中国の家具大手居然之家(イージーホーム)が大塚家具への投資を行い、大塚家具は中国とのビジネスで活路を見出すというが、これはどうしてもピンと来ない。実際は居然之家の上場前という事情からまずは同社が中国系の出資先を紹介したということだが、これもなにかそれ以上の事情があるように感じる。
大塚久美子社長は中国市場に対して「いままで日本の家具の中国への輸出はほとんどされていない。このチャンスをいかす」、また居然之家側は「裕福層への日本製高級家具の販売(含むEC)を狙う」ということだが、そんなマーケットは本当にあるのか?
マーケットがあればすでに誰かがやっているだろう。
1.「大塚の家具」を買う中国人がいるのか?
そもそも日本においてすら高級家具といえば欧州ブランドであり、日本製ではない。高級家具ブランドといって思い浮かぶのはカッシーナとかアルフレックスとかであり日本ブランド名は思い浮かばない。
中国裕福層がもとめるのは高価な木材を使用した中国伝統家具か、日本と同じようにやはり欧州の家具ということになるだろう。
さらに言えば、中国にも欧州の数百万するようなリビングセットを買う超裕福層はいるが、決して多くない。リビングセットは車と違い超高級品かどうかは見た目ではわからない。さらに、街を乗り回すものではない。富を誇示するお金の使い方としては効率が悪いので、「普通の」お金持ちは見た目が豪華な中国製の家具を選ぶだろう。相当な粋人でなければ輸入家具にお金をかけない。
そもそも大塚家具にはほとんどPB商品はなく、要するに「大きな街の家具屋」だ。自社プライベート商品がない小売商が海外に出ていって成功するためには「海外にも通用する小売ブランド」がなくてはならない。例えば百貨店ブランドなど。しかし大塚ブランドは海外では無名だ。
2.中国のインテリア関連市場
もう一つの懸念は、中国の内装市場の特殊性。
提携先の居然之家は内装関連の総合ワンストップショッピングを標榜する大型小売店。中国で新たに家を買うと内装工事がまったくされてないマンションの部屋を買うということになる。床材も厨房器具もトイレもついてない。それをターゲットにしてる業態だ。
自分で住む場合は予算内で自分の好みの内装に仕上げるが、すべての内装工事をしなくてはいけないので家具への支出は制限される。
投資用に購入する場合でも賃貸するためやはりすべての内装、家具をそろえることになる。中国ではマンション賃貸は家具付きが普通。当然、特に高額な家具セットを導入することはない。
したがって、高額なリビングセットというものはこれらを超越した一軒家をもつ超裕福層しかターゲットにならない。
3.ニトリの状況
現在中国で日本の家具としてはニトリが店舗を展開しているが出店ペースは落ち、売上公表もなくかなり苦戦しているように見える。とくに家具が売れているというイメージはなく、売れるのはその他雑貨関連だろう。
筆者が中国のニトリを訪問した時に気になったことは、日本で売られてるものをそのまま販売していたこと。ソファやダイニングセットなどは中国人からすると小さすぎ、奇妙にすら感じる。また中国人にとっては日本のダイニングの椅子は低すぎる。こうした部分のローカライズができなければ海外市場に参入する資格はない。
大塚家具も、日本の家具をそのまま中国に売ろうとしたら確実に失敗する。
4.残された可能性
どうにも将来の絵が描けない居然之家とのコラボレーション。唯一筆者が考えられる可能性は裕福層向け和室内装およびその家具販売だと思う。
最近結構和風インテリアが流行っている。ニッチなマーケットではあるが、その程度しか思い浮かばない。
大塚家具+中国市場はマーケティング的に導き出された生き残り戦略ではなく、単にいま投資に意欲的なのは中国しかいない、という事情からのもの。前途は多難だ。
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