報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサへの躾」

2020-10-12 19:50:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月10日15:30.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 愛原:「『0番』って何なんですか?」
 善場:「分かりませんが、恐らく番号的に、試作タイプとか、そういう意味なのかもしれません」

 善場主任が考えながら答えた。

 善場:「或いは、もっと別の意味なのかもしれません。リサ・トレヴァー以外のBOWがいて、それのことかもしれませんし。もちろん、それが何なのかは現時点では何とも言えませんが……」
 リサ:「それより善場さん、『退魔士』って知ってる?」
 善場:「文字通り、魔を退ける力を持つ人のことね。それがどうしたの?」
 リサ:「カトーがそう言ってたの。栗原蓮華さんのこと」
 善場:「カトーというのは、あなたが屋上で戦った男のBOWのことね。今のところ分からないけど、調べておくわ」
 愛原:「リサが襲われる心配は無いんでしょうか?」
 善場:「彼女のことについては、もちろんこちらから話しておきます。今は入院中ですので、退院してからということになるでしょうね」
 愛原:「それにしても、霧生市のバイオハザードで片足を失うなんてなぁ……」
 善場:「恐らく彼女も、Tウィルスに対しての抗体を持っているのでしょうね。しかし、他の感染症の恐れがあったので、切断せざるを得なかったのでしょう。この辺も話を聞く必要がありそうです」

 私達みたいに五体満足で、ケガらしいケガもしないで町を脱出できたのは奇跡に近かったわけか。

 善場:「それと……」

 善場主任はリサを見た。

 善場:「あなた、本当に人間を『食べて』いないのよね?」
 リサ:「食べてません」
 善場:「本当に?」
 リサ:「あの栗原さんにも聞かれましたけど、私は食べてません」
 愛原:「急にどうしたんですか?」
 善場:「『退魔士』は人間を捕食した者の所に現れると言います。実際、それまで倒されたリサ・トレヴァーはそうでした。『10番』についても解剖して調べているところですが、恐らく何人かは食べているでしょう」
 リサ:「うん。確かにカトーから、腐臭がした。人間を食べた者は、そういう変な臭いがするものだから」

 人間だって、肉を多く食べる者は体臭が強くなるというからな。

 善場:「あなたからも、少しそういう臭いがしますよ?」
 リサ:「……!」

 リサはピクッと反応した。

 高橋:「おい、マジで食ってたのかよ?」

 高橋はリサのコメカミにマグナム44を突き付けた。

 高橋:「言わなきゃ撃つぞ?」
 リサ:「肉は食べてない。本当です。少し……血をもらったことはあるけど……。でも、襲って取ったんじゃなく、ちゃんと頼んでもらったものです!」
 善場:「それを証明してくれる人はいる?」
 リサ:「コジマ!……あの、私に血をくれたクラスメートです。ちゃんと私が頼んで、ちゃんとOKをもらってから、血をもらったことを証明してくれます」
 善場:「分かったわ」
 高橋:「姉ちゃん、いいのかよ?リサが嘘ついてるかもしれねーぜ?」
 リサ:「ウソじゃない!」
 善場:「多分、ウソは言ってないと思います。すぐに証人の名前を言いましたからね。もしもウソだったら、言う前にブランクがあるか、或いはしどろもどろに言うでしょう。それを堂々とすぐに言ったということは、その人物は実在していて、しかもちゃんとリサに証言してくれる自信があるということでしょう」

 リサの顔が明るくなる。

 善場:「でもね、リサちゃん」
 リサ:「はい」
 善場:「いくらちゃんと頼んでからもらったからといって、人間の血を啜るのは良くないわ」
 リサ:「……ガマンできなくて……」
 善場:「あなたはこれから人間に戻る為に頑張らないといけないの。私があなたを見込んでいるのは、あなたは確かに今はBOWという化け物だけど、心はまだ人間のままだと思ったからなの。だけど、血を欲しがって、その通りに行動したら、いつか人間の心も失われてしまう。そうなったら、あなたはもう2度と人間に戻れなくなるわ」
 リサ:「……はい」
 愛原:「かといって、ガマンを強いて、それが爆発して暴走してしまっても困るような気がします。少量の血でいいなら、それでもいいような気がします」
 高橋:「先生、何言ってんスか!?」
 愛原:「まあまあ。考えようによっては、だよ。リサが襲ったり、脅して血を取ったというのなら、量の多少に関わらずアウトだろうがね」
 リサ:「実は……」

