[6月14日20時00分 天候:曇 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]
北与野駅の改札口の外に出ると、確かに鍵式のコインロッカーがそこにあった。
愛原「あった!コインロッカー!」
埼京線の中でも小さい駅のコインロッカーだから、あまり利用者はいないようだ。
使用中のロッカーは少なく、これまたどのロッカーなのかがすぐに分かった。
愛原「2日分延滞か。危ねぇ、危ねぇ。危うく、明日には回収されるところだった」
私は100円玉を投入して、ようやく鍵を開けることができた。
中にあったのは……。
愛原「また鍵かぁ!?」
入っていたのは、また鍵であった。
だが、よく見ると、鍵以外にもメモ用紙のような物が入っている。
しかも鍵をよく見ると、今度はコインロッカーの鍵ではなかった。
ちゃんとしたドアの鍵。
パール「この鍵は……!」
どうやらパールには、この鍵に見覚えがあるようだった。
愛原「何だこの鍵は?」
パール「私の前の職場の鍵です。そこの玄関の……鍵」
愛原「何いっ!?すると斉藤家か!?」
パール「はい……」
リサ「メモ用紙、『#3110』ってあるよ?どこかの電話番号かな?」
愛原「かもしれんな……」
私はスマホを取り出した。
しかし、全く繋がらなかった。
愛原「電話番号じゃないみたいだぞ」
パール「もしかすると、テンキーの番号かもしれません」
愛原「そうなのか!?」
パール「斉藤家には、テンキー式の鍵が付いている部屋がありまして、もしかしたらそれは、御主人様の部屋かもしれません」
愛原「つまり、斉藤元社長のか」
パール「はい」
愛原「よし、行ってみよう」
その前に私は、善場係長に電話を掛けることにした。
善場「もしもし、善場です」
愛原「善場係長、お疲れ様です」
私は北与野駅での発見を報告した。
さすがに、鬼の男の話はしなかったが。
今回の業務には関係無いと判断したからである。
善場「かしこまりました。引き続き、調査をお願いします。それと……夜遅くなるようでしたら、無理をしないで、翌日に調査を回して頂いて構いません。埼玉県内でしたら、そのまま近隣のホテルに宿泊して頂いて構いませんので」
愛原「ありがとうございます」
話を聞いていると、善場係長も静岡県内に一泊するとのこと。
向こうの方が事態が深刻だからだろう。
係長との電話が終わると、すぐに私達は斉藤家に向かった。
[同日20時30分 天候:曇 さいたま市中央区上落合地区 斉藤家]
斉藤家は昔と変わらぬ佇まいであった。
所有者が放棄したわけではないので、ある程度の管理は行き届いているのだろうか。
門扉には鍵が掛かっていたが、コインロッカーの中に入っていた鍵のうち、小さな鍵で開いた。
そして、玄関の鍵。
玄関にも鍵は掛かっているが、これも例の鍵の大きな方で開いた。
愛原「電気は点くのか?」
私は玄関のスイッチを押したが、うんともすんとも言わない。
さすがに電気は止められているようだ。
しょうがないので、持って来た懐中電灯を照らして進む。
愛原「斉藤元社長の部屋って、どこだ?」
パール「3階です」
リサ「エレンの部屋は4階だった……」
階段を上がろうとしたが、奥にあるエレベーターの電源が勝手に入った。
デジタル表示のインジゲーターが点灯し、籠内の照明が点灯する。
愛原「うっ……!」
リサ「誰か……いるの?」
パール「とても、人の気配などしているようには……」
愛原「とにかく、あのエレベーターに乗れってことだな。油断するなよ」
パール「はい!」
私はエレベーターのボタンを押した。
〔上に参ります〕
エレベーターのドアは、普通に開いた。
斉藤家は金持ちの家の割には、土地の面積はそんなに広くなく、その代わりに地下1階、地上4階・屋上付きという構造になっている。
その為、ホームエレベーターが備え付けられていた。
それに乗って3階へ向かう。
3階に着いても廊下は真っ暗のままだったが、人の気配は無かった。
パール「ここが御主人様の部屋です。……部屋というか、書斎ですね」
愛原「なるほど」
ドアの鍵は電子キーになっていた。
それにしても、さっきのエレベーターといい、この電子キーだって電気が必要だろうに、それが使えるということは、厳密には停電していないのだろうか?
