ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ETC2.0のデータ、民間提供へ 国交省

2018年08月16日 | ITS
ETC2.0は走行履歴を国のサーバーにアップリンクする仕組みになっている。その目的は車両の実際の走行データを様々な政策に活用しようというものだ。もちろんこれは個人情報なので個人は特定されない。これだけ聞けばなるほどと思うだろうが、実際はそうしたデータ収集・分析はすでに民間が先んじている。国として官製データがほしかった、ということだろうか。

ETC2.0についてはこのブログで散々かいているが、ざっくり言えば消費者にメリットなく、データ通信ポスト設置にカネがかかり、しかも消費者にとって高い買い物となるので補助金までつけてるというはっきり言って厄介ものでしかない交通行政施策なのだが、唯一の官にとってのメリットはこの交通情報データなのだ。

ではそのデータは一体何に活用されているのか?これについては具体的にあまり聞かない。唯一、最近鎌倉でETC2.0を活用した交通状況の調査が実施されたが、その成果として「観光地周辺は休日には渋滞する」という大発見がもたらされた模様だ。(笑

ということからか、国交省はこのデータを民間に開放することにした。2018.8.16産経ビズ
おそらくこれは巨額の費用をかけて進めてきた施策なのにそのデータが使われていないのではないか、という批判をかわすためのものだろう。

国交省はETC2.0データを活用した新たなサービス提案の募集を行い、有識者委員会において評価を実施し、実用化にあたっての制度的・技術的課題を検討した上で、実験・実装を進める、としている。
国交省報道発表資料リンク

まあ、巨額の費用(高速道路のポスト設置だけでも250億円)をかけて集めたデータを活用しないのは勿体ないのでこれ自体は批判しないが、問題はETC2.0のデータってあんまり使い勝手が良くないということ。路車間通信だから通信ポストを通過しない限りデータは収集できない。その通信ポストは今の所全国高速道路だけ。高速道路を使わない車のデータはあつまらないし、あまり高速道路に縁がない地域のデータはまるごと抜け落ちる。この弱点を補うためには一般道にもポストを設置する必要があり、一部ではされているが完全に整備するにはかなりの費用がかかる。
訂正。公開されていないが、2015年頃から一般道路に結構な数の読み取り専用路側機が設置されているという情報もある。これについては詳しく調査し別エントリー予定。
走り回る車の移動データを取得するために一番便利なものは誰がどう考えても移動体通信であり、路側ポストではない。

ということで、すでに民間のデータ、それも全国をカバーするデータが存在する中で、限定的にしかデータが収集できないETC2.0の走行データにどれほどの活用余地があるのか、が最大の疑問。
いまから予想しておくと、国交省との出来レース以外には残念ながらろくな公募はないだろう。

ETC2.0は典型的な「やり始めてしまったからやめられない」施策だ。特に250億円かけて整備したポストや、高くて売れないETC2.0車載器の処置等、やめられない事情はよく分かる。
だからといってこのまま進めてもたいした成果はでない。もう潔くドライバーにとって意味なく高価なETC2.0は中止したほうが良いのではないか。

国交省は道の駅途中下車を一般ドライバーに開放せよ

2018年07月29日 | ITS
あまり知ってる人は多くないと思うが、現在全国の約20か所程度の道の駅で高速道路をいったん下車して立ち寄っても通行料金を割り増ししない(下車したことにしない)という社会実験が行われている。その狙いは国交省によれば

・サービスエリア未整備区間の解消
・適切な休憩による事故防止
・道の駅利用増加による地域活性化
となっている。至極当然な内容だと思う。

しかし、問題はその割引がETC2.0装着車に限定されているということだ。

国交省は割引をETC2.0に限定する理由を明言していない。
一方、「ETC2.0は車両の通行履歴情報を記録することができる」という特性から、これを報道するメディアはETC2.0だから実現できた施策だと勘違いしているように思われる。

しかし、それは事実ではない。通常のETCでも対応は全く問題なく可能なのだ。

以下はやや技術的な内容になる。
ETC2.0はGPSを内蔵し、走行履歴を蓄積しポスト通過時にそれをアップリンクする。
したがってETC2.0は走行履歴を記録するというのは間違いではない。しかし、走行履歴は個人情報であるため、出発地、目的地周辺の情報は記録されない。その判定はエンジンのオンオフで行われる。つまり、道の駅で車を降りたらそこで道の駅に立ち寄ったという記録は消去されてしまう。したがって道の駅立ち寄りの判定はできない。
ではどうしているかというと、道の駅に設置されたETC読み取りポストで行っている。
このポストは技術的には通常ETCでも利用可能。

ではなぜETC2.0しか割引が受けられないのか?

それは、ただ単にETC2.0に対象を限定しているから、としか言いようがない。

ここでもう一度この施策の目的を見てほしい。
これは道路施設上の不備を補い、疲労防止による事故防止を目的にしている。
つまり、当然すべてのドライバーに対して解放されるべき施策だということは明らかだ。

それなのに、まだ圧倒的に通常ETCに比べて装着車両がすくないETC2.0に限定し、わざわざその施策の効果を抑制する必要なんて、普通に考えたら全くない。

その理由は、驚くべきことにETC2.0の普及促進、なのだ。

ETC2.0は通常ETCよりも1-2万円高い。しかし、ドライバーが感じるメリットはほとんどないため普及が進まない。そこで、国交省はこの制度をETC2.0装着車限定とし、ETC2.0のメリットを無理やり作り出しているのだ。
なぜそこまでしてETC2.0を普及させたいのかは私はさっぱりわからない。
ETC2.0は走行履歴情報を官に提供するからその見返りだという説もあるが、それならそうと明言すればいい。もしかしたらもっと何か深い闇があるのかもしれないが、それは安易に推測で語るべきものではないのでここではこれ以上言わない。

道路会社は民間企業であり、ユーザーに対してどのような優遇策を出すかは企業の自由だ。ゴールド会員には特典を用意する、というようなことは行われている。しかしこれはそのような話ではない。
繰り返しになるが、サービスエリア未整備区間の不便解消、適切な休憩による安全確保はすべてのドライバーに提供されるのが当たり前。ETCでないと処理が面倒ということであればETC限定にすることは理解するが、ETC2.0普及促進に使うのは完全に間違っている。

ドライバーは道の駅途中下車施策を全ETCに適用させるべく声を上げるべきだ。

乗り物ニュースのETC2.0翼賛記事。このタイトルはいかがなものか?

