[10月1日13:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
善場:「それでは愛原リサは『2番』と呼ばれていたんですか?」
愛原:「はい」
善場主任が来所して、ついに明かされたリサの過去について教えてくれた。
その前に色々と確認される。
愛原:「実際にリサが着けていた白い仮面の内側にも『2』という番号が振られていましたし、セーラー服のタグにも『2』という番号が書いてあったので」
善場:「なるほど。分かりました」
愛原:「すると、リサは……」
善場主任が見せてくれた資料がある。
それはリサが人間だった頃に入所していた児童養護施設から押収されたもので、リサが人間だった頃の物だ。
愛原:「入所年月日が198○年10月9日。俺が生まれた年だ。その時のリサの年齢が6歳……」
善場:「両親は不慮の事故で死亡した模様です」
愛原:「ということは、リサの実年齢は俺より6歳年上……」
善場:「この頃から既に旧・日本アンブレラによる計画が始まっています。アメリカの本体がオリジナル版のリサ・トレヴァーの研究を放棄したので、それを始めたのが1980年代半ばですから。日本法人が設立されてから、そんなに日が経たないうちですね。もしかしたら、日本アンブレラはその為に設立されたのかもしれません」
愛原:「とんでもないな!」
善場:「はい。そしてリサ・トレヴァー……愛原リサはその2年後、旧アンブレラに『養子』という名の『実験体』として引き取られています」
極端に歳を取る速度が落ちるのは、投与された始祖ウィルスの特徴であるという。
もちろん当時はまだGウィルスなんて無かっただろうが、こっちのリサはアメリカのオリジナル版と同じ結果を歩んだにも関わらず、化け物になることは殆ど無かった為に、実験の成功を確信したのだろう。
アメリカの方は90年代になってから、オリジナル版から生成されたGウィルスの採取に成功し、それを元に新たな生物兵器を造ろうとした。
一方、日本の方ではあくまでもリサ・トレヴァーそのものを生物兵器として上手く使う方法を模索した。
その理念そのものは2010年代になってから、HCFなるバイオテロ組織が新型真菌兵器“エヴリン”の製造に生かしたという皮肉がある(10代の少女がまさか生物兵器だとは誰も思うまい、というもの)。
愛原:「そして、リサの誕生日と本名は?」
善場:「誕生日は10月1日……今日ですね。……現行の戸籍上は、本日を以って15歳になったことになります。本名は愛原リサです」
愛原:「ええ、今の戸籍上の名前は愛原リサですね。その前、人間だった頃の名前は?」
善場:「上野暢子。どうします?今なら、名前の変更は可能ですよ」
愛原:「リサに聞きます。というか、日本人離れした顔立ちなのに、人間だった頃も日本人の名前だったんですね」
善場:「恐らくクォーターなのかもしれません。いずれにせよ、祖父母の代まで遡るのは難しいでしょうね」
愛原:「それと……。急いで誕生日パーティーの準備をしなくちゃ。一応、リサの過去も明らかになったことだし、盛大に祝ってあげよう」
とはいえ、両親が不慮の事故で死亡した為に入所せざるを得なかった孤児院で、今度は旧・日本アンブレラに売られて実験体になったなんて、とても祝える過去じゃないけどな。
私としては過去とは決別してもらい、『人間に戻る為の一歩』という前祝のつもりだ。
善場:「どこか会場でも押さえますか?」
愛原:「いや、この事務所でいいでしょう。急いで飾りつけをしなければ……」
善場:「あの施設から買われてしまった少女達の中で、数少ない生き残りですからね。むしろ、よく生き残ってくれたことを喜んであげた方が、リサも喜ぶかもしれません」
愛原:「それだ!さすがは善場主任!……リサ以外にも生き残っているコとかいるんですか?」
善場:「まだ1人しか確認できていないんですが、きっと他にもいると信じていますよ」
愛原:「1人いるんですか。いずれ会いたいものですな」
善場:「そうですね。いずれ御紹介できるといいですね」
善場主任はそう言うと、何故か含み笑いを浮かべた。
善場:「私はそろそろ失礼しましょう。パーティーの準備の邪魔になるといけませんので」
善場主任が退出すると……。