 リサは小島さんというクラスメートのことを白状した。
 潰瘍性大腸炎で下血のヒドい彼女の為に、大腸の中身を触手で吸い取ったこと。
 自分でも理由は分からないが、何故かそれで小島の症状が改善されたことだ。

 高橋:「気持ち悪ィ!こいつ、クソ食ったのかよ!?」
 リサ:「私の触手は別。相手の養分しか吸い取らないの。直接口に入れるわけじゃない。コジマは喜んでて、御礼もくれたくらいです。ダメですか?」
 善場:「うーん……」

 善場は考え込んだ。

 善場:「まあ、簡単に結論を出すならダメね。どうして症状が改善したのか不明だし、それはあくまで一時的なものであって、後で却って症状を悪化させるのかもしれないし。で、やっぱりBOWの体の一部を普通の人間の体内に入れること自体もアウトだと思う。今は人助けになってるのかもしれないけど、でもやっていることは化け物そのものだし、やっぱり今後はやめなさい」
 リサ:「…………」
 高橋:「おい、返事はどうしたよ?先生、こいつ反抗期ですよ?ボコして言う事聞かせた方がいいんじゃないスか?」
 愛原:「私は……人助けになっている時点でOKだと思います」
 高橋:「先生!?」
 善場:「どういうことでしょうか?」
 愛原:「何度も言う通り、今のリサはBOWです。人の生き血に涎を垂らし、凄惨な死体を見て、それを美味そうに舌なめずりをする化け物です。禁止させるのは簡単ですが、しかしその代わりを与えないと。犬にだって人に噛み付くことを禁止させる代わりに、噛んでも良い玩具を与えたりするでしょう?」
 善場:「人の生き血の代わりを与えろと?」
 愛原:「でも、そんなのムリでしょう?まさか、赤十字社から輸血パックをリサの為だけに回してもらうこともムリでしょうし。だとしたら、逆にリサが血を吸うことで喜んでくれる人の血を吸わせればいいんですよ。それでリサの気が済んで、暴走が抑えられるというのであれば」

 リサは私の言葉に何度も首を縦に振った。
 自分の味方になってくれる人がいて嬉しそうだ。

 善場:「うーん……」
 リサ:「私、絶対に人を襲いません。私がBOWの間に助けられる人がいるなら、そうしたいです」
 善場:「……私は聞かなかったことにします」
 愛原:「善場主任!?」
 善場:「よくよく考えれば、ここのリサのことについては、愛原所長に一任していますので、一定の責任は愛原所長ということになりますので」
 高橋:「出た!お役人根性の責任逃れ!」
 愛原:「高橋、やめなさい」

 これは一種の黙認であろう。
 リサが暴走しても、今の『捕食』行動が後で問題になっても、善場主任の関知するところであれば、彼女に責任が及ぶ。
 しかし、関知していないことであるとするならば、責任は全て保護者たる私の責任ということになる。
 それは上等だ。
 リサの行動に理解を示したのは私だけなんだから。

 愛原:「リサ。これからは誰彼構わず『捕食』するのはやめなさい。いくら理由があるとはいえ、本当はダメなことなんだからね」
 リサ:「分かりました」
 愛原:「特に、あの『退魔士』のコには見つからないように」
 リサ:「はい」

 リサが暴走しないようにする為に、ある程度の『捕食』は認める。
 犬の噛み付き行為を防ぐ為、そのように躾をするのは大事だが、しかし犬のストレスにならないよう、代わりにいくら噛んでも良い物を与える。
 少し前、テレビで観た動物番組のことを思い出せて良かったな。
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“私立探偵 愛原学” 「日本版完全体リサ・トレヴァー」

2020-10-12 15:35:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月10日13:30.天候:雨 東京都墨田区某所 東京中央学園墨田中学校]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 私は今、とても急いでいる。
 どうやらそれまでリサ・トレヴァーを斬ってきた剣士が、この学校にいるらしい。
 リサの正体がばれたりしたら大変だ。
 そして今、それは屋上にいることが分かった。

 高橋:「先生!屋上が騒がしいですよ!?」
 愛原:「ヤバいな!マジで戦闘中か!?」

 私が屋上へ出るドアを開けた時だった。

 愛原:「!!!」

 私が見たのは2人のBOWと、そのうちの1人の触手に絡め取られている見知らぬ女子生徒だった。
 2人のBOWのうち、1人はリサだと分かった。
 だが、そのリサは倒れていた。
 もう1人は男のようだが、誰だ?
 いや、とにかく……!