2018年07月26日 | ITS
乗り物ニュースのECT2.0記事、おそらく国交省に依頼された翼賛記事だと思うが、タイトルの「着実に近づく『従来型が使えなくなる日』」は故意にミスリードさせようとしているのではないか?

この記事は署名記事ではなく編集部記事であり、おそらく国交省の意向を受けて書かれたものだと思う。
このタイトルをみたら「通常のETCはそのうち使えなくなるから買うならETC2.0にしておこう」と考える人もいるかもしれない。というか、中身をよく読まなかったらそう思うのが普通だろう。
しかし、実際は使えなくなる理由は通信のセキュリティ規格の変更であり、通常ETCに関しても現在販売されている機種は概ね対応済みなのだ。(除く在庫処分品)
しかも、その変更時期は「現行のセキュリティ(車載器、カード)に問題が発生しなければ最長で2030年頃までとなる予定です。ただし、セキュリティに問題が発生した場合は、変更時期が早まる可能性があります。」ということで、まだ10年以上先の話。
今すでに通常ETCをつけているユーザーは10年後に使えなくなる可能性がある、ということ。ただ、これにしても切り替えには相当の混乱が予想されるため、本当に2030年に実施されるかどうか筆者は疑っている。

案の定、後追いメディアでは明らかに勘違いして「従来型は使えなくなる」としたものもある。
このような誤解をあえて誘うタイトルもETC2.0をなんとしても普及させたい国交省の意向なのだろうか?

以下はいままで散々書いてきたことだがあえて今回の記事内容に反論しておく。
私の主張をご存知の方は読む必要はないが、もしはじめてだったらご一読願いたい。

・広域的な運転支援、渋滞回避支援サービス
 広域的な道路交通情報や前方の渋滞情報、それに合わせた渋滞回避ルートなどが案内されるほか、事故多発地点や急カーブ、落下物などの情報の事前通知、災害発生時における災害情報と運転支援情報などが提供されます。カーナビと一体になっている場合は映像と音声で、カーナビがなくても、発話型のETC2.0車載器が装着されていれば音声でそれらの情報を得ることができます。ITSスポットでは、最大で1000kmぶんの道路情報が取得可能で、従来からカーナビで使用されているVICSよりも広域な情報が提供されます。

>これについては細かいことは言わないが、「これがついてて便利だ、良かった」という話は聞いたことがない。その程度の機能。

・圏央道の料金2割引
 2016年4月から実施。ETC2.0搭載車は、圏央道(新湘南バイパスを含む)を約2割引きで利用できます。たとえば平日の日中に神奈川県の海老名IC(神奈川県海老名市)から埼玉県の白岡菖蒲IC(埼玉県久喜市)まで圏央道を利用した場合の料金は、通常で3070円、ETC利用で2850円、ETC2.0利用で2590円です。

 このサービスは都心を避けた圏央道への迂回を促進する目的などから実施されているものですが、ETC2.0では走行経路の把握が可能になるため、将来的には渋滞を避けたルートを通行した際に利用料金を割引く制度も予定されています。

>割引がETC2.0に限定しているのは事実。ただしETC2.0は走行経路の把握が可能なため実現したかのように巧妙に書かれているが、実際はETC2.0だけを割引対象にしているだけ。ETC2.0の走行経路はエンジンを切るたびにその前後が消去されるので実際には使えない。実際は通常ETCでも使える受信ポストで判定している。
また、今後拡大が予定されている、とあるがさっぱり拡大していない。

・高速道路からの一時退出を可能に
 指定のICから高速道路を降りて指定の「道の駅」に立ち寄り、1時間以内に高速道路へ再進入した場合、降りなかったのと同じ料金になります。ETC2.0搭載車を対象に全国3か所から始まり、2018年7月現在では岩手県から長崎県まで、20か所で実施されています。

>これも同様。ETC2.0だから実現したのではなく、ETC2.0に限定しているだけ。通常ETCも対象にするべきだと消費者は声を上がるべきだが、あたかもETC2.0だから実現したかのようにしているので誰も気が付かないのだ。

・駐車場での利用
2017年から2018年3月にかけては、NEXCO東日本および中日本、首都高速道路などが主導し、一般駐車場で「ネットワーク型ETC」を活用した利用料金決済の実証実験も行っています。この「ネットワーク型ETC」は施設側が整備するもので、実験では従来のETC搭載車も利用の対象とされていましたが、ETC2.0の場合はさらに、車載器の発話機能で駐車場内の空いている駐車マスを案内したり、車両の登録情報から駐車場進入時に車高オーバーであることを知らせたりすることも可能になります。

>これもETC2.0限定の話ではない。ETC2.0ならではのメリットが書かれているが、音声案内が必要だとは思えないし、これも予定で実施のめどなどない話。

・ETCの普及団体であるITSサービス高度化機構(東京都千代田区)によると、将来的な展開として、このような駐車場やガソリンスタンド、ドライブスルー店舗での料金決済サービス、フェリー乗船の簡素化などを例示しています。

>ガソリンスタンド、ドライブスルー等はETC導入の時から言われているが実現していない。このブログでは15年前からこれは実現しないと言い続けている。

ETC2.0は路側ポストの設置に250億円、またその普及については恒常的に補助金を出しており、相当の金額が注ぎ込まれているがドライバーの利便にはさっぱり結びついていない。
したがって普及もなかなかなので、圏央道の割引や道の駅退出などを恣意的にETC2.0に限定して普及させようとしているのだ。
もう良い加減にやめてほしい。

未来投資戦略2018

2018年06月25日 | ITS
政府は国の今後の投資戦略の最新版、未来投資戦略2018を公表した。PDF

ICT、AI、ビッグデータ、自動運転、キャッシュレスといった、必ずしもすでに日本が世界をリードしているとは言い難い、しかしこの先もっとも重要なテーマについての我が国の戦略であり、非常に重要な国の政策の姿を語っているが、その中身をみるとこれらBUZZワードはきれいに散りばめられているがいかにも具体策に欠けていて、本当にこれでうまくいくのか心配になる。
野党はモリカケへの熱意と同じ、もしくはそれ以上の熱意でこの中身について突っ込んで政府を追求してほしいと思うのだが、そうした動きが見られないのは残念だ。

