ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ETC2.0の経緯

2015年04月07日 | ITS
前回のエントリーで、そもそもこのブログを10年近く前に始めたきっかけはETC2.0批判にある、と書いた。
過去記事は相当な量があり、きちんとカテゴリー分けもできていないので、その経緯を簡単に以下にまとめよう。
簡単といってもけっこう長文。かつ、かなり辛口な内容になる。

国交省がETCを普及させようとしたときに、「ガソリンスタンド、ドライブスルー、ドライブインシアター、駐車場等の決済にも使える」「これらの民間の活力を利用して普及する」といううたい文句があった。
これに私は強烈な違和感を持った。その根拠は以下の通り。
ガソリンスタンドやドライブスルーなんて、どっちにしてもノンストップではない。現金、クレカ等に対してどれほどのユーザーメリットがあるのか?ドライブスルーなんて年に何回使うのか?、ドライブインシアターなんて今どこにあるのか?駐車場は確かにノンストップになるけど、割引券等はどう処理するのか?
そして、これが一番の問題だけど、この決済装置を設置して客数が増えるのか?増えなければ誰もそんな投資しないだろう。

これは全く私の予想が正しく、10年たってもこのビジネスは存在しない。正確に言えば、三菱商事系のITS事業企画という会社が始めたが結局会社はなくなり、サービスもほぼ消滅している。

次に国交省は、「カーブ等の先の見通しの悪い場所での事故、渋滞を事前に知らせる」というメリットを出してきた。
これは少なくとも「より安全になる」ことから、誰にも否定できない内容であるが、それを補強するために国交省は首都高速4号線、通称「参宮橋カーブ」での実験を行った。
このカーブは首都高の事故多発カーブとして知られている。
ここに、ビーコンVICSを使って事前渋滞予告を表示させるという実験を行い、国交省は事故が劇的に減少し大いに効果があったと宣伝している。
しかし、これは全くの嘘なのだ。この実験に2か月先だって、首都高はこのカーブ途中の大きな路面段差を修復している。同時にカーブ手前に減速を促す路面標示を設置した。そして、実際に事故が減少したのはこの「2か月前」からであり、ビーコン設置期間との相関は見られなかったのだ。
ところが、国交省はむりやり「参宮橋で効果が実証された」と言い続けた。

そして、国交省はこの参宮橋の結果をよりどころに250億円のETC2.0路側通信機の設置予算を通過させ、高速道路と主要道路に設置を行った。
この路側機はETC2.0専用の受信機がなければ使えない。
受信機があっても、せいぜい「渋滞情報がVICSより広域でわかる」程度のメリットしかない。それもすでに民間のプローブによるリアルタイム渋滞表示、経路誘導が普通に始まっている中、決してキラーコンテンツではない。

さらにもう一つ。ETC2.0ならSAや道の駅の専用駐車スペースでナビ画面に情報提供が行われるという施策を実施した。
しかしこれもかなり非現実的だ。普通の人はそんなとこに止めて画面で情報みるより、さっさと施設の中に入るだろう。
この設備は今や廃墟のようになっていると聞く。

だからETC2.0専用受信機は全く普及しない。普通のETCよりも1万円以上高価で、それに見合うメリットがよくわからないんだからそんな商品が売れるほうが不思議だ。それまでの「ITSスポット対応車載器」から「ETC2.0」という名称に変更してリローンチを図り、3回にわたり5000円補助キャンペーンを実施したが、それでも普及しない。←いまここ。

はっきり言って、こうなるのは100%予測していた。
私は自動車用品関連の仕事をしているが、実際ITSに関しては「中の人」ではない。そんな私でも簡単に予測できた失敗をなぜしてしまったのだろうか?

この分析はまた時間があったら書きます。