったのは、BSAAが出動した時、既にパンデミックが過ぎた後で、島には1人の生存者もおらず、そして何より、東日本大震災が起きたからである。

 愛原:「なるほど。それで本題に入らせて頂きますが、実は今日、私、墨東病院に行って来ました」
 善場:「ああ、そうですか。それでは、本人から聞きましたか?リサのこと」
 愛原:「ええ。何でも栗原さんとリサが決闘することを、お認めになったとか」
 善場:「なかなか頑固なコでしたね。まあ、良く言えば芯の強いコとも言えますが。バイオテロを憎む気持ちは立派なのですが、困ったのは実際にそれに対抗しうる剣技を持ち合わせている上、ほぼ私怨で動いていることです。こちらにも都合がありますので、私怨だけで動かれると正直困るのですが」
 愛原:「彼女に対する条件は、さすがに日本刀を使うことは認めないというものでしたね?」
 善場:「はい。所持自体は許可されているとはいえ、真剣なのは気持ちだけでお願いしますと言っておきました」
 愛原:「彼女の流派は木刀でも斬れると自信満々でしたよ?」
 善場:「彼女の流派はただの剣道のそれではないんですよ。一部の者から『退魔士』と呼ばれているのは、栗原家のは剣術と神道における神通力を併せたものだからです。もっとも、創価学会の台頭を機に神道から仏教、つまり法華経へと変更したようですが、様式を神道からそれに変えただけで、本質は変わらないわけです」
 愛原:「学会員なんですか?リサがヘタに勝ったら、後で公明党が何て言ってくるかなぁ?」
 善場:「そうではないみたいですよ。彼女が現住所としている家を一度訪れたことがありますが、特に三色旗だの聖教新聞だのといった類は見受けられませんでしたから」
 愛原:「ふーん……?」

 まあ、良かった。
 これでもし学会員なら、圧掛けられて栗原さんの不戦勝に決まってるじゃん。

 愛原:「あ、そうか。もし学会員なら、創価学園高校にでも通ってるでしょうからね」
 善場:「そうとは限りませんが、まあ……」

 東京中央学園は無宗教である。

 愛原:「リサ側の条件は『第1形態で戦う』ということですが、いいんですか?」
 善場:「はい。栗原さんの願いは、『化け物を倒す』ことですから、リサにはその姿で戦ってもらいます。だけど、殺してはダメですよ?」
 リサ:「殺さなければいいの?」
 善場:「はい。但し、審判は私がやります」
 愛原:「あ、そうなんですか?」
 善場:「はい。主審と副審は私と私の部下達でやらせて頂きます。当然、審判員たる私達の指示に従って頂きます。いいですね?」
 愛原:「リサ、分かったか?決闘で栗原さんを殺さない程度に戦い、審判の指示は絶対だ」
 リサ:「うん、分かった」

 恐らくリサがやり過ぎそうになった時、善場主任らが試合終了などの合図を出すのだろう。

 リサ:「でも私、剣道できないよ?」
 善場:「それは大丈夫です。あなたは、いつもの通りの戦い方でいいのです」
 リサ:「ふーん……」

 善場主任の真意はこうだ。
 なるべくなら、栗原さんのような若年者でありながら、強い実力者を排除したくはない。
 むしろ、組織に取り込みたいくらいだ。
 しかし、このままではそれは不可能。
 そこで彼女の望みを叶える代わりに、負けた条件としてそういうのを提示する。
 また、第一形態でありながら、例え斬れるとはいえ、木刀程度で負けるようなら、リサはもう要らないということだ。
 もちろん私も、リサが負けるとは思っていない。
 何しろ彼女は、マグナムの弾ですら頭などに受けても死なないのだから。
 リサ退治にたぎる栗原蓮華さんをいなす為の方策なのであると私は理解した。
コメント (1)
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