愛原:「皆、聞いたか!?すぐに準備だ!」
高橋:「うス!一応、ピザ屋にパーティーセットの予約を入れておきます」
高野:「私はケーキ屋さんに電話してみますよ。ホールの既製品でしたら、あとはネームプレートを入れてもらうだけで済むはずです」
愛原:「俺はリサの欲しがってたゲームでも買って来てあげよう」
高橋:「中3なのに、受験勉強させなくていいんですか?」
愛原:「おい、高橋。東京中央学園は中高一貫校だぞ。中等部の成績が悪くなければ、自動的に高等部に上がれるんだ」
高橋:「そいつぁ羨ましい」
高野:「元々あんた、受験とは関係の無い人生だったでしょ」
高橋:「うっせ!」
しかしこう見えても高橋、高卒なのである。
とはいえ全日制の普通高校ではなく、定時制ではあったが。
それでも中卒ばかりの少年受刑者の中で、高橋はエリート扱いであったという。
愛原:「まあ、いいからいいから。俺はリサにメールでも入れておくよ。『オマエの誕生日が今日だと判明したから、これから事務所で誕生日パーティーをやるから早く帰って来い』ってさ」
高野:「その方がいいですね。でも先生、リサちゃんの誕生日プレゼント、どうするんですか?」
愛原:「ひとっ走り、錦糸町まで行って来るよ。近くのバス停からバス一本だ」
高野:「一応、リサの欲しい物、改めて確認しといた方がいいかもっスよ?」
愛原:「! それもそうだな」
私は改めてリサにメールを送った。
すると、リサから返信が来た。
リサは今日が自分の誕生日だったことに驚きつつも、掃除当番が終わったらすぐ帰ると返して来た。
欲しい物はゲームではなく、新しいPCが欲しいということだった。
確かに家には、私が個人的に使用しているノートPCしか無い。
高橋は事務所で自分の机のPCを使っているからいいが、リサには私用で使えるものがない。
あまり高スペックのものは高額なので無理だが、そうでないものについてなら買えるだろう。
といっても、それだとすぐには購入できないがな。
オンライン授業はタブレットを使っているが、それは高橋のお下がりだ。
プレゼントは後日ってことなるかな。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
善場:「それでは愛原リサは『2番』と呼ばれていたんですか?」
愛原:「はい」
善場主任が来所して、ついに明かされたリサの過去について教えてくれた。
その前に色々と確認される。
愛原:「実際にリサが着けていた白い仮面の内側にも『2』という番号が振られていましたし、セーラー服のタグにも『2』という番号が書いてあったので」
善場:「なるほど。分かりました」
愛原:「すると、リサは……」
善場主任が見せてくれた資料がある。
それはリサが人間だった頃に入所していた児童養護施設から押収されたもので、リサが人間だった頃の物だ。
愛原:「入所年月日が198○年10月9日。俺が生まれた年だ。その時のリサの年齢が6歳……」
善場:「両親は不慮の事故で死亡した模様です」
愛原:「ということは、リサの実年齢は俺より6歳年上……」
善場:「この頃から既に旧・日本アンブレラによる計画が始まっています。アメリカの本体がオリジナル版のリサ・トレヴァーの研究を放棄したので、それを始めたのが1980年代半ばですから。日本法人が設立されてから、そんなに日が経たないうちですね。もしかしたら、日本アンブレラはその為に設立されたのかもしれません」
愛原:「とんでもないな!」
善場:「はい。そしてリサ・トレヴァー……愛原リサはその2年後、旧アンブレラに『養子』という名の『実験体』として引き取られています」
極端に歳を取る速度が落ちるのは、投与された始祖ウィルスの特徴であるという。
もちろん当時はまだGウィルスなんて無かっただろうが、こっちのリサはアメリカのオリジナル版と同じ結果を歩んだにも関わらず、化け物になることは殆ど無かった為に、実験の成功を確信したのだろう。
アメリカの方は90年代になってから、オリジナル版から生成されたGウィルスの採取に成功し、それを元に新たな生物兵器を造ろうとした。
一方、日本の方ではあくまでもリサ・トレヴァーそのものを生物兵器として上手く使う方法を模索した。