 愛原:「何してるんだ!!」

 私はとっさに男に手持ちのハンドガンを発砲した。
 マシンピストルタイプで、パンパンパンと弾が連射される。

 加藤:「ぐわっ!何だ!?」
 愛原:「リサ、大丈夫か!?」
 リサ:「先生……!」
 加藤:「邪魔するな!」
 高橋:「そっちこそ、先生の仕事の邪魔すんじゃねーよ」

 高橋はマグナムを取り出した。
 ドゴン!ドゴン!と大型拳銃ならではの低い発砲音がする。

 加藤:「ば、バカな……!」

 男のBOWは血反吐を吐きながら倒れた。

 愛原:「キミ、大丈夫かい!?」
 栗原蓮華:「け、警察の方ですか……?」
 愛原:「いえ、探偵です!」
 蓮華:「探偵!?」
 高橋:「おう、コラ!先生のお手を煩わせやがって、この野郎!」

 高橋は男のBOWの頭を撃ち抜き、とどめを刺した。

 愛原:「一体、何があったのか説明してもらうからな。特にあなた!……えーと、栗原蓮華さん!」
 リサ:「それよりこの人、病院に連れて行った方がいいよ。あいつに肩を貫かれたから……」

 それから30分後……。

 栗原愛里:「ううう……!お姉ちゃん……!ぐすっ……!」

 栗原蓮華という子は救急車で病院に搬送された。
 妹だというコと、学校関係者と一緒にだ。

 高橋:「先生!あいつ……BOWの男なんですが、左腋に『10』という数字がありました!」
 愛原:「『10番』か。ハズレだな」

 因みにリサの左腋には『2』という数字が入れ墨されている。

 愛原:「まあ『1番』はリサ並みに強いというからな。さっきの奴はさすがに弱過ぎる」
 リサ:「それでもゾンビやハンターよりも強いんだからね?」
 愛原:「リサはどうしてやられたんだ?」
 リサ:「栗原蓮華さんに後ろから触手を斬られたから。で、その隙に加藤に攻撃された」
 愛原:「おいおい、大丈夫なのか?」
 リサ:「うん。触手を斬られても痛くないし、すぐまた生えるから」
 愛原:「髪の毛かよ」

 その時、私のスマホに電話が掛かって来た。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「善場です。状況をお願いします」
 愛原:「まず、BOWがもう1人いました。ええ、リサとは別です。どうも、この学校の男子生徒として通っていたようですが、リサを戦闘不能にし、また、もう1人別の女子生徒に襲い掛かっていたので、やむなく射殺しました」
 善場:「そうですか。所長方にお怪我は?」
 愛原:「私達はありません。リサも触手を斬られたそうですが、大きなダメージではないようです」
 善場:「刀を持った者とは接触できましたか?」
 愛原:「はい。ただ、男のBOWに肩を貫かれたそうで、病院に搬送されています。病院は……」

 私は病院の名前を教えた。

 善場:「分かりました」
 愛原:「日本刀を持っていて、BOWを斬り殺したのが女子高生だなんて意外ですね」
 善場:「この辺については調査しています。愛原所長は報告書の提出をお願いします」
 愛原:「分かりました」

 私は電話を切った。

 愛原:「よし。俺達は引き上げるぞ。リサ、一緒に帰るか?」
 リサ:「うん」

 私達は車で来ていた。
 最初は栗原蓮華というコを捜しに高等部の校舎がある上野に行っていたのだが、既に下校したということで、リサを迎えに行こうとした。
 そしたら、リサが変化したことを知らせるアラームが私のスマホから鳴った為、急いで向かった次第である。
 因みにリサ、今は第0形態に戻っている。

 リサ:「ブラウス、破けちゃった。ごめんなさい」

 リサのブラウスの背中には何か所かの穴が開いていた。
 それは、そこから触手が突き出た証拠である。

 愛原:「いいよ。また新しいの買うから」

[同日15:00.天候:雨 墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 善場:「お疲れさまです。報告書の作成は終わりましたか?」
 愛原:「あ、はい。これですね」

