報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「帰省の準備」 2

2021-12-18 15:15:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月5日12:00.天候:曇 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 買い物を終えて帰宅した魔道士2人。
 タクシーみたいな車から降りると、メイド人形のダニエラとナンシーが出迎えて来る。
 車のハッチを開けて、そこに積んだ買い込んだ物を降ろす。
 それから屋敷に入ると、エントランスにイリーナがいた。

 イリーナ:「おやおや。これまた随分と買い込んだねぇ……」
 マリア:「ぜ、全部必要なものです!この化粧水とかは私が使いますので!」
 イリーナ:「なるほど。それにしてもマリア、もっと高くて良い化粧水使っていいんだよ?」
 マリア:「いえ、大丈夫です」

 マリア、100円ショップで購入した化粧水を使っていた。

 マリア:「案外、高品質なので」
 イリーナ:「そうかい」
 勇太:「先生、電車のキップ、買ってきました。予定通りの“あずさ”です」
 イリーナ:「うん、分かったよ。そのチケットは、勇太君が預かってて」
 勇太:「分かりました」
 イリーナ:「それじゃ、ランチにしましょう」

 荷物は人形達に預け、3人の魔道士は大食堂に入った。

 イリーナ:「足湯は気持ち良かったかい?」
 マリア:「師匠!?」
 勇太:「あ……やっぱり御存知でしたか……」
 イリーナ:「ゴメンねぃ。たまたま水晶玉で見てたのよ」
 マリア:「師匠、あれは駅の施設なので、けして寄り道では……」
 イリーナ:「そお?なーんか調べてみると、駅の施設にしては、運営元が違うような気がするんだけどねぇ……」
 マリア:「ギクッ!」(;゚Д゚)
 イリーナ:「まあ、GPSから思いっ切り外れるわけじゃないし、私なら大目に見てあげるかな」
 マリア:ε-(´∀`*)ホッ
 イリーナ:「これがナスっちなら、『それでも話が違う!全員で腕立て!!』とかやりかねないけどねw」
 マリア:「うぅ……」
 イリーナ:「というわけで、私の罰は『食後にフィットネスルームにて、ランニングマシン500メートル走』にしましょう」
 マリア:「ええっ!?」
 勇太:(ただの食後の運動なのでは?)
 イリーナ:「勇太君には御褒美かもねw」
 勇太:「僕も付き合うんですよね。分かります」

[同日13:00.天候:曇 マリアの屋敷B1F フィットネスルーム]

 マリア:「別に競技に出るわけじゃないのに、こういうユニフォーム着るって……」

 https://www.pixiv.net/artworks/85515064
(陸上ユニを着るマリアのイメージ)

 勇太:「……ふつくしい……」
 マリア:「勇太、見とれてないで、オマエも走れ!」
 勇太:「はいはい」
 マリア:「ったく!勇太は普通のジャージで、何で私はこんな薄着なんだ!」
 勇太:「先生の御命令だから仕方が無いよ。ふふ……」
 マリア:「何で笑う!?」
 勇太:「じゃあ、僕が用意した体操着着る?」
 マリア:「……次に走るハメになったらそうする。まだ下がビキニタイプより、ショーパンタイプがいい」
 勇太:「よし!さっさと走って終わらせよう!」

 勇太が先にランニングマシーンで走ろうとした時だった。

 勇太:「ん!?」
 
 突然、ランニングマシーンに勾配が付けられた。
 その為、2人の魔道士は坂道を駆けるような感じになる。

 マリア:「師匠!これはどういうことですか!?」

 水晶玉にイリーナの姿が映し出される。

 イリーナ:「何言ってるの?ただ500メートル走って終わりなわけないでしょ?」
 マリア:「Huh!?」
 イリーナ:「海抜500メートル走よ?」
 マリア:「What?!」
 勇太:「ええーっ!?」