私の分野である自動車・交通関係に限定し、気がついたことを記しておく。

1.自動運転
オリンピックの2020年には公道での地域限定移動サービスの自動化を実現し、来日観光客へのショーケースとする、とあるが、私の予想は羽田国際ターミナルと国内ターミナルを結ぶ無人小型シャトルが精一杯。とてもショーケースというレベルには行かないだろう。
自動運転には道路インフラの根本的な見直しが必要であり、それには時間がかかる。2030年までに本格的な無人自動運転移動サービスを地域限定全国100箇所で実施、というのは現実的な線だが、これで世界をリードすることはできないだろう。
(どうでもいいけど、年表を西暦で書いた後、その詳細説明に平成をつかうのはやめてほしい。いちいち頭の中で換算する必要がある)

それ以上に不可解なのは、自動運転とカーシェアは切っても切れない関係であるはずなのにカーシェアについての言及は一言もない。というか、全体をとおしてシェアリングビジネスへの言及はほとんどない。既存のタクシー等運送業への配慮がにじみ出ているように思うが、そんなことではインベーションはできないはずだ。

2.新幹線のネット予約
「本年度中に全ての新幹線・在来線特急の海外インターネット予約を可能とし、将来的な予約ページの共通化や-略-ジャパン・レールパスの利便性向上等を推進する」
結構なことだけど、今更かよ、という感想しかない。過剰なセキュリティで使い勝手がわるいとか、スイカ購入が必要とか、プリントアウトした確認書を有人みどりの窓口で切符と交換とかはやめてほしいけど、私の予想では面倒くさいシステムになるな。

3.ETC2.0
この報告書の中でのETC2.0への言及は2箇所のみ。全文を引用してもこれだけ。
-ETC2.0で収集したプローブデータの活用を官民連携で推進する。
-ETC2.0等を活用したピンポイント事故対策の実施
正直、プローブデータは民がすでにたくさん持っている。官民連携で活用を推進する、という絵はあまり想像できない。
また、事故対策に関してはこのブログで散々こき下ろしているとおり、ETC2.0にその効能はほとんどない。(というか、その他手段のほうが費用、効果ともに優れる)
そもそもETC2.0が構想された時点ではだれも自動運転なんて考えもしなかった。もはやETCにノンストップ料金収受システム以外の機能は不要。おそらくここに書かれている2点についての進展はない。

中国、ナンバー読み取り駐車場が急増中

2018年06月08日 | ITS
中国ではナンバー読み取り式の駐車場がものすごい勢いで増加している。従来のカード発行式駐車場はどんどんナンバー読み取り式に機械を入れ替えている。
日本でもナンバー読み取り式は存在するが駐車券は発行され、精算済みの場合は出口ゲートがそのまま開くというようなものが多い(日本を離れて6年経過しているので最近の事情はよくわかりません)。事前精算機対応のためだろう。
しかし、中国のナンバー読み取り式は駐車券を発行しない。入り口では表示器にナンバーが表示され、そのままゲートが開く。
精算所に人がいて集金するケースが多いが、スマホで決済が済んでいるとそのまま通過できるようになっている。

スマホ決済は二通りあり、一つは駐車場に貼ってあるQRコードを読み取り、自車のナンバーをインプットし支払う方式。要するに事前精算機がなく、自分のスマホで精算をするということ。決済はWechat Pay。もう一つが商業施設利用割引。レジで専用QRコードを読み取り、同様に自車のナンバーをインプットして完了。QRコードは一回読み取れば次回以降は自動的に自車ナンバーが表示されるので、二回目以降は精算はあっという間に終わる。
駐車場によっては出口に人がおらず、必ずスマホ決済をしなければならないところもある。それほどに現在の中国ではスマホ決済は当たり前になっている。

この方式、DSRC技術をつかったETCでのノンストップ料金収受に比べればローテクだが、ユーザーとしての使い勝手としては大きな差はない。スマホ決済はチャチャっとできるのでさして手間には感じない。さらに、ETC駐車場決済の課題である商業施設利用割引が簡単にできる。ETCの場合はETCカードの親カードで支払った場合に限り、カード会社でマッチングしカード決済時に駐車代を割引くというような方法しか今のところはないようだ。

さらに、ETC決済に比べ駐車場側の導入費用は遥かに安い。ハードウェアはナンバー読み取り機だけ。システムも集金はWeChatがやってくれるのでそれほど大掛かりなものは必要ない。

日本において、ETCの駐車場利用は駐車場側の設備投資負担を考えるとあまり進まないだろう。
ETC(DSRC通信)の商業利用はまだスマホが存在しなかった20年前のアイデアであり、現在はより良い方法がいくらでもある。
まだスマホ決済の統一プラットフォームがない日本ではこの中国式の導入は難しいが、どちらが現実的かといえばナンバー読み取りだろう。

外環道三郷南-高谷開通で思うこと

2018年06月02日 | ITS
本日、東京外環道三郷南-高谷が開通した。計画から半世紀かかったという。
政府が計画したら有無を言わさず道ができちゃう中国に住んでいると全く別世界の出来事に聞こえる。事実、別世界だけど。
強制立ち退きがある中国が良いと行っているわけではないが、社会インフラ整備にこれだけ手こずるというのもどうなのかな。

そして、もっと難しいのは大泉から南。一旦は断念したが石原都知事時代に再スタートし、きっといつかは開通するのだろう。
山の手の住宅街を縦断する高速道路を新しく高架で作ることはできないということは理解できる。したがって地下化となったのだが、地下でも反対している人たちがいるのだ。

いま、ちょっと検索してみたら「地下水脈が絶たれる」「排気ガスが心配」ということらしい。
地下水脈はきちんと科学的に調査し、問題がないように手を打てばいいだけのことだろう。
さらに、大きな勘違いは排気ガス。いま、外環道がないために環八を通っている車は相当ある。
これらの車が信号や渋滞で発進、加速を繰り返すことで発生する排気ガスが、高速道路ができれば相当量削減できる。

さらに大きな問題は、交通事故。一定速度で車だけが走行する高速道路は一般道に比べ死傷事故発生率は1/10程度。事故がおきれば大きな事故になるという人も多いが最近は車の安全性能が上がってきていて高速道路の死亡事故は毎年減少傾向にある。高速道路での事故死者は全事故死者の4.6%でしかない。(平成29年)

一方で歩行者、自転車には安全装置の進化はない。今も昔も車に衝突することで死亡につながる。不幸な交通事故死をへらすためには、車はできる限り自動車専用道を通行するべきなのだ。

圏央道により多少は改善されたとは思うが、外環道がないために環八を走行する車は多い。
同じようなことは中央道高井戸インターにも言える。住民運動の結果、高井戸にはいまだに下り方面の進入路がない。そのため環八から山梨長野方面に行く車は甲州街道を調布まで走らなければならない。

もちろん、外環道が完全に整備されれば渋滞がなくなり、また物流も飛躍的に効率化することによる経済効果があることは言うまでもない。しかし、経済効果をいうと反対派の方は決まって「お金より命だ」とおっしゃる。
では、環八や甲州街道沿線住民の環境問題や死亡事故の犠牲者についてどうお考えなのだろうか?

