報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「JR総武快速線」

2020-10-29 19:55:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日11:30.天候:晴 東京都墨田区江東橋 都立墨東病院]

 愛原:「……ええ、そうです。……はい。ありがとうございます。突然のことで申し訳ありませんが、よろしくお願い致します」

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は栗原蓮華さんの見舞いに行っていたのだが、そこで彼女から驚くべきことを聞いた。
 何でも彼女は退院後、リサに決闘を申し込むという。
 これは善場主任の再三の警告、説得に従わない彼女に対し、主任が折れた形となったわけだ。
 当然リサにもその話が来るだろうが、まずは善場主任に詳しい話を聞きたいと、NPO法人デイライトに電話した。
 すると善場主任は在席していて、私と面会してくれるという。
 早速今日の午後に向かうと伝えて、私は電話を切った。

 高橋:「先生、お帰りなさい」
 愛原:「待たせたな」

 病院の駐車場には高橋が車で待っていた。
 リアシートにはリサが座っている。
 私は助手席に乗った。

 高橋:「事務所に戻りますか?」
 愛原:「いや、これからちょっと行きたい所がある。錦糸町駅まで行ってくれ」
 高橋:「車で行きますよ?」
 愛原:「新橋のど真ん中じゃ、車を止める所も無いだろう?」

 コインパーキングくらいはあるだろうが、都合良く空いているとは限らないし、駐車料金も高い。

 高橋:「ということは、善場の姉ちゃんの所ですか?」
 愛原:「ああ。ちょっと直接確認したいことがある。リサに関することだから、リサも連れて行くよ」
 高橋:「分かりました。じゃあ、この車は……」
 愛原:「事務所に置いて、お前は事務所で待っててくれ」
 高橋:「ええっ!?」
 愛原:「この中で唯一私服のオマエが行くわけにはいかないからな」

 リサが学校の制服を着ているのは、学校に行った帰りだからである。
 謹慎中ではあるが、レポートの提出を毎日義務付けられているので、その帰りだからだ。

 高橋:「急いでスーツに着替えますよ!?」
 愛原:「いいから。高野君1人だけ留守番じゃ、寂しがるだろう?」
 高橋:「何スか、それ……」
 愛原:「その代わり昼飯奢るから。この前連れて行ってくれたラーメン屋。あれ、美味かった。是非もう一度食べてみたいところだ。あそこに連れて行ってくれ」
 リサ:「! 私も行くー!」
 愛原:「よし、決まりだな」
 高橋:「まあ、そういうことでしたら……」

 高橋は車を出して、錦糸町駅近くのラーメン屋に向かった。

[同日12:58.天候:晴 JR錦糸町駅→総武快速線1272F電車1号車内]

〔まもなく3番線に、横須賀線直通、久里浜行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。この電車は、11両です。グリーン車は、4号車と5号車です。……〕

 昼食の後で駅に行く。
 この電車なら横須賀線に直通するので、新橋まで一本で行ける。

 リサ:「お兄ちゃん、残念がってたね」
 愛原:「表向きはNPO法人だが、国家機関の隠れ蓑だからな。ぞろぞろ行ってもアレだ」

 善場主任の方から呼ばれたとか、予め前日までにアポを取っていればいいのだろうが、当日急な話だからね。
 そこはさすがに遠慮するさ。
 尚、錦糸町駅にはまだホームドアが付いていない。

〔きんしちょう~、錦糸町~。ご乗車、ありがとうございます。次は、馬喰町に止まります〕

 E217系という電車がやってくると、ここで多くの乗客が乗り降りする。
 秋葉原、新宿方面に行く中央緩行線との乗り換え駅でもあり、地下鉄半蔵門線との乗り換え駅でもあるからだ。
 電車に乗り込むと、私達は反対側のドアの前に立った。
 ホームから発車メロディ(曲名:Water Crown)が聞こえてくる。

〔3番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 2点チャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
 このタイプのドアチャイムを最初に採用した世代の電車でもある(他に京浜東北線などに投入された209系がいる)。
 電車が走り出す。
 今は高架区間だが、ここから先は一気に下降して地下トンネルに入る。
 まるで地下鉄のような区間になる為、総武快速線を走る電車は地下鉄としても通用する規格の物を採用している。

〔この電車は総武快速線、横須賀線直通、久里浜行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、馬喰町(ばくろちょう)です〕
〔This is the Sobu line rapid service train for Kurihama.The next station is Bakurocho.JO21.〕