 とんでもない寄り道の罰ゲームだった。
 が……。

 マリア:「はぁ……はぁ……っ!」

 マリアは汗だくになりながらも、何とか海抜500メートルを走り切った。

 マリア:「もう……無理……」
 勇太:「マリア、大丈夫!?」

 先にゴールしていた勇太が、倒れたマリアを抱き起す。
 ムワッとした汗の匂いが勇太の鼻をついた。

 勇太:「……!」

 しかし、勇太にとってはいい匂いである。

 イリーナ:「フム……こんなものか。マリアは、もう少し体力を付けなさいね。こんなんだから、『魔道士は、ひ弱だ』って戦士などに見下されるんだから」
 マリア:「はい……」
 イリーナ:「それじゃ、水分補給したらシャワーで汗流してきて。で、着替えたら、おやつのじかーん!」
 勇太:「結局、午後から修行だったか……。ん?今日は日曜日だよね?」
 マリア:「『魔道士の世界に安息日は無ェ』とかエレーナは言ってたけど、結局は師匠の匙加減だったりする……」
 勇太:「な、なるほど」

[同日15:00.天候:曇 マリアの屋敷1F西側大食堂]

 イリーナ:「はい、お疲れさん」
 マリア:「明日、絶対筋肉痛になる……」
 イリーナ:「たまには運動もしないとダメよ?プールだって、温水で入れるようになってるんだから」
 マリア:「はあ……」
 勇太:「因みに先生、もしも筋肉痛になった場合、回復魔法は使っていいのでしょうか?」
 イリーナ:「構わないよ。どこで、どのタイミングで回復魔法を使うか。その判断力を付けるのも修行のうちだからね」
 勇太:「ですって。マリアさん」
 マリア:「体中痛くなって、使える余裕あるかなぁ……」
 勇太:「痛くなるのは足だけじゃない?」
 マリア:「うーん……」
 イリーナ:「その時はポーションを使ってもいいよ」
 マリア:「分かりました」
 イリーナ:「それで勇太君、何かさっき、御両親から連絡があったみたいだけど……」
 勇太:「ああ……。先生も上京されるということで、最初の夜はホテルに泊まろうということらしいです」
 イリーナ:「そうなの?」
 勇太:「はい」
 イリーナ:「何か、気を使われてるみたいだねぇ……」
 マリア:「実際そうなんでしょうね」
 勇太:「シティホテルを予約したいということですが……」
 イリーナ:「いやいや!ダンテ先生が来るわけじゃあるまいし!無駄なお金は使わないでって言ってくれる?」
 勇太:「わ、分かりました」
 イリーナ:「何なら、エレーナのホテルでもいいくらいよ」
 マリア:「あれはさすがに安っぽ過ぎます」
 勇太:(エレーナのホテルよりは高級感があって、しかしシティホテルよりはリーズナブルなホテルか……)

 勇太はそのことを両親に伝えようと思った。

 勇太:(ランク的にはビジホに入るけど、その中にでもプレミアム的な……)
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“大魔道師の弟子” 「帰省の準備」

2021-12-17 20:32:59 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月5日10:00.天候:曇 長野県北安曇郡白馬村 JR白馬駅]

 駅前ロータリーにトールワゴンタイプのタクシーが止まる。
 ……しかしそれはカムフラージュ。
 そのタクシーみたいな車には、屋根に行灯が載っているわけではなく、しかも種別表示器も無い。
 そして何より、車のナンバー。
 タクシーでは当たり前の緑ナンバーではなく、白ナンバーである。

 稲生勇太:「ありがとう。それじゃ、キップ買ってくるから待ってて」
 マリア:「私も行こう」

 リアシートから勇太とマリアが降りて来た。
 2人とも魔道士のローブを羽織っている。
 12月に入り、長野県北部でも雪が舞うようになった。
 魔道士のローブは夏は防暑着になり、冬は防寒着になるので便利である。

 勇太:「もうネットで予約してあるから、あとは窓口で発行してもらうだけだ」
 マリア:「なるほど」

 先月、両親達の送り迎えをした駅構内に入る。
 “みどりの窓口”の閉鎖の代わりに導入された最新の指定席券売機を使い、それで予約済みのキップを発券する。
 従来の指定席券売機と違うのは、希望すればオペレーターと連絡でき、そことやり取りしながらキップを発券してもらえるというものである。
 しかし、鉄ヲタの勇太にその機能は不要だった。
 尚、運賃・料金に関してはクレジットカードで既に決済している。
 勇太名義のカードであるが、あくまで立替で、後ほどイリーナから払ってもらえる。

