報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「バイオハザードに注意」

2020-10-23 19:53:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月14日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日の私の仕事だが……おっと、電話だ。

 高野:「お電話ありがとうございます。愛原学探偵事務所でございます」
 ボス:「私だ」
 高野:「渡司様ですね。本日はどのような御依頼でございましょうか?」
 ボス:「あー……愛原君に替わってくれ」
 高野:「はい。少々お待ちください」

 もはや高野君のイジりにスルーするボスだった。

 愛原:「はいはい、お電話替わりました。いつもお世話になっております」
 ボス:「うむ。キミの活躍、聞いているよ」
 愛原:「ありがとうございます。それで、本日はどのような仕事の御紹介で?」

 絶対、探偵業はこのような仕事の受け方はしない。
 これはあくまでもフィクションだと思って、そう受け取って頂きたい。

 ボス:「4つある。『迷子の子猫捜し』『創価学会池田名誉会長の安否確認』『顕正会浅井会長の出自調査』『ゾンビを倒せ』この4つの中から選んでくれ」
 愛原:「ボス!フザけるのもいい加減にしてください!」
 ボス:「私は大いに真面目だがね。無論、どれも気に入らないなら断って頂いて結構。但し、次の仕事の斡旋がいつになるか分からんぞ?」
 愛原:「だったらもう一択しか無いじゃないですか」
 ボス:「そうだろうそうだろう。キミのことだ。当然、『ゾンビをたおs』」
 愛原:「『迷子の子猫捜し』でお願いします」
 ボス:「は!?」
 愛原:「命懸けで手に入れる大金より、目の前の小金稼ぎですよ」
 ボス:「それ……経営者にはあってならぬ考え方だぞ」
 愛原:「『迷子の子猫捜し』でお願いします」
 ボス:「……分かった。キミがどうしてもそう言うのなら、他の仕事は他の探偵に回すとしよう。だが、こんなチャンス滅多に無いことだけは憶えておけよ?」
 愛原:「分かってますよ」

 私は電話を切った。

 高橋:「先生!仕事ですか!?」
 愛原:「ああ。依頼書がファックスでやってくる。その後で仕事開始だ」
 高橋:「了解っス!」

 しばらくしてファックスが受信された。

 愛原:「来た来た。えーと……なになに?場所は江東区森下で、黒猫捜しか。隣の区だな。さっさと行くぞ」
 高橋:「ファッ!?先生ともあろう御方が、迷子の猫捜しっスか!?」
 愛原:「高橋。これだってクライアントにとっては深刻な問題なんだ。『たかが』とは言ってはいけない」
 高橋:「さ、サーセン!」
 愛原:「高野君、これはきっと1日掛かりになると思う」
 高野:「分かりました。行ってらっしゃい」
 愛原:「今回はリサにも協力してもらう」
 リサ:「私も?」
 愛原:「停学中は毎日、家でレポートだろ?『家の手伝い』をしたと書けば、学校の評価も上がるぞ」
 リサ:「おー!」

 因みに義務教育の中学校で停学なんてあるのかと思われるが、私立では『謹慎』とか『特別教育』とかの名の元に存在することがある。
 東京中央学園もそうだというわけだ。
 休校期間中ではあるが、授業はオンラインで行われている。
 しかしリサは謹慎中である為、それを受けることもできない。

 愛原:「じゃあ早速行こう。高橋は車回してくれ」
 高橋:「うっス」
 愛原:「まずはクライアントの家まで行くぞ」

[同日18:00.天候:晴 神奈川県川崎市某所 トチロ~家]

 トチロ~:「何か突然このコが家に迷い込んで来てしまって……」
 愛原:「うん。確かに写真の通りの黒猫だ。首輪の特徴も一致している。お預かりありがとうございます。この猫は私達が責任を持って、飼い主に返しておきますので」
 トチロ~:「よろしくお願いします」

 私は黒猫をキャリーの中に入れた。

 愛原:「さっさと引き上げるぞ」
 高橋:「うっス」

 私達は車に乗り込んだ。

 高橋:「先生。それにしても、江東区で行方不明になった猫が何で川崎にいると分かったんですか?」
 愛原:「クライアントの家の近くで、引っ越しがあったというのは聞いてるな?」
 高橋:「はい」
 愛原:「そのトラックの上に黒猫がいたという目撃証言があった。そのトラックは川崎ナンバーで、しかも引っ越し先がこの近所ということなら、この辺りを総当たりすればヒットすると思った」
 高橋:「でも普通、トラックが動き出せば猫は飛び降りると思うんですがねぇ……」
 愛原:「しかし、例外があった。あとはクライアントから預かった、例の黒猫の匂いのついた物をリサに覚えさせ、その後を追うまでだ」
 高橋:「犬以上の嗅覚じゃないスか、こいつ」
 愛原:「だが、おかげで助かったよ」

 タイラントやネメシスがターゲットをどこまでも追えるのは、ターゲットの匂いを覚えるからだという説がある。
 そんなBOWを使役することができるリサなら、同じ能力を持っているのではないかと思ったのだ。