さっき、スイッチを入れても点灯しなかったのは、停電ではなく、断線なのであろうか。
メモに書いてある通りの番号を打ち込むと、『OK』の表示と共に、鍵が開いた。
早速中に入る。
窓にはカーテンが閉められており、外からの明かりは入って来ない。
大きな机の上には、何故か金庫が置かれていた。
本来なら床置きタイプの金庫だ。
それが何故か机の上に置かれ、しかも金庫の後ろからは電源コードが伸びている。
この金庫もまた、電子ロックらしい。
愛原「これは……!」
どうやらこの金庫は、カードキーを差し込んで開けるタイプのようだ。
差込口には、赤いアンブレラのロゴマークが描かれている。
つまり、ここにリサのゴールドカードを入れろということなのだ。
愛原「リサ、ゴールドカードを!」
リサ「はい」
リサがコールドカードを挿入すると、金庫はそれをそのまま吞み込んでしまう。
リサ「ちょ、ちょっと!返してよ!」
だが、金庫の鍵はちゃんと開いた。
開けると中にあったのは、1台のカメラ付きモニターと1枚のカード。
それは先ほどのゴールドカードと違い、白金であった。
つまり、プラチナカードだ。
カードの装飾は、ゴールドカードと変わらない。
要はゴールドカードを吞み込まれた代わりに、プラチナカードを手に入れたというわけだ。
クレジットカードなら、ゴールドカードよりもプラチナカードの方が格上ではあるが……。
愛原「アップグレードされたってことじゃないか?代わりにこれを持っとけよ」
リサ「むー……」
リサは渋々プラチナカードを受け取った。
リサ「プラチナカードがあるってことは、ブラックカードもあるのかな?」
愛原「アメリカンエクスプレスじゃあるまいし……」
私は苦笑した。
リサ「研究員、普通のカードキーは緑色をしてたよ?」
愛原「マジか。それはアメリカンエクスプレスの一般カードだな……」
斉藤秀樹「ここにあるよ。まあ、まだ渡す気は無いがね」
愛原「わあっ!?」
突然モニターの電源が入り、そこに映し出されたのは……。
愛原「斉藤社長!?」
パール「御主人様!?」
リサ「エレンのお父さん!?」
斉藤「久しぶりですね、愛原さん?」
愛原「は、はあ……」
斉藤「……オマエも、随分と丸くなったようだな、パール?」
パール「お、おかげさまで……」
斉藤「絵恋の事は残念だった。最後まで一緒に遊んでくれて、ありがとう」
リサ「エレンを殺したのは……わたし……」
斉藤「気に病むことはない。あの場合は仕方なかった。キミは、よくやってくれたと思うよ」
愛原「斉藤……元社長。随分と直近の状況に詳しいようですね?」
斉藤「色々と情報が入るものでね」
モニタの画質はあまり良くなかったが、こうやって会話できるということは、録画ではないということだ。
どこかの外国にいるのだろう。
今、日本は夜なのに、斉藤元社長がいる部屋には窓があるのだが、その窓からは日光が差し込んでいるからだ。
斉藤「そのカードは、リサ君がさっきまで持っていたゴールドカードよりも、更に上位のカードだ。これから、ゴールドカードでは開けられない施設を探索することになるだろう。その時、そのカードを使いなさい」
愛原「斉藤さんは今、どこにいるんですか!?」
斉藤「具体的な場所は言えないが、近日中に日本に戻るつもりだよ」
愛原「日本に戻ってきたら逮捕されると思いますが?」
斉藤「心配御無用。今後の身の振り方は考えている」
愛原「プラチナカードでないと開けられない施設とは、どこですか?」
斉藤「その情報は、近日中に愛原さんの所に入って来るでしょう。それでは、今度は日本でお会いましょう」
ブツッと画面が消えた。
パール「……先生?」
愛原「取りあえず……善場係長に報告だ」
私は自分のスマホを取り出した。
北与野駅の改札口の外に出ると、確かに鍵式のコインロッカーがそこにあった。
愛原「あった!コインロッカー!」
埼京線の中でも小さい駅のコインロッカーだから、あまり利用者はいないようだ。