 マリア:「やはり、師匠はビジネスクラスか」
 勇太:「そりゃそうだよ。偉い先生だもん」

 チケットを受け取り、それをローブのポケットにしまう勇太。

 マリア:「ビジネスクラスなんだな?」
 勇太:「ん?」
 マリア:「ファーストクラスじゃないな?」
 勇太:「違うよ。JRのグリーン車ってのは、セカンドクラス。つまり、ビジネスクラスだよ。『ロ』だからね」
 マリア:「Ro?」
 勇太:「JR在来線車両には、必ず形式番号とカタカナの記号が付いている。その記号には、その車両の等級を表す物も付与されているんだ。普通車、つまり3等車が『ハ』、グリーン車は『ロ』、そして一等車は『イ』なんだよ」
 マリア:「ふーん……。悪いね。ルーシーなら目を輝かせて、しっかり興味を持つんだろうけどね」
 勇太:「あ、いや、その……」
 マリア:「別にいいよ。鉄ヲタの勇太がそう言うんだから、間違い無いのだろう」

 これは『いろは歌』から等級を当てていったからである。
 1等車『イ』、2等車(グリーン車)『ロ』、3等車(普通車)『ハ』といった感じ。

 勇太:「とにかく、JRのグリーン車はビジネスクラスだと思って間違い無いよ」
 マリア:「分かった」
 勇太:「そんなにイリーナ先生、ファーストクラスが嫌いなの?」
 マリア:「というより、1番高い席は大師匠様がお掛けになるという考え方だから。あの1期生達は」
 勇太:「『本当のVIPはファーストクラスには乗らない。自家用機(専用機)に乗るんだ』って、何かの映画のセリフで聞いた気がするけど……」
 マリア:「大師匠様は専用の邸宅はどこかに持っていらっしゃるみたいだけど、プライベートジェットまでお持ちだとは聞いたことがない」
 勇太:「だって瞬間移動魔法、使い放題だもんね」
 マリア:「ただ、あの魔法のエネルギーは結構デカい。MPの消費量半端ない。あれって距離に関係あるのかと思いきや、本当に行きたい場所に寸分違わず行こうとすればするほどMPの消費量が高いんだって、後で気づいたよ」
 勇太:「そう。だから、近場の方がMPの消費量が却って大きいっていうね……。中距離くらいの方が却って少ない」
 マリア:「そうそう。例えば師匠の故郷、ロシアのサンクトペテルブルクに行こうとするじゃない?その町の街区まで指定しようとすると、いきなりMPの消費量が跳ね上がる」
 勇太:「サンクトペテルブルクがどんな町なのかは知らないけど、適当に指定して、トンデモ危険地帯に着いちゃったら泣きを見るからね」
 マリア:「そうそう」

 そんな魔道士あるある話をしながら、2人は車には戻らず、駅前の足湯に向かった。

 マリア:「先月入ってから、これが気に入った。温まっていい」
 勇太:「この近くにも温泉があるみたいだよ。入る?」
 マリア:「……いや、また今度にしよう。師匠には『キップと日用品の買い出し』としか言ってないから」
 勇太:「そうなんだ」

 足湯は寄り道にならないのかというと、駅舎のすぐ隣に設置されており、ギリギリ駅前ロータリーに接していなくもない。
 その為、これも駅の設備と見做せば、寄り道には当たらないというのがマリアの言い訳だった。

 マリア:「あー……これはいい。師匠も連れて来てあげよう」
 勇太:「帰省の時、この駅を利用するから、その時に入る?」
 マリア:「それはいいかもしれないね」

 しばらく入って、温まったところで足を拭くマリア。

 勇太:「……!」

 マリアはグレーのプリーツスカートを穿いていた。
 女子高生が制服のスカートとして穿くものと、何ら変わらない。
 マリアが足湯から出る時に足を上げると、中がチラッと見えた。
 幸い、他に客はいなかったものの……。