 リサ:「かわいい猫ちゃん」
 黒猫:「ニャー」
 リサ:「美味しそうな猫ちゃん」
 黒猫:「ニャッ!?」

 うちではペットは飼えない。
 マンションで禁止されているからだけでなく、リサにとっては愛玩兼捕食対象だからである。

 高橋:「じゃあ、江東区まで直行しますんで」
 愛原:「頼むぞ」
 高橋:「因みに、他の仕事は何だったんスか?」
 愛原:「ロクでもない仕事だよ。最後の仕事なんか、ゾンビ無双しろだって」
 高橋:「何なんスか、それ?」
 愛原:「さあな。ラジオ点けろ、ラジオ」
 高橋:「はい」

 助手席に座る私は手を伸ばしてラジオを点けた。

〔「……こちら……警察署です。現在、中には犯人が立てこもっており、どういうわけか、暑内にいた人達の一部も犯人に加担して、次々と……っています!」〕

 愛原:「な、何だ?」

 電波が悪い。

 高橋:「先生、テレビにしてはどうですか?」
 愛原:「そ、そうだな」

 私はテレビに替えてみた。

〔「……警察署に安置されていました遺体が突然起き上がり、周囲にいた関係者や来庁者を次々と襲うという事件が発生しました」〕

 愛原:「えっ!?」

〔「現在、警視庁の機動隊が警察署を取り囲んでいるところですが、これは○×県霧生市で発生した暴動とよく似ており、関連性が疑われています」〕

 愛原:「この警察暑、うちの近くじゃないか!?」
 高橋:「誰かウィルスばら撒いたんスか!?」
 愛原:「ボスの『ゾンビ無双』依頼ってこれかよ!?」
 リサ:「あっ!」

 その時、リサが何かに気づいたようだ。

 愛原:「どうした、リサ?」
 リサ:「私、確かに体のウィルスを相手に植え付けてやることができるの。もちろん、したくない場合はしない」
 愛原:「それがどうした?」
 リサ:「あの、三上先生の死体って、どこに運ばれたの?」
 愛原:「そりゃあ、まずは警察署に……ん!?」
 リサ:「三上先生を殺したのは『9番』。『9番』は自分の触手を三上先生に突き刺して殺した。ということは……その時、Tウィルスを植え付けた可能性がある……」
 愛原:「なっにー!?何でそれを早く言わないんだ!?」
 リサ:「わ、私も今思い出したから……」

 善場主任がリサの『捕食』を全面的に禁止したのは、それが理由でもある。
 リサは自由にできるらしく、今まで『捕食』したコにTウィルスを植え付けるようなことはしなかったそうだが。

 愛原:「善場主任に電話するよ!」

 私は善場主任に電話した。
 すると彼女はもう現場に到着していて、あとはBSAAの到着を待つだけだそうだ。

 善場:「今のところ、ゾンビは警察署内に留められている状態です。そいつらが外に出てしまったら、東京中が霧生市の再来になってしまいます」
 リサ:「『9番』は後で殺す!」
 高橋:「おう、俺も手伝うぜ。気づくのが遅ェお前も反省が必要だな」
 リサ:「ごめんなさい」

 ボスはこれを知ってて私に依頼してきたのか。
 いや、しかし私も事情はリサから聞いていたんだ。
 それで察するべきだったな。
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“私立探偵 愛原学” 「休校と停学」

2020-10-23 11:16:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月13日10:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は気の滅入る雨だ。
 こういう時は事務所にいて、クライアントの話を聞くに限る。
 幸い今日は我が事務所の得意先、NPO法人デイライトという名の政府機関職員、善場主任がやってくる。
 そろそろ約束の時間だ。

〔5階です。下に参ります〕

 エレベーターが事務所のあるフロアに到着するのが、玄関チャイムの代わり。
 小さなビルなので、基本的に1フロア1テナントである。
 それにエレベーターが1基あるので、即ちそれがこのフロアに到着するということは、来訪者があるという合図である。

 善場:「失礼します。おはようございます。善場です」

 善場主任は時間通りに来た。
 さすがである。

 愛原:「おはようございます。ささ、どうぞ応接室に」
 善場:「ありがとうございます」
 愛原:「リサ!」
 リサ:「はーい」

 私はリサを呼び、3人で応接室に入った、

 愛原:「お前はいい!」
 高橋:「えー!?」
 愛原:「『えー』じゃない!」
 高橋:「でもォ……」
 愛原:「『でも』じゃない!」
 高橋:「だって……」
 愛原:「『だって』じゃない!」

 私は高橋をシャットアウトすると、すぐに応接室のドアを閉めた。

 善場:「相変わらず仲がよろしいんですね」

 善場主任は笑みを浮かべて言った。

 愛原:「こんな感じでね、いつもやらせて頂いております」

 私は善場主任の向かい側に座った。
 隣には私服姿のリサが座っている。
 私と善場主任はスーツ姿だが、リサは私服姿である。
 黒いプリーツスカートが特徴だ。
 裾は膝小僧より上の長さ。