なぜ日本は青青信号問題(どちらも青問題)を放置しているのか?

2018年05月30日 | ITS
中国佛山市順徳で自動車通勤をして一年が過ぎた。
ここでは信号機が全く日本と違う。(中国は都市によってもまちまち)
まず、青信号から黄色に変わる前にカウントダウンがあるので、黄色で交差点に入る車はほとんどいない。これは監視カメラがあることも大いに関係しているが、とてもいいやり方だと思う。

次に、これが本題だが、基本的に交差点では青青信号問題が発生しないようにできている。

青青信号問題とは、直進車と右折車、右左折車と歩行者など、どちらも青信号だが注意しないと事故になる信号。日本の交差点は基本的に全てこの状態になっており誰もそれを不思議には思わないが、実際それによる事故も多い。大型車による歩行者巻き込みは悲惨な死亡事故となり、右折車と直進車(右直事故)は直進車がスピードが出ているのでこれも大事故になる。

順徳では4方向それぞれで順番に青になる、もしくは左折(日本で言う右折)は矢印信号で、そのときには歩行者を含め他の交通は赤になっている。
当然、日本に比べれば信号の待ち時間は長くなる。しかし右左折を徐行せずにできるので流れはスムースだ。

これはここ順徳に限ったことではなく、私がいままで短期生活したりレンタカーを借りて走った欧州各国も都市部ではたいてい矢印で歩行者との青青問題はなかったと思う。

なぜ、日本は信号機の青青問題を放置しているのか?少なくとも右折はすべての交差点で矢印信号にするべきではないのか?

日本は交通量が多いので待ち時間が長い矢印信号にすると渋滞が悪化する、という意見を聞いたことがあるが、果たしてそうだろうか?歩行者の横断が多い交差点では、左折ですら一回の青信号で数台しか通過できない事もある。個々の交差点で事情は違うかもしれないが、むしろ矢印化のほうが渋滞緩和になる。

そして、これがもっと大きな問題だと思うのだが、日本では矢印青信号に明確な定義がないということ。
右左折矢印青信号がでていたら、普通は歩行者の横断信号は赤になっていると考える。実際多くの矢印信号でそうなっているが、そうでない交差点も結構ある。理由は、明確にルール化されていないから。これは非常に危険な状態が放置されているということになる。

さらに、日本の矢印信号は小さすぎてどちらを向いているのかがわかりにくい。信号機の円のなかに収める必要なんてないのではないか。

いずれにしても日本では信号機に関してはバルブからLEDに変わったくらいで何十年前から基本的に何も変わっていない。
信号機の監督官庁は国交省ではなく警察であることも影響しているのかもしれないが、これを本気で改善することでかなり事故をへらすことができるのではないかと思う。

トヨタがMaaSに取り組む理由

2018年04月04日 | ITS
最近MaaSという言葉が業界では一種のBUZZワードになっている。Mobility as a Serviceの頭文字で、非常に簡単にいえば移動手段として車という所有するハードウエアを提供することから、移動手段自体を提供することへの変化と言って良いと思う。
広義で言えば従来からあるタクシーもその範疇に入るが、MaaSはそこにITプラットフォームを介在させて利便性を向上させたものと理解すればいいだろう。

そうした中、トヨタは東京地区の販売会社統合の発表(乗りものニュース記事)に際して、今後所有から利活用に消費者ニーズは変化することが考えられ、そのための新たなモビリティサービス提供によるビジネスモデル変革の一環である、と説明した。

販売会社統合に関しては、チャンネル政策がテリトリー制訪問販売時代にできたものだからこれは時代の流れだろう。一つのテリトリーに複数の販売会社が入り、複数の販売員が同一地区を担当することでシャアを拡大する事を狙ったものだが、すでに他社は殆どチャンネル制を廃止している。

本題の「新たなモビリティーサービス」だが、これはこのMonoistのインタビュー記事が詳しい。

要約すれば、日本で最大のシェアを持つトヨタが車両走行データというビッグデータを握るとともに、モビリティーサービスに関する各種アプリケーションのAPI(簡単にいえばアプリのプラットフォーム)を公開しサービス事業者に販売するという。勿論、自らもモビリティサービス事業には参入し、この分野のマーケットをくまなく手に入れるということだろう。

トヨタはアフターマーケットの重要性に着目し、ディーラーサービスの強化と同時にタクティーやジェームスというアフターマーケット市場も押さえに行った。それと似たようなことだ。

しかしアフターマーケットとは根本的に異なるのは、シェアリングビジネスが主流になると車種の選択がユーザーから事業者に移ってしまうということに有る。カーシェアの車が何であるか、あまり消費者は気にしない。またこうしたフリート販売は極めて薄利でカーメーカーにとってはあまりありがたいものではない。(沖縄のレンタカーは売れない車種ばかり、というのもそのあたりが理由)
このさき本格的に所有から利活用にニーズがシフトするなら、カーメーカーとしてはその根本を握っておく必要がある。当面カーシェアはタクシーや公共交通機関からのシフトが主流で所有を脅かすものではないだろうが、自動運転やフリーフローシステム等が導入されカーシェアの使い勝手が良くなれば所有は一気に衰退する可能性がある。

このトヨタの動きは進んでいるように見えるが、グローバルにいえばやっと、という感じだ。特にドイツのカーメーカーはかなり先を走っている。また、カーシェアのプラットフォームに関しては日本企業は出遅れていて、うっかりするとすでにかなりの規模でEVカーシェアが実運用されている中国のIT企業にも遅れを取る可能性がある。

言うまでもなく自動車は我が国の主要産業だ。ここはぜひトヨタに頑張ってもらいたい。

ETC2.0 道の駅 高速道路の一時退出実験を批判する

2018年04月02日 | ITS
前にも散々かいていてくどいけど、どうにも腹の虫が収まらないので再度書く。

現在、ETC2.0限定で高速道路の一時退出実験が行われてる。PA.SAがない区間で一旦高速を降り、道の駅に寄ってから再入場した場合は連続走行とみなす、というものだ。
一番新しい乗りものニュースの記事「高速道路の一時退出実験、本格開始 「道の駅」利用でETC2.0普及へ、その実際は?