 リサ:「せっかく地上にいるのに、また地下に潜るのか……うっ!」

 リサにまたフラッシュバックが起きたようだ。
 頭を抱えてフラつく。
 幸い左手でドア横の手すりを掴み、転倒は免れた。

 リサ:「檻付きの電車に乗せられて、地下のトンネルまで行って、それから……あれは……『1番』……」

 私はリサにはそういうフラッシュバックを見たら、その内容が何かを話すように言ってある。
 私はすぐに手帳にリサの言葉を書き記した。

 リサ:「私だけ降ろされて……『1番』は……また発車した電車に乗ったまま……」

 もしかして霧生電鉄のことを言っているのだろうか。
 他に南北線があったようだが、私達が世話になったのは霞台団地駅から東の終点駅である大山寺駅までだ。
 それは東西線と呼ばれる路線らしい。
 東西南北に2本の鉄道路線がある所は仙台市と似ているが、仙台市は4両固定編成の市営地下鉄なのに対し、霧生電鉄は2~4両編成の中小私鉄である。
 その東西線の霞台団地駅から大山寺駅までの間には山岳トンネルがあって、大山寺駅はその山岳トンネルの中にある。
 駅名となった新日蓮宗大本山・大山寺は山寺だからだ。
 そのトンネルの中には秘密の引き込み線があって、その奥には日本アンブレラの秘密研究所の搬入口に通じているのである。
 私達は大山寺からそのトンネルと引き込み線を通って、秘密研究所に侵入したのである。
 研究所そのものは秘密裏にはされておらず、表向きには新薬開発のセンターとして存在だけは公表されていたようだ。

 愛原:「檻付きの電車か……」

 私はかつて旧国鉄に存在した貨車、家畜車を想像した。
 大昔、貨物列車は家畜も運搬しており、それに特化した家畜車も存在した。
 荷物電車が存在していたのだから、霧生電鉄も、もしかしたら日本アンブレラの特注で家畜電車を保有していたのかもしれない。
 何しろこの鉄道会社、株式の50%以上を日本アンブレラが持っていたというのだから可能である。

 愛原:「大丈夫だよ、リサ」

 私はそっとリサの肩に手を置いた。

 愛原:「お前がお前のままでいる間は、もう2度とそんな実験動物扱いの車両に乗せられることはないさ。現に、今お前は人間扱いされてるから、人間専用の電車に乗れるのだよ」
 リサ:「ほんと?」
 猫:「ニャー」(←網棚の上のキャリーから愛原の言葉を否定する三毛猫)
 愛原:「コホン」
 リサ:「私も首輪着けるから、先生と一緒に乗りたい」
 愛原:「いや、いいんだよ。人間の姿でいるうちは、ハハハハ……」

 因みにペットと電車に乗る時、犬は飼い主さんの足元または膝の上、猫は網棚の上がいいらしい(猫は高い所にいる方が落ち着くため)。
 もちろん、手荷物料金が掛かるので念の為(自動券売機ではその切符を売っていないので、有人駅では有人改札で、無人駅では車掌または運転士に別料金を払うことになる。尚、定額であり、距離は関係無い)。

  
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“私立探偵 愛原学” 「決闘申し込み」

2020-10-29 15:26:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月16日10:00.天候:晴 東京都墨田区江東橋 都立墨東病院]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は墨田区の中でも大きな病院にやってきた。
 もちろん用件は、リサ・トレヴァーを始めとするBOWを憎む栗原蓮華さんの見舞いだ。

 愛原:「こんにちは。具合どうですか?」

 私は彼女の病室に向かった。
 本来はコロナ禍で面会は一切謝絶なのだが、特別な例外と認められる場合に限り、1日1人だけ面会を許されることがある。
 本来私はその特例には当たらないのだが、善場主任が国家権力を用いてその扱いにしてくれている。
 如何にリサ・トレヴァーを国家レベルで欲しがっているのかが分かる。
 日本は非核三原則のせいで核兵器を保有できないし、生物兵器もまた非人道的であるという理由から世界各国で禁忌の対象となっている。
 それで目を付けたのが、日本アンブレラが開発した日本版リサ・トレヴァーなのだろう。
 もちろんBOWのままでは使えないので(使ってもいいのだが、それだと国際的な非難の的になる)、人外的な力を残したまま人間に戻すという計画が進行中とのこと(人間の姿であれば、まだ誤魔化せるから)。
 栗原蓮華さんはそれを一個人レベルで妨害する、国家反逆者なのだ。
 まあ、リサの同族に兄弟を殺され、自分も左足を食い千切られたという恨みは分かるのだが。

 栗原:「また来たんですか。何度来ても同じですよ」
 愛原:「すいませんね。でも、お見舞いの品、持って来ましたから」
 栗原:「それはありがとございます。まあ、どうぞ」
 愛原:「どうも。失礼」

 栗原さんは個室に入っている。
 別にそこまで重いケガというわけでもないのだが、東京中央学園に通う生徒は往々にして家が裕福であることが多く、栗原家もそういうことだろう。
 何でも、今は父方の祖父母の家で世話になっているらしいが、そこは特殊な剣術流派の家元というか、宗家というか、そういう所らしい。
 そこで彼女は霧生市の剣道大会で優勝し、県大会でも上位に食い込んでいる。
 それほどの腕前だ。