使用中のロッカーは少なく、これまたどのロッカーなのかがすぐに分かった。
愛原「2日分延滞か。危ねぇ、危ねぇ。危うく、明日には回収されるところだった」
私は100円玉を投入して、ようやく鍵を開けることができた。
中にあったのは……。
愛原「また鍵かぁ!?」
入っていたのは、また鍵であった。
だが、よく見ると、鍵以外にもメモ用紙のような物が入っている。
しかも鍵をよく見ると、今度はコインロッカーの鍵ではなかった。
ちゃんとしたドアの鍵。
パール「この鍵は……!」
どうやらパールには、この鍵に見覚えがあるようだった。
愛原「何だこの鍵は?」
パール「私の前の職場の鍵です。そこの玄関の……鍵」
愛原「何いっ!?すると斉藤家か!?」
パール「はい……」
リサ「メモ用紙、『#3110』ってあるよ?どこかの電話番号かな?」
愛原「かもしれんな……」
私はスマホを取り出した。
しかし、全く繋がらなかった。
愛原「電話番号じゃないみたいだぞ」
パール「もしかすると、テンキーの番号かもしれません」
愛原「そうなのか!?」
パール「斉藤家には、テンキー式の鍵が付いている部屋がありまして、もしかしたらそれは、御主人様の部屋かもしれません」
愛原「つまり、斉藤元社長のか」
パール「はい」
愛原「よし、行ってみよう」
その前に私は、善場係長に電話を掛けることにした。
善場「もしもし、善場です」
愛原「善場係長、お疲れ様です」
私は北与野駅での発見を報告した。
さすがに、鬼の男の話はしなかったが。
今回の業務には関係無いと判断したからである。
善場「かしこまりました。引き続き、調査をお願いします。それと……夜遅くなるようでしたら、無理をしないで、翌日に調査を回して頂いて構いません。埼玉県内でしたら、そのまま近隣のホテルに宿泊して頂いて構いませんので」
愛原「ありがとうございます」
話を聞いていると、善場係長も静岡県内に一泊するとのこと。
向こうの方が事態が深刻だからだろう。
係長との電話が終わると、すぐに私達は斉藤家に向かった。
[同日20時30分 天候:曇 さいたま市中央区上落合地区 斉藤家]
斉藤家は昔と変わらぬ佇まいであった。
所有者が放棄したわけではないので、ある程度の管理は行き届いているのだろうか。
門扉には鍵が掛かっていたが、コインロッカーの中に入っていた鍵のうち、小さな鍵で開いた。
そして、玄関の鍵。
玄関にも鍵は掛かっているが、これも例の鍵の大きな方で開いた。
愛原「電気は点くのか?」
私は玄関のスイッチを押したが、うんともすんとも言わない。
さすがに電気は止められているようだ。
しょうがないので、持って来た懐中電灯を照らして進む。
愛原「斉藤元社長の部屋って、どこだ?」
パール「3階です」
リサ「エレンの部屋は4階だった……」
階段を上がろうとしたが、奥にあるエレベーターの電源が勝手に入った。
デジタル表示のインジゲーターが点灯し、籠内の照明が点灯する。
愛原「うっ……!」
リサ「誰か……いるの?」
パール「とても、人の気配などしているようには……」
愛原「とにかく、あのエレベーターに乗れってことだな。油断するなよ」
パール「はい!」
私はエレベーターのボタンを押した。
〔上に参ります〕
エレベーターのドアは、普通に開いた。
斉藤家は金持ちの家の割には、土地の面積はそんなに広くなく、その代わりに地下1階、地上4階・屋上付きという構造になっている。
その為、ホームエレベーターが備え付けられていた。
それに乗って3階へ向かう。
3階に着いても廊下は真っ暗のままだったが、人の気配は無かった。
パール「ここが御主人様の部屋です。……部屋というか、書斎ですね」
愛原「なるほど」
ドアの鍵は電子キーになっていた。
それにしても、さっきのエレベーターといい、この電子キーだって電気が必要だろうに、それが使えるということは、厳密には停電していないのだろうか?
