辻村深月さんの「盲目的な恋と友情」、面白かった。
恋と友情の二篇からなり「恋」は絶世の美少女蘭花の視点から、「友情」は彼女の親友?留利絵の視点からある事件の詳細が語られます。
目の前で繰り広げられるメロドラマを見ているような気にさせる展開で、さすが「ツナグ」の辻村さん、うまいなあ・・・
あっという間に読み終わりました。
元タカラジェンヌを母に持つ美少女蘭花。今まで男性と付き合ったことがない。
いろんな男性と付き合ったほうが良いという母の忠告に従って、大学に入って初めて自分に告白してきた男子と取り敢えず付き合っている蘭花にオケの友人美波が聞く。
「なんであんな男なの?」
「だってあの人だけだよ。私に告白してくれたの。」
「蘭花に告白する時点でダメダメじゃん。」
「なんで?」
「普通は臆するよ。(高嶺の花過ぎて)そうじゃない時点で根拠の無い自信に裏打ちされてるってことでしょ。」
なんてリアルな会話でしょう。
同じような話聞いたことあるなあ。
かとうかず子さんがそのまんま東さんとの結婚を決めた時に言ってた言葉。
「かとうさんほどの美人ならさぞモテたでしょうに何でお笑い芸人さんと?」との問いに「東さんだけなんです。私に告白してくれたのは。」
ホンマかいな~?とその時は思ったけど、案外美人過ぎたり完璧すぎるとモテないのかもね。
程々の可愛さと親しみやすさを持った美波のような子がモテるようです。
蘭花は当然のごとくオケの指導に来たセミプロの指揮者オケメンバー憧れの茂実星近と恋に落ち・・・
蘭花は見かけだけじゃなくてとても純粋な心を持っている女の子。
ちょっと情緒に欠ける(人の気持ちに鈍感なぼんやりさんな)ところもあるけど誰にでも優しくバイオリンも上手い。
同じ第一バイオリンでバレエや演劇、ミュージカルなどの趣味が合う留利絵と親しくなります。
茂実との恋に夢中な蘭花を留利絵は恋にも似た盲目的な友情で支えます。
どうして彼女がそうなったか?
それは彼女のコンプレックスによるもの。
父親は有名な画家らしいのですが愛の無い家庭環境で育ち、ニキビだらけの顔のせいで暗い少女時代を過ごした彼女にとって蘭花は天使のように見えたことでしょう。
そんな彼女に声をかけられ親しく接してもらえることで留利絵は自分のプライドを満足させてゆくのです。
一見チャラいようでチャッカリと出版社に就職し、芝居なんか見たこともないくせに演劇の取材が元で有名な演出家と結婚することになる美波に対するモーレツな嫉妬心。
留利絵の心の中に渦巻くドロドロしたマグマのような物、女性ならそういうことあるある!と共感できると思います。
クライマックスの結婚式が切ないです。