 勇太:(黒か……)
 マリア:「どうした?さすがに長居すると、師匠に怪しまれるぞ?」
 勇太:「あ、うん!すぐ出る!」

 足を拭いてから靴下と靴を履き、足湯から出る。
 ロータリーの前には件のタクシーと同じ車種の車が止まっており、それに乗り込んだ。

 マリア:「今度はSupermarketまで行って」
 運転手:「かしこまりました」

 スーパーといっても、食料品だけでなく、日用品も売っている。
 食料品はマリアのメイド人形達が買い込んで来るが、自分達が使う日用品は自分で見繕うのがイリーナ組だ。

 勇太:「百均もあるから、そこでもちょっと探してみよう」
 マリア:「なるほど。それはいい」

 それで結局何だかんだ買っちゃって、予算オーバーになるのが百均の罠w
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“私立探偵 愛原学” 「帰京の探偵達」

2021-12-17 16:09:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月3日17:32.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 私達を乗せた“はやぶさ”は、順調に都内を走行している。
 時速320キロの速さに、リサ達は……疲れて寝ていた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央快速線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 車内に自動放送が流れると、それでリサは目を覚ました。

 リサ:「うーん……」
 愛原:「おはよう。いつの間にか寝ちゃったな?」
 リサ:「うん……寝ちゃった……。もう東京?」
 愛原:「もう東京。上野駅を出て、まだ地下トンネル内だがな」
 リサ:「地下はやだな……」
 愛原:「今、地上に向かって登っている。それより、絵恋さんを起こすんだ」
 リサ:「サイトー、もうすぐ着くよ。起きて」
 絵恋:「でへへへ……。リサさぁん……」
 リサ:「こいつ、何の夢見てる?」
 愛原:「まあ、楽しい夢だろうな。違う意味で」
 リサ:「起きろ、サイトー」

 リサは絵恋さんのおっぱいを揉んだ。

 絵恋:「ひゃあぅっ!」
 リサ:「私よりデカくなりやがって……!」
 愛原:「そうなの?」
 リサ:「だって私のブラ、Bだよ?」

 それでもBカップまでは成長できたか。

 愛原:「絵恋さんは?」
 絵恋:「私は……って、なに聞いてるんですか!」

 あ、ヤベ。
 セクハラだった。
 だが、リサは……。

 リサ:「サイトー。先生の言う事は絶対。質問も絶対。何カップか答えて」
 絵恋:「そ、そんなぁ……」
 愛原:「あ、いや、無理にとは……」
 リサ:「愛原先生に気を使わせた。サイトー、明日学校で体育の授業中、大【ぴー】お漏らしの刑」
 絵恋:「ひいっ!そ、それだけは!し、Cカップです」
 愛原:「オマエ、またイジメやってるのか?」
 リサ:「し、してないよ……」
 絵恋:「先生、誤解です。リサさんは、逆にムカつくヤツを懲らしめているだけです」
 愛原:「リサにとって、だろ?」
 絵恋:「違いますよ。この前なんか、学校でカツ上げしてたヤツがいて、それをリサさんが寄生虫を送り込んで、授業中にお漏らしさせてやりました」
 リサ:「むふー。正義の味方」
 絵恋:「リサさん、正義のヒーロー!」
 リサ:「もっと褒めて」
 愛原:「いや、リサ、それは……」
 リサ:「『血で血を洗う』の正義」
 愛原:「いや、それはどうかな……」
 リサ:「『流血の惨を見る事、必至であります』」
 愛原:「それもちょっと……」

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、東京、東京です。到着ホームは21番線、お出口は右側です。……」〕

 愛原:「おっ、もう着くぞ。荷物を下ろせ」
 リサ:「はーい」
 絵恋:「私がやります」

 リサよりも身長が伸びた絵恋さんが、リサの荷物を下ろした。

 愛原:「土産物、いっぱい買っちゃったな」
 リサ:「うん、買っちゃった」
 愛原:「荷物も多いから、タクシーに乗るか」
 リサ:「おー!」

 列車が東京駅に到着する。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください。21番線に到着の電車は、折り返し、回送となります。お客様のご乗車はできませんので、ご注意ください」〕

 私達は列車を降りた。

 愛原:「何だか久しぶりに帰ってきた気がするなぁ!」
 高橋:「作者が遅筆だから当然ですね」
 愛原:「ん?何か言ったか?」
 高橋:「いえ、何でも……」
 リサ:「今度は社会科見学と冬の修学旅行代行が楽しみ」
 愛原:「修学旅行あるの?」
 リサ:「中等部の修学旅行が中止だったから、私達の学年限定で」
 愛原:「そうなのか!」