さっき、スイッチを入れても点灯しなかったのは、停電ではなく、断線なのであろうか。
メモに書いてある通りの番号を打ち込むと、『OK』の表示と共に、鍵が開いた。
早速中に入る。
窓にはカーテンが閉められており、外からの明かりは入って来ない。
大きな机の上には、何故か金庫が置かれていた。
本来なら床置きタイプの金庫だ。
それが何故か机の上に置かれ、しかも金庫の後ろからは電源コードが伸びている。
この金庫もまた、電子ロックらしい。
愛原「これは……!」
どうやらこの金庫は、カードキーを差し込んで開けるタイプのようだ。
差込口には、赤いアンブレラのロゴマークが描かれている。
つまり、ここにリサのゴールドカードを入れろということなのだ。
愛原「リサ、ゴールドカードを!」
リサ「はい」
リサがコールドカードを挿入すると、金庫はそれをそのまま吞み込んでしまう。
リサ「ちょ、ちょっと!返してよ!」
だが、金庫の鍵はちゃんと開いた。
開けると中にあったのは、1台のカメラ付きモニターと1枚のカード。
それは先ほどのゴールドカードと違い、白金であった。
つまり、プラチナカードだ。
カードの装飾は、ゴールドカードと変わらない。
要はゴールドカードを吞み込まれた代わりに、プラチナカードを手に入れたというわけだ。
クレジットカードなら、ゴールドカードよりもプラチナカードの方が格上ではあるが……。
愛原「アップグレードされたってことじゃないか?代わりにこれを持っとけよ」
リサ「むー……」
リサは渋々プラチナカードを受け取った。
リサ「プラチナカードがあるってことは、ブラックカードもあるのかな?」
愛原「アメリカンエクスプレスじゃあるまいし……」
私は苦笑した。
リサ「研究員、普通のカードキーは緑色をしてたよ?」
愛原「マジか。それはアメリカンエクスプレスの一般カードだな……」
斉藤秀樹「ここにあるよ。まあ、まだ渡す気は無いがね」
愛原「わあっ!?」
突然モニターの電源が入り、そこに映し出されたのは……。
愛原「斉藤社長!?」
パール「御主人様!?」
リサ「エレンのお父さん!?」
斉藤「久しぶりですね、愛原さん?」
愛原「は、はあ……」
斉藤「……オマエも、随分と丸くなったようだな、パール?」
パール「お、おかげさまで……」
斉藤「絵恋の事は残念だった。最後まで一緒に遊んでくれて、ありがとう」
リサ「エレンを殺したのは……わたし……」
斉藤「気に病むことはない。あの場合は仕方なかった。キミは、よくやってくれたと思うよ」
愛原「斉藤……元社長。随分と直近の状況に詳しいようですね?」
斉藤「色々と情報が入るものでね」
モニタの画質はあまり良くなかったが、こうやって会話できるということは、録画ではないということだ。
どこかの外国にいるのだろう。
今、日本は夜なのに、斉藤元社長がいる部屋には窓があるのだが、その窓からは日光が差し込んでいるからだ。
斉藤「そのカードは、リサ君がさっきまで持っていたゴールドカードよりも、更に上位のカードだ。これから、ゴールドカードでは開けられない施設を探索することになるだろう。その時、そのカードを使いなさい」
愛原「斉藤さんは今、どこにいるんですか!?」
斉藤「具体的な場所は言えないが、近日中に日本に戻るつもりだよ」
愛原「日本に戻ってきたら逮捕されると思いますが?」
斉藤「心配御無用。今後の身の振り方は考えている」
愛原「プラチナカードでないと開けられない施設とは、どこですか?」
斉藤「その情報は、近日中に愛原さんの所に入って来るでしょう。それでは、今度は日本でお会いましょう」
ブツッと画面が消えた。
パール「……先生?」
愛原「取りあえず……善場係長に報告だ」
私は自分のスマホを取り出した。
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