この中で気になる記載が2つある。
「とはいえ、この新サービスは誰にでも利用できるものではありません。クルマにETC2.0を搭載していることが必要となります。ETC2.0はクルマの位置がわかりますので、一時退出したときに道の駅へ立ち寄ったことが確認できるのです。」

この文章からはだれもがETC2.0でなければ技術的にできないことだと思うだろう。
確かにETC2.0はGPSによる経路情報が記録される。しかし、プライバシー保護のためにエンジンを切るとその前後の情報は消去される仕様になってる。つまり、道の駅で駐車したら道の駅に立ち寄ったという記録は残らないのだ。

ではどうやって道の駅に立ち寄ったかを判定しているかと言えば、入り口に設けられた通信スポットを使っている。
これはETC料金所等と同じ技術なので当然通常のETCにも使える。単にあえて対象から除外しているのだ。
その証拠に、阪神高速ではすでに路外パーキングサービスという名前で通常ETCも対象としたサービスが提供されている。(ツイッターで情報提供いただきました)

国交省の報道発表資料にはなぜETC2.0に限定したかということはどこにも書かれていない。ETC2.0は経路履歴情報がわかることが特徴であるから、意図的にメディアが「2.0でなくてはできないのだ」と勘違いするのに任せているとしか思えない。

そこで出てくるもう一つの気になる記載。
「ETC2.0普及が主眼ですから、国土交通省は旧来のETCでの利用は、「現在は考えていない」といいます。古いETCを使っている人には、ちょっと残念なところですね。」

これを読んで唖然とした。
この国交省発表のPDFを見て欲しい。
ここにはその目的として明確に「休憩施設などの不足を解消し良好な運転環境を実現するとともに地域の活性化を図る」と書かれている。
良好な運転環境とは単に利便性だけではなく、過労運転防止という重要な安全性向上の意味もある。

ユーザーの利便や、安全向上と地域の活性は積極的に進めるべきものだから、すべてのETCを対象にするべきだろう。しかし、それをETC2.0普及策だと言い切る。

国交省は安全よりETC2.0の普及の方を優先している。しかもそれは通常ETCより1万円以上高額な負担をユーザーに押し付けるものなのだ。だから1万円の補助を出しているというかもしれないが、財源を考えれば本末転倒な話。
そこまでして普及させたいのであれば、国交省はその理由をきちんと明確にするべきだ。

ETC2.0可搬型路側機によるエリア観光渋滞対策に向けたデータ取得

2018年03月30日 | ITS
国交省は、全国初の試みとしてETC2.0可搬型路側機によるエリア観光渋滞対策に向けたデータ取得を鎌倉で実施する。
レスポンス記事可搬型ETC2.0で観光地の渋滞データを収集 鎌倉で実施へ

可搬型機器でETC2.0の情報を取得し交通行政に役立てるというのは理にかなっている。まっとうな活用事例だろう。
既存のプローブ情報に対してどれだけ優位性が有るのかはわからないが、まあすでにそれなりの台数が可動してるんだからETC2.0車載器を活用しない手はない。

しかし、この観光地の渋滞対策をプローブ情報から分析するってのは大げさではないか?どこから車両が流入し、なにがボトルネックになって渋滞が発生しているかなんて大体わかってるんじゃないの?

あと、将来的にはエリアプライシングを検討するとされているが本当にできるのだろうか?
ETC100%装着でなければ料金所を作るしかなく渋滞を助長する。かりに非装着車進入禁止にしたとしても、そのための関所が必要となるし、またエリアに侵入できない車両が渋滞を巻き起こすだろう。さらに、観光地って本当にエリアプライシングで渋滞がなくなるのかというのも疑問。
エリアプライシングはビジネス街では有効となる。毎日の出費となるから、公共交通機関へのシフトがおきる。
しかし観光ではエリア入場料は観光費用の一部と考えるだろうから余程の高額出ない限り公共交通機関へのシフトはさほどないと思う。

ETC2.0の問題点 まとめ

2018年03月28日 | ITS

本稿はこれまでのETC2.0批判のまとめですが、かなりの長文です。
なのでETC2.0購入を検討して当ブログにたどり着いた方にかんたんな結論を先に述べます。
ETC2.0は通常のETCに比べ1万円ほど高額ですが、圏央道をよく利用する方を除き一万円に値するメリットはありません。
また、今後サービスが広がるといっていますが、全く広がっていません。
ETC2.0を購入する意味はありません。
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このブログはETCの通信技術「DSRC」を活用した高度交通システムに対する疑問をメインに2004年8月から続いています。
基本的に「ETCは高速道路の料金収受にしか使えない」と約15年間言い続けて来ましたが、未だに国交省は「ETC2.0」という名前でその普及を図ろうとしています。
通信の世界は15年経てば別世界になります。実際、2004年にはスマホも3G通信もありませんでした。

いまや通信は5G,スマホも持っていて当たり前という時代になり、ポスト通過時しか通信できないDSRCに将来などない、ということは誰にでもわかることですが、未だに国交省・高速道路会社は通常ETCより割高なETC2.0を宣伝し、ましてや補助金までつけて普及をさせようとしています。

この状況は歴史的経緯などかなり複雑となっていますが、一度ここでまとめてみたいと思います。
かなりのボリュームになりますが、保存版と思って書きます。

1.そもそものはじまり
1997年にETCの通信規格が定められ、2001年から実際にETCの運用が開始された。
スタート当初からETCの拡大利用についての構想があった。
ひとつは交通安全システムへの応用。事故多発地点の手前にポストを設置し、この先渋滞注意などの警報を車に送るというもの。
もうひとつは民間の力を活用し、ETCを商業利用する考え方。例えば駐車場、ドライブスルー、ガソリンスタンド。