 リサ達が中等部の時、コロナ禍の緊急事態宣言真っ只中だった為、修学旅行は中止となっていた。
 緊急事態宣言が解除された今、冬も大丈夫なら、その埋め合わせを行なおうという計画があるらしい。

 絵恋:「冬休み、少し潰れちゃうけどね」
 愛原:「冬に行くってことは……スキーツアーか何か?」
 リサ:「正解。中等部でもスキー合宿やってたけど、あれに便乗するんだって」

 確か、リサ達が中等部だった頃は、新幹線でガーラ湯沢に行っていたが、またそこなのだろうか?
 確かに新幹線一本で行けるという便利さはあるが……。

 絵恋:「リサさん、運動神経バツグンだから、スキーも上手いのよね!」
 リサ:「むふー」
 高橋:「運動神経が人外なだけだろー。それを言うなら、善場の姉ちゃんもだよ」
 愛原:「現役BOWはもちろん、元BOWも似たようなものか……」

 新幹線改札口を出て、在来線改札口も出る。
 私達の家へは、八重洲側のタクシー乗り場から乗ると良い。
 普通のタクシーは5人も乗れないので、ここで別れることになる。

 絵恋:「それじゃリサさん、また明日、学校でね」
 リサ:「ん。それじゃ」

 先にリサとパールを乗せる。
 2人を乗せた黄色いセダンタクシーの後で、私達は黒塗りのトールワゴンタクシーに乗り込んだ。

 愛原:「墨田区菊川1丁目までお願いします」

 私は行き先を運転手に告げた。
 そして、タクシーが出発する。
 基本的には、同じ地区に住んでいる絵恋さん達の後を追う形になるだろう。

 リサ:「先生、夕食は?」
 愛原:「もう夕食の話かい!」
 リサ:「当たり前。もう夕方」
 愛原:「今から高橋、作るの大変だから、出前でも取るよ」
 リサ:「おー!Lサイズのミートピザ!」
 愛原:「ピザがいいのか?えーと……」

 私はスマホを取り出した。
 今からピザ屋に予約注文しておけば、希望の時間に配達してくれる。

 高橋:「あと先生、明日の朝飯の材料買っておきたいんスけど……」
 愛原:「スーパーに行くのか?」
 高橋:「それは明日でもいいと思うんスよ。取りあえず、明日の朝の分だけ……。パンとか卵とか……」
 愛原:「じゃあ、コンビニでいいか。運転手さん、新大橋通りのコンビニの前で降ろしてもらえますか?」
 運転手:「かしこまりました」

 どうやら、今回も何とか日常に戻れそうだ。
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“私立探偵 愛原学” 「東北新幹線“やまびこ”30号」

2021-12-16 20:01:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月3日15:50.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅・新幹線上りホーム→東北新幹線1030B列車1号車内]

〔13番線に、15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車です。……〕

 ホームに上がって列車を待っていると、接近放送が鳴り響いた。
 17両編成の先頭車なので、ホームも結構先端部分で待つことになる。

〔「13番線、ご注意ください。15時57分、当駅始発、“はやぶさ”30号、東京行きが入線致します。尚、全車指定席となっており、自由席はございません。自由席特急券ではご乗車になれませんので、ご注意ください」〕

 編成も車両形式もバラバラな状態で運転される東北新幹線には、まだホームドアは普及していない。
 仙台駅にも、それはまだ無かった。

〔「黄色い線の内側を御歩きください。電車が参ります」〕

 眩い純白のHIDランプを光らせて、エメラルドグリーンの列車がやってきた。
 下り方向からの入線なので、利府の車両基地から回送で来たのだと分かる。

〔お待たせ致しました。13番線に到着の電車は、15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行きです。この電車は……〕
〔「13番線、まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。業務連絡、1030B車掌、準備できましたらドア扱い願います」〕

