ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

車こそがIoTの本命なのか?

2016年05月24日 | ITS
車+通信、かつてテレマティクスと呼ばれ、いまはコネクテッドカーと呼ばれるものについて、多くの自動車評論家やIT関係者が「既定路線である」「2010年にはほとんどの車がネットに繋がる」等といっていた10年ほど前、私はこのブログで「自動車業界最大のバブルだ」といった。
そして、少なくともインフォテイメントと呼ばれる社内エンターテイメント・情報系分野において、そのバブルははじけはしないが粛々としぼんでいる。

我が国ではトヨタのG-Book、日産のCarWingsが最も大きなテレマティクスであるが、どれほどの人がその名前を知っているか?
これらのサービスはすでに陳腐化しており、ブルートゥースによるダイアルアップ方式であるためiPhoneをはじめとするスマホでは使えない。
スマホで使えないサービスなんてありえないため、トヨタはT-ConnectというWifiテザリングでスマホと連携する新サービスを開始したが、日産に動きはない。どうも日産はこれ以上拡大する気はないように見える。これは賢明な選択だろう。

トヨタT-Connectにしても、どれだけのユーザーがその名前を知っているか?ウィキペディアのページすらない。(G-Book内に記載あり)

テレマティクスが離陸しないだろうと予測した理由は過去に散々書いたのでここでは繰り返さないが、簡単にいえば
・対価を払うほどの利便が提供されない
・携帯で個人がネットに繋がっているのに車がつながる必要がない
ということだ。
簡単な例話をする。G-BoookやCarWingには観光情報チャンネルがある。近くの立ち寄り温泉の検索や情報が入手できる。確かに運転中はスマホをいじれないからナビ画面で案内されれば便利だろう。しかし、一人でドライブして立ち寄り温泉に行く人がどれだけいるか?普通は同乗者がスマホで検索する。仮に一人だとしても、休憩中にゆっくり考える。その時使うのはスマホだろう。

そんな状況でも、コネクテッドカーはいまだに将来の「既定路線である」とする論調を多く見かける。なぜか?

一つにはテレマティクスのころにはなかったIoTという概念があり、車こそIoTにもっとも適したTなのではないか、という単純な発想なのだろう。
そしてそこに自動運転などの新しいテクノロジーが複雑に絡んでくる。

しかし、本当にそうなのだろうか?

現在の自動運転はすべてスタンドアローンの制御となっている。しかし将来すべての車が自動運転になった場合は車と車の通信が必要になるだろう。それによってたとえば「交差点でどちらも止まらずにすれ違う」ことなどができるようになり、交通は劇的に変化する。しかしそれはかなり先の話だ。

それを除けば、実は車+通信の世界はテレマティクス時代から何ら変わっていない。
むしろ、スマホの発達により車がつながる必要はどんどん薄れている。

どうしても車とつながっていないと実現しない機能には以下のようなものがある。
・盗難車追跡
・事故時の緊急自動通報
・遠隔故障診断
・遠隔操作(空調、ドアロック等)
・運転状況把握

レクサスやランクルに乗っていない限り、自動車盗難は身近な話ではない。また事故時の緊急通報も「自分には関係ない」と思う人が多い。
遠隔故障診断は、だからどうする、という類の話。遠隔で故障理由がわかっても結局はレッカーで工場に運び込むことになる。
遠隔操作もエンジンスタータは寒冷地で需要があるだろうが万人が必要なものではない。
唯一運転状況把握はそれに保険料がひも付き、運転者に割引インセンティブがあれば実現するだろうが今のところはビジネスモデルが構築できていない。

もう一つの議論として、すべての車に通信装置を装着し交通流を国が管理し、さらに交通違反を取り締まるというのがある。交通違反だけではなく、移動をすべて官が把握するということで国家セキュリティ的にも意味がある。

しかしこれは運転者になんのインセンティブもないので、国が強制力をもって装備しなければ実現しない。その過程で国の管理に対する反対運動が起きることは間違いない。
ナンバープレート読み取りのNシステムですら、国はその存在を正式には認めていない。

実はETC2.0は車両の運行履歴をサーバーにアップロードする。利用目的は交通流のビッグデータ取得であり、個々の車両は特定できない仕組みになっていてプライバシーは守られるが、それについては積極的にアナウンスされていない。割引等のインセンティブを表面に出しているが国交省が執拗に普及促進をする真の理由はそこにあるのではないか思う。

なので、すべての車に通信装置を埋め込み個人管理するというアイデアはまず実現しないだろう。私もそこまで国に管理されるのはお断りだ。

首都圏での新料金効果で圏央道は3割増加というけれど 

2016年05月24日 | ITS
この4月から導入された首都圏の新料金に対する評価を国交省は公表した。乗りものニュース
それによれば、圏央道の通行車両は3割増加し首都高の通過車両が減少。結果として首都高の渋滞緩和に効果があったとしてる。

今回の料金改定は、基本的には従距離制をベースにしているが、同一入口、同一出口であれば経路にかかわらずその区間の最廉価料金を適用する(首都高経由のほうが高い場合は除く)という特例により、圏央道を迂回しても首都高経由をしても料金が変わらなくなったことから、渋滞のない圏央道を使う車が増えた、ということ。
まあ、言ってみれば当然だし、それはそもそもそうすべきものだろう。

迂回で別ルートを走る車は長い距離を走りたくてそのルートをとっているわけではない。それに従距離料金を適用されてはかなわない。さらに言えば首都高速への流入をさせたくないのが行政側なのであればなおさらのことで、そうするのが当然だとしか言いようがない。

逆に、渋滞緩和に協力して余計に燃料代を使っているわけだからむしろ安くしてもいい。

そこで用意されているのが圏央道迂回ルートに対する更なる割引なのだが、それはなぜかETC2.0限定となっている。
これは全く腑に落ちない。

ETC2.0車両であれば道路会社側にメリットがあるならわかるが、料金収受コストもなにも通常ETCと変わらない。
ETC2.0でなければ割引きできない理由はないだろう。

今回のリリースで首都高通行量が減少し効果があったというなら、すべての車両に対して圏央道迂回を更に割り引くべきなのではないか?ETC2.0を普及させたいという理由だけでETC2.0に限定しているとしか考えられない。

ゴールは首都圏高速道路ネットワークの通行量適正化・渋滞緩和じゃないのか?