報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「愛原公一との再会」

2021-01-21 21:39:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日16:10.天候:曇 宮城県遠田郡美里町 JR小牛田駅]

〔まもなく終点、小牛田、小牛田。お出口は、右側です。東北本線、石越、一ノ関方面、“奥の細道湯けむりライン”陸羽東線と石巻線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから、私の親戚の伯父と会う予定である。
 車で駅まで迎えに来てくれているらしいが、一体何の車で来てくれているのだろうか。
 それはとても気になった。
 降りる準備をしていると電車がポイントを渡り、上り本線に入った。
 どうやら、再び仙台方面へ折り返すらしい。
 電車が上り本線の3番線に到着すると、ドアが自動で開いた。
 いつもなら半自動ドア扱いで、乗客がドアボタンを押して開閉操作をするのだが、新型コロナウィルス対策で換気の為、全自動ドア扱いにしているという。
 寒冷地の東北で、暖房の熱をわざわざ逃がしてしまうのは残念な気がするが、この御時世仕方が無いのか。
 雪は思ったほど多くは無かったが、それでも仙台市内よりは積もっていた。
 今日は風が弱いからいいが、風の強い日は地吹雪やホワイトアウトに注意しなければならない。
 あまりにもホワイトアウトが過ぎると、新幹線ですら運休してしまうのである。

 愛原公一:「よお!明けまして、おめでとう」

 改札口を出て西口に向かうと、そこで私の父親の兄である、愛原公一が手を振っていた。

 愛原学:「ああ、明けましておめでとうございます」
 高橋:「明けまして、おめでとうございます!」
 リサ:「明けまして、おめでとうございます」
 公一:「早速、元気なコ達の姿を新年早々見られて眼福だ。さて、外は寒いし、早いとこ家に向かおう。今夜は御馳走を用意しておるでな、ワシの歓迎をしかと受け止めよ」
 学:「それはありがたいけど、伯父さん……」
 リサ:「御馳走!?なになに!?」
 公一:「はっはっは!着いてからのお楽しみぢゃ。車で来ておるので、着いてこい」

 駅前ロータリーに路駐されている車を見ると、それは……。

 愛原:「プリウスだ!」

 シルバーのプリウスであった。
 ちゃんとリアには高齢者マークが貼られている。
 しかし、『6番』を倒した際のプリウスは前の年式の物だった。
 倒した際に全損して廃車になったと聞いたが、いま目の前にあるのは現行式のタイプである。

 高橋:「え……新車っスよね、これ?」
 学:「また買ったの!」
 公一:「違う違う。これは貰い物じゃ」
 学:「貰い物!?」
 高橋:「クイズ番組にでも出て優勝したんスか!?」
 公一:「違う違う。正に前の車が全損した後、色々な公的機関がやってきたじゃろう?」
 学:「まあね。BSAAとか、デイライトとか……」
 公一:「BOWを倒した褒美ということで、新しい車を買ってくれたのじゃ。しかも新車で」
 学:「報奨金代わりか。しかし、だからといって、またプリウスなんて……」
 公一:「心配いらん。これで残りの『1番』とかいうヤツも倒してみせるわい」
 学:「取りあえず、それまでブレーキとアクセルは踏み間違えないようにね」

 『6番』を倒したのだって、伯父さんがブレーキとアクセルを踏み間違えて『6番』の家に突っ込み、壁を壊したことで夕日が差し込み、太陽の光に弱かった『6番』はその直射を浴びて焼失したのだった。

 リサ:(このお爺さんなら、本当に『1番』をしれっと倒しそう……)

 リサは何だか他人事ではないような気がして、伯父さんの言う事は聞くように決めたという。

 公一:「では、乗り込んだら早速我が家に出発ぢゃ」

 しかし車がバックを始めた。
 別にそんなことする必要は無い。

 学:「伯父さん!車がバックしてるよ!?」
 公一:「スマンスマン」

 後ろに止まっていた別の車がびっくりして、クラクションを鳴らして来たほどだ。

 公一:「何しろ前の車と勝手が違うでな」
 高橋:「いや、ギアの形は前のと大して変わっていないはずっスけど?」

 車に詳しい高橋がすかさずツッコミを入れた。

 公一:「気を取り直して出発ぢゃ」

 車は今度こそ前に走り出し、小牛田駅西口のロータリーを出た。

[同日16:40.天候:曇 同町内某所 愛原公一の家]

 伯父さんの家に着く頃には、だいぶ外は暗くなっていた。
 家は平屋建てが二棟あり、1つは母屋だが、もう1つは車庫兼農機具置き場となっている。
 玄関の横には犬小屋があり……。

 ジョン:「ワンッ!ワンワンワン!ワンッ!」

 伯父さんが飼っている柴犬のジョンが、はしゃいで出迎えるのだった。

 学:「こんな寒いのに外に繋いでるの?」
 公一:「留守番の時だけじゃよ。外で番犬してもらった方が用心じゃ」
 学:「ジョンはただのペットじゃないんだな……」
 公一:「農作業に連れて行くこともあるよ。この前なんか、熊を追い払ってくれた」
 学:「いくら美里町が田舎だからって、熊が出るような山なんてあったかい?」
 高橋:「熊除けなら、ここに1人いますぜ?」
 リサ:「熊の1匹や2匹、逆に食い殺すよ?」
 公一:「そうかね?それじゃ、冬眠できなかった個体が来たら、活躍してもらおうかの」

 伯父さんが車を家に止める。
 ここまで特に危ないと思うような運転は無かった。
 こういうのが却って危険だ。
 いきなり暴走してコンビニに突っ込むタイプだな。
 逆に予兆があると、高速逆走爺と化す。

 学:「コイツは本当にやりますよ」
 公一:「それより、車をしまってくるから、先に家の中に入っててくれ。これが鍵な」
 学:「へいへい」

 私は伯父さんから鍵を受け取ると、車から降りた。
 ジョンが吠えながら、しかし尻尾を大きく振りながらはしゃいでいる。

 リサ:「ジョン、おすわり!」
 ジョン:「ワン!」

 リサの一声で、ジョンがおすわりした。

 学:「伯父さんも帰ってきたし、ジョンを家の中に入れてあげよう」

 私は鍵を開けて、玄関の引き戸を開けた。
 平屋の大きくない家だが、1人で住むには広いだろう。
 田舎の家なので、平屋建てでも十分延べ床面積が広いのである。

 リサ:「ジョン、こっちだよ」

 リサがジョンの首輪から鎖を外すと、ヒョイと抱き抱え上げた。

 リサ:「犬は私のウィルスに感染すると、どうなる?」
 高橋:「ゾンビ犬になるに決まってんだろ。余計なことするなよ?」
 リサ:「三つ首ワンコにならない?」
 学:「ならないならない」

 リサのヤツ、ケルベロスでも造る気か。
 尚、90年代、アメリカのラクーン市郊外のアンブレラ研究施設で飼われていたゾンビ犬はケルベロスというらしい。

 高橋:「冬は石油ストーブとコタツっスか。いや、ガチの『田舎に泊まろう』っスね」
 愛原:「まあな」

 私達は勝手知ったる何とやらで家に上がると、居間にある石油ストーブを焚き、コタツの電源を入れた。
 尚この直後、別棟から大きな音がした。
 明らかにプリウスが車庫入れに失敗して壁にぶつかっているのに、伯父さんは、『屋根の雪下ろしをしただけじゃ』と言い張った。
 確かにまあ、ぶつかったショックで屋根の上の雪は大方落ちていたのだが。

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