 ドアが開く。
 “はやぶさ”に使用されるE5系は、ロングノーズの先頭車が特徴的である。
 しかしそういった構造の為、運転室の付いている車両は定員が中間車の半分くらいになってしまった。
 そこでJR東日本では、そんな車両をプレミアム化。
 グリーン車よりもグレードの高いグランクラスを設けて、定員減少分の運賃・料金を回収しようとした。
 さすがに両側の車両でやるのは無理があると思ったか、私達が乗った1号車の部分は普通車である。
 尚、ロングノーズ構造のせいで定員が減ったのは秋田新幹線用のE6系も同じ。
 こちらは新幹線にしては編成が短い為、上り方向の先頭車(11号車)をグリーン車にし、下り方向の先頭車(17号車)は普通車としている。
 先代のE3系より定員が減ったことを受け、それより1両増結して7両編成としている。

 絵恋:「リサさん、荷物乗せてあげるね」
 リサ:「ん、よろしく」

 乗り込んで、指定された席まで行くと、絵恋さんが荷棚に荷物を乗せた。
 リサは今や絵恋さんより小柄の為、絵恋さんが気を使ってリサの荷物を乗せてあげたようだ。
 リサが中学校に編入した時は、まだ2人とも似たような体型だったのだが、(一時はBOW化しかかったものの)一応は普通の人間である絵恋さんは成長して、今やリサよりも身長が高くなっている。
 リサの場合、食べ物から吸収したエネルギーは形態変化や人外的な身体能力に消費されてしまう為、身体の成長に回せないということが判明している。
 その後遺症か、人間に戻れた善場主任も確かに小柄な体型である。

〔「ご案内致します。この電車は15時57分発、東北新幹線“はやぶさ”30号、東京行きです。仙台を出ますと、大宮、上野、終点東京の順に止まります。停車駅にご注意ください。また、この電車には自由席はございません。自由席特急券でのご利用はできませんので、ご注意ください。尚、本日、お席にはまだ空きがございます。お手持ちの自由席特急券で、この列車をご利用のお客様は、車掌までお申し出ください。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 リサ:「♪~」

 で、リサ、早速クレーンゲームで取った景品の食べ物を開ける。

 絵恋:「本当にリサさん、底なしの胃袋ね」
 リサ:「ん。BOWの宿命」
 愛原:「喜んでいいのかな……」

 私は首を傾げた。
 と、そろそろ手持ちのスマホのバッテリーが残り少なくなった頃だ。
 グリーン車やグランクラスなら、全席にコンセントが付いているが、普通車ではデッキのすぐ前の席以外は、窓側にしかコンセントが無い。
 そこで私は、予め充電しておいたリチウムバッテリーで充電を始めた。

 リサ:「おっ、先生!賢い!」
 愛原:「賢いって、オマエにも買ってあげただろ」
 リサ:「忘れて来た……。ずーん……」
 愛原:「そうだったのか!で、充電は?」
 リサ:「昨夜はホテルから借りた」

 そうか。
 ホテルによっては、充電コンセントの貸し出しをしている所がある。

 愛原:「何だ。それなら、俺のを使うか?」
 リサ:「いいの?」
 愛原:「いいよいいよ。俺にはこっちのバッテリーがあるから」

 私は自分の荷物の中から、充電コンセントを取り出した。

 愛原:「窓の下にあるだろ?」
 リサ:「サイトー、足邪魔」
 絵恋:「あっ、ごめんなさい!」

 リサ、その言い方は……。

 高橋:「先生、戻りました。……って、何やってんスか?」

 喫煙所でタバコを吸っていた元不良カップルが乗って来た。

 愛原:「いや、ちょっと、リサが充電コンセント差してるんだよ」
 絵恋:「リサさん!そんなに屈んだら、スカート(の中)見えちゃうよ!?」
 リサ:「だからサイトー、足邪魔だって」
 高橋:「……楽しそうっスね」
 愛原:「まあな」
 高橋:「あ、先生、ついでにコーヒー買ってきました」
 愛原:「おっ、ありがとう」

 ホームの売店で買った紙コップ入りのレギュラーコーヒーだった。
 しばらくして、ホームから壮大な発車メロディが聞こえてくる。
 地元楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団が演奏した“青葉城恋唄”を録音した物である。