 愛原:「昨日、NPO法人デイライトの善場優菜主任が来られたと思いますが?」
 栗原:「ああ、来ましたよ。『あなたのリサ』を狙うのは止めろと言われました。従わないなら、私を日本刀を持ち歩いて、中学校でそれを勝手に振るった罪として刑事告訴するそうです」
 愛原:「あの人は本気ですよ。NPO法人デイライトは、とある日本政府機関の出先機関で、あの人も国家公務員ですから」
 栗原:「私はあの化け物を根絶やしにできればいいんです。それが兄弟達への、引いては(母方の)お祖父ちゃん、お祖母ちゃんへの追善供養になると思うので」
 愛原:「その気持ちは立派だけど、政府をナメちゃいけない。日本政府はまだまだ他国から見れば弱腰外交だが、国内に関しては欧米以上に弾圧する時はする。キミが行動に移す前に、善場さん達の組織は警察を使ってキミをさっさと拘束するだろう」
 栗原:「そんなことが……」
 愛原:「あるんだよ。今はナリを潜めたように見えるが、それが目立つ奴らが少なくなっただけで、未だにそれは行われている」

 有名なのが、オウム真理教信者に対する『転び公妨』だったな。
 オウム関係者を何としてもしょっ引く為に、わざと公務執行妨害を起こさせ、別件逮捕に持って行く捜査方法だ。
 作者の警備会社に天下って来た元警察官がそう言っていたのだから間違いない。
 その方法を暴露し、自身もそれでオウム関係者を現行犯逮捕したそうだ(幹部信者ではないようだ)。

 特に宗教関係者で創価学会警察と対立している宗派の方は御用心、御用心。

 愛原:「だから、オススメはしないな。恐らくキミは逮捕されても、すぐに釈放はされるだろう。だけど日本刀は没収、逮捕歴が付いたことでキミも学校は退学だ。もちろん、逮捕前後のキミの態度では拘束時間は長くなり、キミの家も家宅捜索を受けることになるだろう」
 栗原:「……どうして化け物を倒すだけで、そんなことに?」
 愛原:「善場さんは何か言っていたかい?」
 栗原:「『大人の事情』だの、あとは色々難しい法律の話とかされて、よく分からなかったです」
 愛原:「ああ」

 国家公務員たる善場さんらしい。

 愛原:「それで、一切もうリサには近づくなということだね?」
 栗原:「私がどうしても納得できないと言ったら、溜め息を吐いてこれを渡して来ました」

 恐らく栗原さんが裁判に訴えたところで、負けるのは必至だ。
 もし勝てるのなら、とっくにNHKはワンセグやカーナビから受信料を取ることはできなくなっているはずだ(蛇足だが、タクシーや観光バス向けの業務用カーナビならテレビは無いので、それなら受信料を取られることはない)。

 愛原:「見せてもらえますか?」

 私は栗原さんから茶封筒を受け取った。
 中に入っていたのは、1枚の書類。

 愛原:「これは……!」

 これは、どうやら善場主任が栗原さんを納得させる為の最終手段らしい。
 国家権力で無理やり押さえ付ける方法以外のものだ。
 見ると、どうやらそれはリサとの決闘申込書のようなものだ。

 愛原:「リサとの決闘を認める書類のようですね」
 栗原:「色々と条件は厳しいですが、もしも勝ったら私は『あなたのリサ』を殺してもいいそうなので、これを受けるつもりです」

 栗原さん側の条件は『真剣禁止(竹刀または木刀とする)』くらいだ。
 リサ側の条件は、『第1形態での戦闘』『殺しダメ、絶対』ということが分かった。
 少し意外だ。
 栗原さんが真剣が使えないというのは、不利だと思う。
 にも関わらず、リサは人間形態の第0形態ではなく、鬼姿の第1形態で戦えというのは……。
 もちろん、殺しは厳禁とのことだが。
 一体、善場主任は何を考えている?

 愛原:「それで、キミはこの条件を飲む?」
 栗原:「ええ。私の流派なら、木刀でも斬ることができますので」
 愛原:「何だって!?」

 私は改めて決闘書を見た。
 リサが栗原さんを殺すことは厳禁であると明文化されているものの、その逆は明文化されていない。

 愛原:「じゃあ、日本刀なんか持ち出さなくても良かったんじゃないか?」
 栗原:「でも攻撃力が落ちるのは確かです。愛原先生がもし化け物と戦う場合、ナイフとピストル、どちらを使いますか?」
 愛原:「そりゃ、ピストルだが……」
 栗原:「そういうことですよ。もし私の家が剣道ではなく、射撃だったら銃を使っていました。で、拳銃と散弾銃、どちらを使いますか?」
 愛原:「まあ、ショットガン……散弾銃だな」
 栗原:「そういうことですよ。私も使うものは、なるべく強い物の方がいいですから」

 後で善場主任に詳しい話を聞いてみることにしよう。
 
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