 善場主任が事務所を訪ねて来た。
 私はすぐに報告書を提出した。

 善場:「今回の発砲につきましては、相手が明らかなBOWである為、正当な使用であることを認めます。後で使用した弾薬を補充しておきますので」
 愛原:「ありがとうございます。あの女子高生の容体はどうですか?」
 善場:「左肩を触手で貫通させられたそうですね。ですが、意識ははっきりしており、また、何かウィルスの感染なども今のところは確認されていません」
 愛原:「それは良かった。リサにも話を聞きましたが、リサはその女子高生に斬り掛かられたものの、何の反撃もしていないそうなので」
 善場:「そのようですね」
 愛原:「さすがに反撃の機会くらいは認めてあげてもいいのでは?」
 善場:「それが普通の人間なら当たり前でしょう。しかし、リサはBOWです。普通なら刃物で斬られても、殆ど何も感じない。なので、上は認めないでしょうね」
 愛原:「そんな……」
 高橋:「いくらBOWをぶった切る為とはいえ、日本刀の持ち歩きは違法なんじゃねーの?俺達は姉ちゃんから特別に認めてもらってるけどよ」
 善場:「一応、すぐには抜けないよう、麻袋に入れて持ち歩いていたようですね。それと、所持自体は許可されています」
 高橋:「んん?」
 愛原:「左足が義足になってたみたいですけど、それでよくBOWを一刀両断できるものですね」
 善場:「恐らく義足がそれだけ高性能か、或いは残った右足で踏み込んでいるのでしょうね。こちらの調査したところ、あのコは霧生市の生まれ育ちです」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「左足が無いのは、あのバイオハザード事件の際にBOWかクリーチャーに襲われてしまった為だということまで分かりました。後で聞き取り調査はしますが、あれもいい戦力になってくれるかもしれません」
 リサ:「襲ったのは私じゃないかって誤解してました。私はあの人を襲った記憶は無いです。多分、別の誰かだと思います」
 善場:「別の誰か……リサ・トレヴァーってことね。それに心当たりは無い?」
 リサ:「無いです。私が一番最後に研究所に取り残されたから。ただ……」
 愛原:「ただ?」
 リサ:「先生、私達が町から脱出する時に乗ったトラック、覚えてますか?」
 愛原:「普通の2トントラックだったが?荷台は幌付きで、荷台には空のゲージが3個ほど乗っかってたな。多分、実験動物か何かを運んでたトラックじゃないかと思うんだが……」
 リサ:「その中に大きなゲージがあって、鍵が壊れていたんです。内側から壊されていました。そのゲージには『1』という札がありました」
 愛原:「それもしかして……?」
 善場:「リサ・トレヴァー『1番』を入れてたゲージだったのかもね。……その札の裏側、何て書いてあったか、覚えてる?」
 リサ:「はい。『0と合流→東京へ』と書いてありました」
 愛原:「0と合流!?」
 高橋:「東京にいんのかよ!?」

 0ってなに!?
 『1番』の前に『0番』がいるってこと!?
 『0番』って何だよ!?
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“愛原リサの日常” 「退魔士レンゲ」

2020-10-12 11:47:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月10日13:00.天候:雨 東京中央学園墨田中学校・西校舎屋上]

 リサ:「こんな所で何の用?」
 栗原愛里:「お姉ちゃんが先輩に用だそうです」
 リサ:「!」

 屋上に出ると、そこにはダブルのブレザーを着た女子生徒が立っていた。
 意匠は同じながら、ダブルのブレザーは高等部の生徒だという証だ。
 中等部のブレザーはシングルなので。
 身長は170cmほどあり、髪は長いポニーテールをしている。
 手には何か長い棒のようなものを持っていた。
 そして、特筆すべきは左足。
 右足は至って普通なのに、左足は義足を着けている。

 愛里:「お姉ちゃん、連れて来たよ」
 女子生徒:「ありがとう。愛里は先に帰ってて。私はこのコと話があるから」
 愛里:「分かった。……気をつけてね」

 愛里と名乗る1年5組の生徒は階段室に入って行った。

 リサ:「あなたは?」
 栗原蓮華:「私は栗原蓮華。高等部の上野キャンパスに通ってる者よ。あなたね?うちの妹を『捕食』したのは?」
 リサ:「……そうです、と言ったら?」

 蓮華は麻袋を取った。
 その下には日本刀が入っている。

 蓮華:「もう1つ聞きたい。あなたは霧生市にいたことはある?」
 リサ:「……ある」

 すると、蓮華はスラッと日本刀を抜いた。

 蓮華:「更にもう1つ。あなたは何人、人間を食べた?」
 リサ:「肉は一口も食べてない(多分)」
 蓮華:「体に聞くしか無いみたいね!」
 リサ:「!!!」

 ビュッと風を切る音がした。
 咄嗟にリサは避けた。

 リサ:(私のことを知ってる!?まさか……)