電技審答申には、2015年までにITS関連の市場規模は60兆円となりその多くはこれら新サービスによってもたらされると書かれており、関係各社やコンサルなどが競ってITS室をつくった。
しかし、私にどうしても商業利用はあり得ない(ノンストップが要求されるサービス以外は単なるキャッシュレスでしかなく、車が支払い装置で有る必要はない)と考え、このブロクを始めた。
結果いまどうなっているかはご存知の通り。当ブログ記事「1998年電気通信技術審議会答申の答え合わせ

2.交通安全システムの欺瞞
商業利用の他、事故多発地点の手前にポストを設置し、この先渋滞注意などの警報を車に送ることで事故防止につなげる、というのがこの施策の重要な柱となっている。
そのため国交省は2005年に首都高速の事故多発カーブ「参宮橋」で実験を行い、事故防止に効果があったという結論を出している。(実際に実験につかったのはDSRCではなくVICSビーコン)
しかし、実際には同カーブには車の挙動が変化するような大きな路面段差があり、実験前に舗装の打ち直しを行っている。そして、事故は実験期間ではなく舗装打ち直しから減少し、実験終了後も増加していない。
当ブログ関連記事
このことは一部自動車評論家も指摘しており、国交省関係者もしらないはずはないのだが、未だにこの実験は有効だったことになっている。
そして、現在全国高速道路には250億円をかけた1600ヶ所のポストが設けられているが、おかしなことにその事故低減効果に関するレポートは見たことがない。

3.仕様を巡るゴタゴタ
(1) 通常ETC
当初のETCには高速道路料金所に限定されたノンストップ料金支払い機能しか付いていなかった。これでは交通安全や商業利用といった利用拡大はできない。この通常ETCは現在も販売されている。
通常ETC車載器の機器固有番号をキーにして、紐付けクレジットカードから支払いをするというビジネスを三菱商事系のITS事業企画という会社が始めたが、成功に至らず現在は事実上消滅している。
(2) ITSスポット対応車載器
そこで、2011年、次世代として通信量を増大させ車載器に画像表示などができるようにした「ITSスポット対応車載器」もしくは「DSRC車載器」と呼ばれる次世代ETCが登場した。この車載器と対応ナビを装着することで全国高速道路に設置した1600ヶ所のITSスポットとの通信が可能となり、安全運転情報を受け取れる事になった。
また、高速道路のSAや道の駅にSAや道の駅の情報が受け取れるITSスポットが設置されたが、全く使われていない。(こんなものが使われると思ったセンスを疑う)
本来の計画ではETCからITSスポット対応車載器への変換が進むはずだったが、価格が高い反面、殆どメリットがないため全く普及しなかった。
(3) ETC2.0
2014年、「ITSスポット対応車載器」の仕切り直しとして、わかりにくい名称を「ETC2.0」に変更。高速道路の割引サービス等に対応するようになった。
但しITSスポット対応車載器はETC2.0のサービスを受けるためには車載器のソフト書換のため再セットアップが必要。
2016年には圏央道での割引がスタート。また、インターチェンジから道の駅に退出した場合の継続扱いもETC2.0向けサービス(後述するが、実際は優遇)として開始される。
現時点ではETC2.0のメリットはこれだけだが、車載器メーカーがETC2.0のラインナップを拡大したことから徐々に普及が始まっており現在販売されているETCのうち15%程度はETC2.0だと思われる。

4.消費者にあまり宣伝されていない追加機能
ETC2.0には実はあまり宣伝されていない機能がある。それが走行経路情報のアップロードだ。
ETC2.0はGPS信号による走行経路情報を50km分程度保持する。プライバシー保護のため、個人情報のアップロードはなく、また出発地・目的地はわからないように電源オンオフ前後のデータは消去される。これだけプライバシーには配慮しているがそれでもプライバシー議論に配慮してか、この機能は積極的には宣伝されていない。さらに、一般道路には推定で2000箇所の「情報吸い上げ専用ポスト」が設置されているが、これについては一般にはまったく公表されていない。
なぜこの機能があるのか。消費者向けには、ETC2.0は走行経路によって割引を行うので走行履歴が必要だとしているが、電源オンオフでデータ消去する仕様なので頻繁に立ち寄りをしたらデータはなくなる。また、GPS経路情報等なくとも経由地に通信ポストがあれば通過情報から経路はわかる。
実際は、走行データのビッグデータ取得が理由だろう。これはすでに民間テレマティックス関連や、Googleがデータをもっているが、官として自前のデータを持ちたいということなのだと思う。

5.ETC2.0のメリットと普及促進策
私の見解では、現時点でのETC2.0のメリットは圏央道の割引だけ。圏央道を使わない人にとっては高い買い物でしかない。
しかし、関係WEBサイトでは圏央道の割引に加え、交通安全、将来の経路による割引、将来の商業利用等が宣伝されている。また自動車関連メディアへのパブリシティ工作も十分行われており、ネットで検索すると概ね好意的な記事がでてくるし、定期的に宣伝的な記事が公開される。
しかし、それでも普及は思うように進まないことから、国交省は各道路会社を通じて割引キャンペーン(1万円)をずっと行っている。

6.なぜそこまでして普及させたいのか?
最大の疑問はなぜ補助金をだしてまで普及させたいのか、ということ。これは正直私もわからない。以下は仮説。
(1) 後に引けない
1600ヶ所のITSスポットに250億円を使っている。それ以外にもETC2.0に関しては割引キャンペーンや宣伝費等を含めかなりのお金を使っている。お金の話だけでなく、様々な官と産学によるプロジェクトも動かしているだろう。もしここでやめたらその責任問題が発生する。民間企業であればマネジメントが不採算事業を切り捨てて失敗が確定するが、このケースはやり続けている限り失敗認定はされない。
(2) 利権
これは非常に話題性がある理由だ。実際ETC利権を言う人は多い。しかし私はそこまでの利権はないと思う。ETCに関わった事業者がボロ儲けしているようには見えないからだ。むしろETC2.0は計画通り売れておらずメーカーは利益が出ていないのではないか。これは外野から憶測でものをいうべき話ではないのでこれ以上は控える。
(3) 走行データ収集
多分、今はこれが目的となっているのではないか。交通安全への寄与は限定的、商業利用もほぼ絶望的であるなか、消去法で残された目的だ。しかし、移動体通信が発達するなかで「車載器に蓄積した走行データを特定のポスト通過時だけ受け取れる」なんて仕組みに将来性があるかは大いに疑問だ。

