ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

自動運転 カーメーカーの生き残り戦略

2017年06月25日 | ITS
以前のエントリーで、この先完全自動運転が実現する世界では自動車メーカーのビジネスは大変革を余儀なくされると書いた。簡単にポイントだけ繰り返すと以下の通り。
・完全自動運転の世界では車は呼べば来る、降りれば勝手にいなくなる。
・そうなると車の所有に意味はなくなる。
・全部がカーシェアになると、ブランド選択権はカーシェア業者のものとなる。
・ユーザーが自分で選ばない(タクシーの車種を気にしないと同じ)になれば、カーメーカーはブランドによる差別化ができず価格勝負となる。
・カーメーカーの重要な収益源であるアフターセールスがそっくり消滅する。

こうした状況に対して欧米、特にドイツのカーメーカーは相当な危機感をもって取り組んでいる。自動運転に対して、ここまで将来の状況を想定しているのだ。一方、日本のカーメーカーはどうか?ここまでの危機感は感じられない。

来るべき自動運転に対して、カーメーカーが出来ることは二つ。

一つは車載のハードウェアで圧倒的に優位にたつこと。これはグーグル等のIT系にはできない。
車載ハードウェアでの自動運転は、精密3D地図データとレーダーやカメラ等のセンサー技術による自動運転。もちろんこれらに通信やインフラを組み合わせていくわけだが、インフラ協調による自動運転はカーメーカー主導ではなく行政主導になる。カーメーカーはその辺をよく理解していてあくまでメインは個々の車両に装備されたデバイスによる自動運転を徹底的に進めている。そして、来るべき完全自動運転時に最善の選択肢となる車両を提供出来るように準備を進めている。

もう一つは、カーシェア業者になること。自動運転の中央制御オペレーションとカーシェアのシステム全般をカーメーカーサイドで運営できれば、車種選択権を他人に渡さずに済む。ダイムラーが早い時点でCAR2GOのフリーフローカーシェアを始めたことや、カーメーカーがUBER等との提携を模索するのもこの辺の事情だ。

さて、では日本の政府とカーメーカーはどう考えているのだろうか?
上記の通り、自動運転とシェアリングは切っても切り離せないが、残念ながらシェアリングに関して日本は後進国になりつつある。中国ではシェア自転車が大流行し、先日国家戦略としてシェアリングビジネス推進ガイドライン策定を発表した。
一方で日本はといえば、ITSは未だにETC2.0。この時代、路側にポストを設置して通過車両から情報をやり取りするなんてアイデアには全く将来性がない。

カーメーカーにしても、本気で将来的にシェアリングビジネスや自動運転オペレーターになろうという動きは今のところ見えてこない。センサー技術による自律型自動運転車の開発は進めているし、各社シリコンバレーに事務所を設けてIT系との連携も気にしているようだが、私には欧米、特にドイツメーカーほど大きな絵をトップマネジメントが描けているとは思えない。