その理念そのものは2010年代になってから、HCFなるバイオテロ組織が新型真菌兵器“エヴリン”の製造に生かしたという皮肉がある(10代の少女がまさか生物兵器だとは誰も思うまい、というもの)。
愛原:「そして、リサの誕生日と本名は?」
善場:「誕生日は10月1日……今日ですね。……現行の戸籍上は、本日を以って15歳になったことになります。本名は愛原リサです」
愛原:「ええ、今の戸籍上の名前は愛原リサですね。その前、人間だった頃の名前は?」
善場:「上野暢子。どうします?今なら、名前の変更は可能ですよ」
愛原:「リサに聞きます。というか、日本人離れした顔立ちなのに、人間だった頃も日本人の名前だったんですね」
善場:「恐らくクォーターなのかもしれません。いずれにせよ、祖父母の代まで遡るのは難しいでしょうね」
愛原:「それと……。急いで誕生日パーティーの準備をしなくちゃ。一応、リサの過去も明らかになったことだし、盛大に祝ってあげよう」
とはいえ、両親が不慮の事故で死亡した為に入所せざるを得なかった孤児院で、今度は旧・日本アンブレラに売られて実験体になったなんて、とても祝える過去じゃないけどな。
私としては過去とは決別してもらい、『人間に戻る為の一歩』という前祝のつもりだ。
善場:「どこか会場でも押さえますか?」
愛原:「いや、この事務所でいいでしょう。急いで飾りつけをしなければ……」
善場:「あの施設から買われてしまった少女達の中で、数少ない生き残りですからね。むしろ、よく生き残ってくれたことを喜んであげた方が、リサも喜ぶかもしれません」
愛原:「それだ!さすがは善場主任!……リサ以外にも生き残っているコとかいるんですか?」
善場:「まだ1人しか確認できていないんですが、きっと他にもいると信じていますよ」
愛原:「1人いるんですか。いずれ会いたいものですな」
善場:「そうですね。いずれ御紹介できるといいですね」
善場主任はそう言うと、何故か含み笑いを浮かべた。
善場:「私はそろそろ失礼しましょう。パーティーの準備の邪魔になるといけませんので」
善場主任が退出すると……。
愛原:「皆、聞いたか!?すぐに準備だ!」
高橋:「うス!一応、ピザ屋にパーティーセットの予約を入れておきます」
高野:「私はケーキ屋さんに電話してみますよ。ホールの既製品でしたら、あとはネームプレートを入れてもらうだけで済むはずです」
愛原:「俺はリサの欲しがってたゲームでも買って来てあげよう」
高橋:「中3なのに、受験勉強させなくていいんですか?」
愛原:「おい、高橋。東京中央学園は中高一貫校だぞ。中等部の成績が悪くなければ、自動的に高等部に上がれるんだ」
高橋:「そいつぁ羨ましい」
高野:「元々あんた、受験とは関係の無い人生だったでしょ」
高橋:「うっせ!」
しかしこう見えても高橋、高卒なのである。
とはいえ全日制の普通高校ではなく、定時制ではあったが。
それでも中卒ばかりの少年受刑者の中で、高橋はエリート扱いであったという。
愛原:「まあ、いいからいいから。俺はリサにメールでも入れておくよ。『オマエの誕生日が今日だと判明したから、これから事務所で誕生日パーティーをやるから早く帰って来い』ってさ」
高野:「その方がいいですね。でも先生、リサちゃんの誕生日プレゼント、どうするんですか?」
愛原:「ひとっ走り、錦糸町まで行って来るよ。近くのバス停からバス一本だ」
高野:「一応、リサの欲しい物、改めて確認しといた方がいいかもっスよ?」
愛原:「! それもそうだな」
私は改めてリサにメールを送った。
すると、リサから返信が来た。
リサは今日が自分の誕生日だったことに驚きつつも、掃除当番が終わったらすぐ帰ると返して来た。
欲しい物はゲームではなく、新しいPCが欲しいということだった。
確かに家には、私が個人的に使用しているノートPCしか無い。
高橋は事務所で自分の机のPCを使っているからいいが、リサには私用で使えるものがない。
あまり高スペックのものは高額なので無理だが、そうでないものについてなら買えるだろう。
といっても、それだとすぐには購入できないがな。
オンライン授業はタブレットを使っているが、それは高橋のお下がりだ。
プレゼントは後日ってことなるかな。