 善場:「いいことですね。では早速、昨日あったお話を聞かせて頂けますか?」
 愛原:「はい」

 すると部屋の外から、

 高橋:「お茶は俺が持って行く!」
 高野:「いいからアンタはそこにいなさい!」

 というやり取りが聞こえた。
 その後で、高野君が入ってくる。

 高野:「失礼します。粗茶でございますが……」
 善場:「どうも、おかまいなく。自ら進んで仕事をこなそうとする姿勢、立派ですね」
 愛原:「そういう見方もできるんですが、どうもあいつは空回りしやすくて……」
 高橋:「チェーンでも砂でもまきますよ!」
 愛原:「空転ちゃうわ!」
 高野:「失礼します」

 高野君が出て行く。
 その後、ゴッという鈍い音がしたので、恐らく高野君から高橋へゲンコツが飛んだものと思われる。

 愛原:「えーと……すいません。『9番』の話でしたね。それじゃリサ、その時の状況を話して差し上げて」
 リサ:「はい」

[同日12:00.天候:雨 同事務所]

 善場主任との話は2時間にも及んだ。

 善場:「今日はありがとうございました」
 愛原:「いいえ、とんでもないです。それより、やはり霧生市に行くことになりますか?」
 善場:「まずは上に報告してからになりますが、恐らくそうなるでしょうね。その時はまた御協力お願いします」
 愛原:「もちろんです」
 善場:「午後からは学校ですか?」
 愛原:「3者面談ですよ。あの事件があっても、やはりやるようです」
 善場:「そうですか。まあ、『捕食』行為は全面的に禁止ですからね。これで謎が解けましたよ。あなたには、どうしても『捕食』したかのような強さが見受けられましたからね」

 善場主任はリサを見て言った。

 リサ:「どうせなら、早く人間に戻りたい」
 善場:「戻れるわよ。社会人になる前に、そうなってもらわないと、私達も困ります」
 愛原:「霧生市は復興しないんでしょうか?」
 善場:「安全宣言が出されれば復興しますよ。ただ、今のところBSAAから安全報告が出ていてませんので、何とも言えないのです。広い町ですからね。まだどこかに、BOWが潜んでいるかも分かりません。福島第一原発のように、見えないモノ(放射能)と戦うのも大変なんですが、見えるモノ(BOW)と戦うのも大変なんですよ」
 愛原:「なるほど」

 幸いにしてTウィルスが空気感染するのは、本当に初期の初期だけ。
 あとは感染者との接触感染、血液感染が主となっている。
 この感染者が撲滅できれば、あとは安全と言える。
 新型コロナウィルスのように空気感染が未だにあって、尚且つ飛沫感染などにも注意しなければならないのとは違う。
 共通点としては、どちらにも無症状の感染者もいて、そこからでも感染するという所。
 抗体があってそもそも感染していないから当然症状も無く、そこから更に感染することもないのか、或いは抗体が無くて体内にウィルスを宿しているものの、たまたま症状が無いだけで、そこからまた更に感染者を出してしまうのかの区別が付かないのがもどかしいところだ。
 霧生市になかなか安全宣言が出されないのはそれが理由である。
 因みに栗原蓮華さんは、未感染者であったことが分かっている。

 善場:「上に報告して、BSAAからの許可を取って、それから調査ということになりそうですね」
 愛原:「リサの同族が潜んでいることが分かれば、安全宣言はまた遠のくでしょうね」
 善場:「そうですね」

[同日15:00.天候:曇 東京都墨田区某所 東京中央学園墨田中学校]

 リサと一緒に学校に行くと、まだ警察がいて、マスコミもいた。
 15年前に行方不明だった女子生徒の白骨死体が見つかって、犯人だと自白した教師の惨殺死体が見つかったのであるから、そりゃマスコミとしては恰好のネタであろう。
 恐らく、犯人は表向きには見つからない。
 表向きには。

 愛原:「えっ、停学3日でいいんですか!?」
 担任教師:「ええ……そうです」

 随分と軽いな。
 この学校の休校期間が今週いっぱいだから、それに合わせたとしか思えない。
 しかもこの担任、何故か納得がいかないという顔をしていた。
 一体どういう経緯があったのだろうか。

 リサ:「先生、反省文の提出はどうしますか?もう書いて来ましたよ」
 担任:「ああ、じゃあ受け取っておきます」

 私達は職員室から出ると、学校の外に出た。

 リサ:「先生、サイトーから。『お父さんに頼んで、なるべく処分を軽くしてもらったわ。後で感謝のキスと「捕食」お願い』だって」
 愛原:「斉藤家のしわざかい!」

 斉藤家は多額の寄付金をこの学校法人に納めている。
 その金力でもって理事会に圧でも掛けたのだろう。
 マンガやドラマでありそうなネタだが、今回はそれに助けられたというわけか。
 後で斉藤社長に御礼を言っておかなくてはな……。
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