〔「15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行き、まもなく発車致します」〕

 甲高い客扱い終了ブザーが聞こえて来て、ドアが閉まる。
 ホームドアは無いので、車掌は車両の閉扉を確認したら、運転士に発車オーライの合図を送るのだろう。
 そう思っていると、列車はインバータの音を響かせてスーッと走り出した。
 元々上り本線にいた為に、ポイントを渡ることはない。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“はやぶさ”号、東京行きです。全車両座席指定で、自由席はございません。次は、大宮に止まります。……〕

 仙台市内ではまだ徐行運転する列車だが、市外に出るとグングン加速する。

 愛原:「あれ?そういえば絵恋さん達の分も東京までで買っちゃったけど、良かった?大宮で降りる?」
 絵恋:「いえ。私達も東京のマンションに帰ります。どうせ明日は学校ですから」
 愛原:「そうか。それは良かった」

 グングン加速している最中、進行方向左手に見えますのは、パチンコ“パラディソ”名取店でございます。

 リサ:「おっ、新台入れ替え!リニューアルオープンだって」
 愛原:「どこだ!?」
 高橋:「どこだどこだ!?」
 パール:「どこですか!?」
 絵恋:「こらこら!パチンカス3バカ!」
 リサ:「もう過ぎ去ったよ」

 私や高橋はともかく、パールがメイド服姿のままでパチンコ台の前に座っている姿はシュールである。
 しかも、タバコをくわえて(最近は台での禁煙を謳う店が増えてきている)。
 何だか最後、楽しい旅となってしまったが、とにかく残念なのは、“トイレの花子さん”の盗まれた遺骨を見つけることができなかったことだ。
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“私立探偵 愛原学” 「昼下がりのJR仙台駅」

2021-12-16 16:07:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月3日15:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅コンコース]

 ハピナ名掛丁というアーケード街にあるゲーセンで昼食後の一時を過ごした私達は、そこでゲットした景品などを手にJR仙台駅に向かった。

 リサ:「兄ちゃん、クレーンゲーム上手いね!」
 絵恋:「パールも上手いのね!」
 高橋:「けっ、褒めたって何も出ねーよ!」
 パール:「お褒めに預かりまして」

 2人の少女は高橋達に取ってもらったクマのぬいぐるみを抱き抱えていたが、さすがに目立つので、ビニールバッグを貰ってそこに入れた。
 しかし、リサもリサでなかなかクレーンゲームが上手い。
 もっともそれは、お菓子のクレーンゲーム限定だが!
 それ以外はてんでダメなので、高橋に取ってもらった。

 高橋:「何でオマエ、食べ物が絡むと変わるんだ?」
 リサ:「特技」
 絵恋:「リサさん、ステキ!カッコいい!」
 リサ:「むふー」

 クレーンゲームの中に、景品のお菓子が山積みになっている筐体があるだろう?
 あれだよ、あれ。
 あれだけリサは上手い。
 また、あのゲーセンにはお菓子だけでなく、ビーフジャーキーなどのおつまみが景品の筐体もあって、それもリサはゲットした。
 きっと、新幹線の中で食べるつもりだろう。
 現に、取ってすぐに食べようとしていたのを私が阻止した。

 絵恋:「まあ、それはそれとして……。お土産買って行っていいですか?」
 愛原:「ああ、そうするといい。リサは……うん、飲み物だけでいいかな?」
 リサ:「クレーンゲームには無かったお菓子も食べたい」
 愛原:「ああ、そう……」

 私は少し頭を抱えた。

 愛原:「ラチ内コンコースで全部買えるからいいな?」
 絵恋:「らち?拉致されるんですか!?り、リサさんになら拉致られてもいいかも……」
 リサ:「で、線路の上に放置する」
 愛原:「ゴメン。キミ達のお前で鉄道用語使うべきではなかった」
 パール:「御嬢様、ラチとは改札のこと。つまり、愛原先生は『改札内コンコース』と仰ったのです」
 絵恋:「そ、そうだったの」
 愛原:「パール、詳しいな?」
 パール:「御嬢様に知識を提供するのもメイドの務めです」
 高橋:「さっき、こっそりググッてなかったか?」