 リサは今朝方、愛原から言われたことを思い出した。
 剣か刀を使って、『リサ・トレヴァー』を狩っている者がいると。
 これがそうなのか。

 蓮華:「どうしたの?逃げ回っているだけ?」
 リサ:「私は人間を攻撃しない」

 リサは階段室に入ろうとしたが、鍵が掛けられてしまっている。

 蓮華:「もう1つ聞く!私の顔を覚えてるか!?」
 リサ:「知らない!」
 蓮華:「霧生市にいたんでしょ!?そして、あの地獄の町の中を歩いたんでしょ!?」
 リサ:「私はずっと研究所にいた。だから町のことは知らない」
 蓮華:「ウソつくな!私の左足を食べたのはお前だな!!」
 リサ:「だから、食べてない!」

 人間への本当の意味での捕食については記憶の無いリサだが、霧生市のことはしっかり記憶に残っている。
 霧生市の研究所に送られてから、リサは殆どそこから出たことがない。
 本格的に出たのは、愛原達と共に町を脱出する時だけだ。

 リサ:「離脱!」

 リサは大ジャンプをして屋上の柵を乗り越えた。

 蓮華:「逃がすか!」

 蓮華は屋上の柵ごと日本刀で斬りつける。

 リサ:「!?」

 リサは屋上から飛び降りようとした。
 人間なら死ぬが、リサ・トレヴァーは4階の高さから落ちたくらいでは死なない。
 リサがそれを躊躇ったのは屋上にもう1つの気配を感じたからだ。

 リサ:「くっ!」

 リサは屋上の縁に手を掛けた。

 蓮華:「なに?飛び下りないの?」
 リサ:「それどころじゃない」

 しかし蓮華はリサを追い詰めたと思ったらしい。
 リサの前にしゃがんだ。
 スカートの中の黒いスパッツが見えるくらい近い。

 蓮華:「私の左足は美味しかった?弟の味は美味しかった?」
 リサ:「だから、何のことだか分からない。研究所には私の同族が何人かいた。多分、あなた達をやったのはそいつらの誰かだと思う」
 蓮華:「もういいよ。化け物はすぐウソを付く。今まで倒して来た奴らもそうだった」

 蓮華はリサの額に刀の切っ先を向けた。

 蓮華:「ここから落ちても死なないんでしょ?だったら、これで頭を串刺しにしてやる。さようなら」
 リサ:「! 後ろ!」
 蓮華:「また変なウソを……!」
 リサ:「違う!後ろ!……やめろ!!」

 その時、リサは見た。
 この学校にいた『リサ・トレヴァー』は、愛原リサだけではなかったということ。

 蓮華:「ぎゃっ……!」
 リサ:「……っ!」

 リサが屋上に戻ると同時に、そいつは攻撃してきた。
 そして、リサが蓮華の肩にぶつからなければ、蓮華は体を貫かれていただろう。
 代わりに、左肩を貫かれた。

 リサ:「あなたは……!」

 そこにいたのは背中から触手を生やしていた加藤。

 加藤:「また邪魔しやがって……!」
 リサ:「あなたもBOWだったの!?」
 加藤:「俺の餌場を荒らしやがって。卒業前にごっそり食うはずだったのに」

 名前で誤魔化されるが、『リサ・トレヴァー』はあくまで、個人名である。
 BOWとしての名前は無い。
 無いので便宜上、最初にその姿になった個人名をBOW名にしているだけなのだ。
 つまり、そういうBOWになるのは女だけではないということ。

 蓮華:「くっ……!何なのこの学校……!化け物が2匹もいるなんて……」
 加藤:「年貢の納め時だな。『退魔士』さんよ?あんまチョーシに乗ってると、こういうしっぺ返しが来るってことだ。おい、愛原。こいつは俺が食う。お前は退いてろ」
 リサ:「それはダメ」
 加藤:「あぁ?何言ってんた。こいつはお前を殺そうとしたんだぞ?」
 リサ:「この人は誤解している。まずはその誤解を解いてから」
 加藤:「誤解を解いても、『退魔士』は俺達を襲うぞ?それが仕事だからな」
 蓮華:「そうよ。私の運と油断したのが悪かった。一思いに殺して」
 リサ:「それはできない。お前こそ去れ。この人は私に用があって来たんだ。まだ用件は終わってない。横から口出しするな」

 リサも第0形態から第1形態へと変化した。

 蓮華:「やっぱり……あなたも『鬼』……」
 リサ:「まずはあいつを何とかする。それから落ち着いて話をしよう」

 リサはそう言って加藤に向かって行った。

 加藤:「てめ、こら!なに人間の味方してんだ!」
 リサ:「お前が邪魔したからだ!」
 蓮華:(何なのあいつ……。あの、リサってコ……。今までの奴らとは違うような……)
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