7.問題点
(1) 消費者への欺瞞
ETC2.0車載器は通常ETCより1万円以上高額だが、それに見合うメリットは圏央道利用者以外にはない。
しかし、あたかもメリットが有ると宣伝する、もしくはメリットを誇大に宣伝するのは消費者に対する欺瞞でしかない。
(2) 人為的につくられたメリット
圏央道の割引にしても、道の駅途中退出にしても、また宣伝されている事故災害時の途中退出にしても、すべて現行ETCで対応可能なことであり、ETC2.0でなければできないことではない。
つまり、それらはETC2.0のメリットではなく、ETC2.0普及のためにつくられた優遇策なのだ。
これらは「渋滞緩和」「過労運転防止」を謳っているが、それを普及目的でETC2.0に限定するのは非常におかしなことではないか。渋滞緩和、安全向上であればすべてのETCを対象にするべきだろう。
(3) 税金・高速道路通行料の無駄使い
殆どメリットのないITSスポット整備費用はもとより、ETC2.0の機器割引キャンペーンや宣伝費等の費用は通行料から賄われている。意味のない施策にこれ以上の浪費はやめるべきだ。
(4) 走行データー収集
ETC2.0による走行データー収集は移動体通信によるそれと比べたら効率が悪い。自前にこだわらず、すでに存在する民間データーを購入するほうが費用対効果は良いのではないか。
(5) 絶対に成功しない商業利用
ドライブスルー、ガソリンスタンドはそもそもノンストップではないので、スイカ等のICカードやおサイフケータイ、ApplePay、クレジットカード等のキャッシュレス決済と利便性に於いて殆ど差がなく、来店客増は期待できない。したがって高額なETC2.0専用ポストの設備投資をする店舗はない。
駐車場はまだノンストップである分目があるが、これも設置費用と来店客増・コスト低減が見合わない。また商業施設利用割引の方法が確立していない。

8.最後に
交通安全、事故防止、渋滞緩和、キャッシュレス決済という非常に耳障りのいいメリットは誰も否定しない。そのせいかETC2.0に疑いを抱く人は少ないが、その実態は以上のようなものなのだ。
これが民間企業であればとっくに撤退、精算しているだろうが、官主導であるがためにいつまでもやめる事ができないのではないか。
私はノンストップ料金収受器としてのETCを否定するものではなく(もっと機器は簡易的なもので良かったし、専用カードではなく一般クレカ紐付けで良かったとは思っているが)、むしろ100%義務化にして完全無人化により収受コストを大幅に下げ、通行料値下げを行うべきだと思っている。そのためにETC機器レンタル制度等、低頻度利用者への救済策等に費用をかけるのは賛成する。
だが意味のないETC2.0普及への出費は今すぐにでもやめるべきだ。


久々にみるETC2.0ニュース記事のなんだかなぁ

2018年03月22日 | ITS
東洋経済ONLINEに「ETC、意外と知られていない最新進化と歴史」という記事が掲載された。

自動車ジャーナリストの筆者の方は、今までのETCの歴史について極めて正確な記載をされているのでETCについてはかなりお詳しいと思われる。
しかし、ことETC2.0のサービスのこととなると急に国交省寄りのセールストークのような内容となってしまうのはどうしたことか。

と思って読んでいくと、ITS推進室長とのインタビューが行われており、ETC2.0を活用した自動運転への発展まで話が広がっている。

ここに記載されているETC2.0のサービスは4つ。渋滞、災害の再入場等、いわゆる「一時退出・再進入の料金同一化」、渋滞を避けたルートを走行した場合の割引、駐車場での料金決済、フェリー乗船時の手続き簡素化。フェリーは通常ETCですでに行われているが、事前登録の簡素化の意味だろう。

これらのサービス、本当に魅力的なのか?
そもそもまだ始まっていないし、もっと重要なことはETC2.0でなくとも技術的には通常ETCで実現可能だということ。
「一時退出・再進入の料金同一化」は昨年の中央道土砂崩れで一般ETCに適用されたし、駐車場料金決済も一般ETCで可能。現在行われている実証実験も2.0限定ではない。

また、ITS推進室長との話で出てくる自動運転との関係だが、通信ポストとしか通信できないDSRCが自動運転に寄与できる部分は殆どないのではないか、と私は考える。

大型、乗用、二輪をお持ちの筆者はすでにETC2.0を使われているようで、記事中に「二輪車ではナビゲーション装着へのハードルが高いこともありETC2.0の恩恵を受けにくい」と書かれているが、はたしてご自身が「経済的負担を伴う」とおっしゃるETC2.0からどのような恩恵を受けているとお考えなのだろうか?

最後のセンテンスでETCは「料金自動収受機能から情報提供サービスが受けられるDSRC車載器へ、そしてさまざまなサービスが追加されるETC2.0として出世魚のように進化を遂げた」と書かれているが、なんだかなぁ。

ETC2.0関係者の方に質問

2018年03月19日 | ITS


これは純粋な質問なので、ETC2.0 運営関係の方がご覧になっていたら教えて欲しい。
ETC総合情報ポータルサイト「Go ETC」のなかの、「ETC2.0の新サービス」というページ、今後実施が予定されているサービスとして「一時退出・再進入の料金同一化」がある。(掲載図は同サイトから切り取りました)
給油で何箇所か実験されているのは承知しているが、事故などで実施されたという話はまだまだ聞かない。

一方、昨年夏中央道の土砂崩れによる通行止めの際は、通常ETCであっても退出、再入場料金同一化の処置がされたと聞いている。
NEXCO中日本のホームページをみても一般的に通行止めの場合はそのような処置が取られているようだ。

で、質問はなぜGo ETCのサイトにはそれがETC2.0専用のサービスのように書かれているのか、ということ。ETC2.0でなくてはできない技術的な理由があるのなら教えてほしいが、実際には災害通行止めでは通常ETCでも適用すると言っているのだから、どうも技術的には問題がなさそうに思える。
また、世論を考えると災害通行止めの際に本当にETC2.0だけを割引対象にできるとは、私は到底思えないのだ。
もし実際にはETC2.0だけにそんな特恵を付けることができないとしたら、これを今後予定されている新サービスと称するのは通常ETCより一万円以上高額なETC2.0の誇大広告のようなものではないのか?

