報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「中学校であった怖い話」 2

2020-10-20 21:10:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月12日17:00.天候:曇 東京都墨田区某所 東京中央学園墨田中学校・西校舎3F女子トイレ]

〔♪♪(ハイケンスのセレナーデ)♪♪。「まもなく下校時刻になります。校内に残っている生徒は、速やかに学校の外に出てください。当分の間、新型コロナウィルス対策の為、下校時刻を繰り上げております。繰り返します。……」〕

 斉藤絵恋:「そろそろ下校時刻だわ」

 部室の窓の外から遠くの校門を見る。

 日野修一:「確かに今日はうちの黒井先生だ。三上先生じゃない」
 愛原リサ:「よし。そろそろ行こう」

 リサ達は新聞部の部室を出た。

〔♪♪(6つのレントラー舞曲)♪♪。「このオルゴールが鳴り終わりますと、校門が閉まります。校内に残っている生徒は、直ちに学校の外に出てください。繰り返します。……」〕

 リサ:「愛原先生が、『これは京急の接近メロディだ』って言ってた」
 日野:「えっ?うちの兄ちゃんは、『川口オートレースの車券販売終了5分前のメロディだ』って言ってたよ?」
 絵恋:「2人とも。原曲はもっとローテンポのオーケストラで、『アニメなんかでお金持ちの屋敷が登場する時に流れてきそうな曲』だからね?」

 全員センスに難ありの3人であった。

 リサ:「おー!お金持ちの屋敷!じゃあ、今度サイトーの家に行った時に聴いてみよう!」
 絵恋:「も、もしかしたら、実家に原盤があったかもしれないわね。新庄やメイド達に探させておくわ」
 日野:「ガチな話なんですか、それ?」

 そんなこんなで3階に到着する。
 その頃にはメロディは鳴り止み、放送も止まっていた。
 あとは今の放送を流していた放送部員が帰れば、この学校からは完全に生徒の姿は無くなる。
 コロナ禍の前までは、夕練や夜練の運動部員が校庭や体育館などに残っていたものだが、今はそれも自粛されて静かなものである。

 リサ:「よし、着いた」

 3階に辿り着く。
 もう日も短くなっており、外は真っ暗に近い状態だった。
 尚更廊下も暗くなっている。

 絵恋:「学校が閉まったら、警備員さんが巡回に来るはずよ。昔は宿直制度ってのがあって、先生が当番で泊まり込みをして、その先生が見回りをしていたみたいだけど……」
 リサ:「そうなんだ」
 日野:「この中等部ではそれほど怖い話は無いんですが、高等部の上野校舎では、その見回りの先生が怖い目に遭ったという話が伝わっているとのことです。何か、得体の知れないモノに襲われて、頭がおかしくなってしまって、長期入院の後に自殺してしまったとか……」
 リサ:「ふーん……」
 日野:「ま、どこまで本当かは知りませんけど……」
 リサ:「シッ!誰か来た」

 リサは2人を静めた。
 例え人間形態であっても、身体能力は人外的である。
 それは五感、特に視覚、聴覚、嗅覚がずば抜けていた。
 懐中電灯を手にやってきたのは……警備員ではなかった。

 斉藤:「あれは三上先生?」
 リサ:「シッ!」

 生活指導担当にして、3年生の学年主任でもある三上であった。
 何故警備員ではなく、三上が見回りをしているのだろう?
 まさか今日だけ宿直制度が復活したわけでもあるまいに。
 東京中央学園は外注化が進んでいて、宿直制度は警備会社との契約による警備員が、校務員(用務員)もビル管理会社に委託して派遣された者で、それぞれがそれらの業務を代行している。
 何故か今日に限って三上が巡回してきて、しかし辺りを確認しながら女子トイレの中に入った。
 女子トイレの時だけは照明を点けて入った。

 リサ:「よし、行こう」

 リサ達はササッとトイレの前に移動した。
 トイレの入口のドアを僅かだけ開けると、果たして三上は奥から2番目の個室のドアを開けて入るところだった。
 まさか、わざわざこんな所で用を足すはずがあるまい。
 件の個室のドアは半開きになっている。

 三上:「やっぱりだ……。やっぱり、またお前の顔が浮き出ている……。どうしてだ?あれはお前が悪かったんだ。どうして俺を恨む?お願いだからさっさと成仏してくれ」

 そんな声が聞こえた。

 斉藤:「一体、何の話をしてるの?」
 日野:「分かりませんが、先生が件の壁のことについて何か秘密を持っているのは確かですね」
 リサ:「しかもさっき見た時には無かった染みが出てるって」
 日野:「これはミステリーですよ。大スクープになりそうです。先生が出たら、早速壁を調査しましょう」

 その時、個室のドアが大きく開いた。
 三上が個室から出て来たのだ。
 三上は壁の方を見ながら、後ずさりするように出て来た。
 何だか顔は憔悴しているかのようだ。

 斉藤:「先生が出て来るわ」
 リサ:「よし、一旦逃げよう」

 リサ達が後ろに下がろうとした時だった。

 日野:「うわっ!」

 一番前にいた日野をリサが引っ張ったのだが、日野はバランスを崩して転倒した。
 その時、投げ出された足がドアに当たる。

 三上:「誰だ!?」

 三上がドカドカやってきて、トイレ入口のドアを開ける。

 三上:「お前達!」
 リサ:「……!」
 三上:「今の話を聞いていたのか?」
 日野:「す、すいません!新聞部の取材で、どうしても気になってしまって……」
 三上:「そうか……。せっかくここまで来たんだ。ついでに、壁を見てみるか?」
 斉藤:「えっ!?」

 三上の意外な言葉に、3人は目を丸くした。
 思いっきり体罰されたり、親呼び出しを食らうくらいのことは覚悟していたのだが。

 三上:「いいんだ。ここまで来たらしょうがない。見たければ見ていい」
 日野:「は、はい。ありがとうございます」

 日野はカメラを片手に件の個室に向かった。
 絵恋のその後ろを、リサは訝し気な顔になりながらもその後ろを付いた。

 日野:「あれっ!?」

 だが、日野が素っ頓狂な声を上げた。

 斉藤:「無い!染みなんて無いわ!」
 リサ:「……だろうね」

 リサは三上を見た。
 日野と絵恋はまだ事態を飲み込めないといった顔だが、リサは何となく気づいていた。

 リサ:「でも、この壁の中には何かある。だけど、顔の染みが浮き出るという噂はウソ。……ですね?」
 三上:「愛原は勘が鋭いな。そうだ。そんな噂はウソだ。いくら俺でも、そんな魔法は使えんよ」
 斉藤:「どういうことですか?」
 三上:「まだ分からんのか?」
 リサ:「壁に顔の染みが浮き出るという噂はウソ。そして、それを流したのは三上先生ということだよ、サイトー」
 斉藤:「ええっ!?どうしてそんなことを!?」
 リサ:「その壁に何かを隠してあるので、それを隠す為ですね?」
 三上:「さすが愛原だな。確かお前は……そうか。親はいないが、確か保護者が探偵業をやってるんだったか。だから勘が鋭いのか?」
 リサ:「さあ、どうでしょう」

 リサは大げさに肩を竦めてみせた。

 リサ:「壁の中に何を隠しているんですか?」
 三上:「それはだなぁ……何だと思う?」

 1:女子生徒の死体
 2:男子生徒の死体
 3:女性教師の死体
 4:男性教師の死体
 5:化け物の死体
コメント
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