 ペデストリアンデッキから駅2階に入る。
 そこからエスカレーターに乗って3階に上がった。
 そして、新幹線改札口の前で立ち止まる。

 愛原:「キップは1人ずつ持とう」

 私が乗車券と特急券が1枚になっているキップを配ろうとした。

 絵恋:「先生!私はリサさんの隣でお願いします!」
 リサ:「私は先生の隣」
 パール:「私はマサの隣でお願い致します」
 高橋:「いや、パール!サバイバルナイフ取り出して頼むことを『お願い』とは言わねぇ!」
 愛原:「う、うん。ナイスツッコミ」

 正確には『恐喝』または『脅迫』だろう。
 いずれにせよ、無言の恫喝と言える。

 愛原:「そうなると、こういう席順になる」

 絵恋さん『A席』、リサ『B席』、私が『C席』、高橋が『D席』でパールが『E席』と。
 3人席のある新幹線普通車ならではの席順だな。

 愛原:「それじゃ、早速中へ入ろう」

 キップを自動改札機に通す。
 新幹線用の改札機ということもあって、在来線のそれより一回り大きなサイズである。
 東海道新幹線なら青色(東海道新幹線の色。在来線だとJR東海のオレンジになる)だろうが、JR東日本だと黄緑色(山手線の色)になる。

 高橋:「空港みたいな金属探知機が無くて良かったっスね」
 愛原:「俺達の銃に関しては、許可済みだから大丈夫だよ。もちろん、ちゃんと許可証の提示とか、申請書の提出とかは必要だけどな」

 だから飛行機に乗る時は、例え国内線であっても面倒だったりする。
 新幹線に関しても、手荷物検査の導入の是非が問われているが……。

 愛原:「まだ少し時間があるから、土産とか見て来るといい」
 リサ:「はーい」

 ラチ内コンコースには、他にもJR東日本系の書店(BOOK EXPRESS)がある。
 高橋とパールは、ここで立ち読み。
 私はリサ達の買い物に付き合うか。

 愛原:「リサのお土産って何だ?」
 リサ:「これ」

 リサが手に取ったのは仙台牛タン。

 愛原:「自分用かいw」
 リサ:「ダメ?」
 愛原:「ダメじゃないけど、もっとこう……学校の友達用とかさ……」
 リサ:「あれよりはマシだと思う」
 絵恋:「小島にはこのお菓子でいいわね。淀橋は甘い物が好きじゃないから、このビターチョコにして……。あと、山田には……」
 愛原:「何で?」
 リサ:「取り巻き確保用のバラマキ」
 愛原:「そういうこと言わない!」

 確かに私が学生の時にも、クラス中に土産を配って回るヤツとかいたけどさ……。
 結局リサはリサで、リサの取り巻き……もとい、比較的仲良く付き合っているコ達に買って行くことにしたようだ。

 リサ:「私のウィルス感染寄生虫を少し混ぜておけば、サイトー以上の取り巻きの出来上がり……」
 愛原:「おい、聞こえてるぞ!BOW!ラスボス!リサ・トレヴァー『2番』!」

 リサの監視役に、令和版スケバン刑事が必要なのかもしれない。

 愛原:「高橋とパール。買う本見つかったか?」
 高橋:「俺はこの『走り屋天国!セコハン市場!!』で」
 愛原:「オマエ、走り屋卒業したんじゃねーのかよ!……パールは?」
 パール:「私はマサと違いまして、メイドの道を極めるべく、こういった本で勉強しようかと……」
 愛原:「『Theメイド道!ヴィクトリア期のメイド解全!!』……こんな本あるんだ?」
 高橋:「先生、騙されちゃいけません」

 高橋はその本に挟まれた、別の本を3冊抜き出した。

 愛原:「『令和新装版!完全他殺マニュアル』『サバイバルナイフの全て』『元死刑囚が語る!完全犯罪マニュアル!』」
 パール:「ちっ、余計なことを……!」
 高橋:「先生に隠し事は禁止だぜ!あぁ?」

 こんな本、普通は売ってない。
 もちろん、フィクションです。
 ていうか、最後の本にあっては、絶対インチキだと思う。
 完全犯罪できなかったから警察に逮捕され、死刑宣告まで言い渡されているのだから。

 愛原:「アタマ痛くなってきた。さっさと買ったらホームに行くぞ」
 高橋:「うっス!」
 パール:「かしこまりました」
コメント
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