退出、再入場料金同一化をETC2.0だけに限定しなくてはならない物理的、技術的な理由があるのか?
もし物理的、技術的な理由がない場合、ETC2.0だけに限定することなんて本当にできるのか?

もし筆者が寡聞にして知りえない理由があるのであれば是非教えて欲しい。

ETC 駐車場運用の限界

2018年03月01日 | ITS
ETC2.0普及促進研究会は昨年来ETCによる駐車場ノンストップ決済の実験をしている。
ETC2.0普及促進研究会が行っているものの、これはETC2.0限定ではなく通常のETCでも対応可能。

ETC2.0の宣伝文句には様々な決済に使えるようになるとあるが、ドライブスルーとかガソリンスタンドは現実的でない。
しかし駐車場ノンストップ決済は確かに便利なので実現の可能性は十分に有ると思う。
従来ETCカードは高速料金決済にしか使えず、車載機器のID番号とETCカードとは別のクレカをひも付けるというやり方で実験が行われてきたが、これは全く普及しない。
クレカ紐付け申請が必要で、わざわざそこまでして使おうというユーザーがいなかったということだ。

それを受け、ネットワーク型ETC決済という仕組みが開発された。詳細の説明は省くが、従来のETCとETCカードをつかい路側ポストによる課金が可能になったので、ハードルはかなり下がったといえる。

しかし、それでも駐車場での利用が拡大してくという気配はない。なぜか?

まず、当然駐車場側に投資が発生する。ETCでノンストップ決済が可能になるとその投資を回収する売上増もしくはコストダウンが見込めるか?という単純な経済の問題だ。
ノンストップで払えるから遠いけど駐車しよう、という人はいない。2軒並んでいたらノンストップを選ぶ人はいるだろうが、まあその程度の需要増。また完全に無人化できないのでコストダウンもあまり期待できない。

次に問題となるのは商業施設との連携による割引処理。
それをしようとするとノンストップではできない。事前精算機に車両情報(つまりは駐車券)と割引券を入れる等の手間が必要となる。
商業施設のレジと駐車場をオンラインで結び、登録ナンバーやETCカード等の情報を支払い時に伝えて割引処理をする方法もあるが、設置費用がかかりユーザーも面倒。

唯一ノンストップで割引できる方法は、ETCカードの親カードで買い物をし、請求額から割り引くということしかない。
しかし、ETCカードの親カードを通常の決済に使っている人は限られるのでこれもあまり好まれない方法だろう。

ということで、理屈では絶対に普及しそうなETCによるノンストップ支払いもかなりのハードルがある。
駐車場のノンストップに関しては、ナンバー読み取りとスマホ連動による支払い、割引処理のほうが導入コストが安い(実際中国では始まっている)と思われ、ETCの将来はあまり明るいものとは言えないようだ。

とは言え、商業割引等がない空港など公共施設の駐車場ではどんどん採用して欲しいと思う。
また中国を引き合いに出して申し訳ないけど、中国では北京、上海等の空港駐車場はETC決済対応となっている。

いずれにしても、計画からすでに20年。その間にスマホが普及し専用車載器をつかう必要はどんどんなくなってきている。
とくにドライブスルーなど、スマホで十分だろう。
ETCの商業利用は普及する前に新しい技術が出てきてしまったわけで、もうきっぱりと高速道路料金支払専用で生きていく方がいい。

車は「走るスマートフォン」になんかならない

2018年02月07日 | ITS
このMonoistの記事のタイトルにも有るように、将来車はコネクテッド・カーとなり、走るスマートフォンになるのだ、という主張がある。

将来すべての車が通信でつながるということはありうる話だ。特に完全自動運転車はコネクテッドで管理されなければ成立しない。
だからといってコネクテッドだから車が消費者にとってのスマートフォンのようになるのか、というと非常に大きな疑問が残る。

コネクテッドカーの記事には、車両が通信でつながると新しいビジネスの可能性が生まれる、と必ず書かれているが、具体的なサービス内容については曖昧な表現になっていることが多い。この、「走るスマートフォン」という表現自体かなり曖昧だ。
この記事にある「スマートフォンが引き合いに出されるのは、使う人に合わせて自由にアプリを追加したり減らしたり、設定を変更したり、ソフトウェアのアップデートで性能を向上することなどを実現するためだ。」という文章が具体的に何を意味するのか、分かる人はいないだろう。

「走るスマートフォン」は車に乗ってるときしか使えないけど、「走らないスマートフォン」(要は、スマホ)は車に乗っていないときでも使える。どっちが有用かは言うまでもない。

車というのは移動手段でしかない。
消費者は移動手段に何の夢を求めるのか?と考えれば自ずと答えはわかる。必須となるのは音楽やニュース等の音情報と道案内。これらはすでに存在している。
レストランやホテル検索と予約なども有るだろうが、それはスマホでもできる。というか、実際のところそういうシチュエーションなんてめったにない。

すでにAppleのCarplay等、スマホ等の通信機器を車につなげることは可能になっている。しかしつながる相手はあくまで車のエンターテイメントシステムだけ。わかりやすく言えば車のモニターとスピーカーを借りているようなもので、これをコネクテッドとは言わない。それしかできないというよりは、それしかニーズがないということだと思う。
一方、今盛んに言われているコネクテッドカーは、その他の車のセンサー、制御系や故障診断系のシステムとつながる事を言っている。
それにより、運転状況により保険ランクを付けるとか、カーメーカーが故障分析をしたりECUを書き換えたりとか、スマホも使えないような緊急事態に自動的に救難信号を発進してくれるとか、盗難にあったときの追跡等ができるようになる。

しかしこれらは一部を除いてユーザーメリットではない。「走るスマートフォン」という表現にはかなり違和感がある。

自動運転やカーシェアの世界では車両管理や道路状況データ収集という意味でコネクテッドは必須となるだろうし、今でもコネクテッドカーがもたらす走行データは様々な分野で活用されている。
しかし、消費者目線でいえばコネクテッドカーにそれ以上の期待をする必要はない。