もう多くの人はご存知だと思うが、中国ではスマホQRコードによるキャッシュレスがこの数年で急成長しているわけで、ハイテクにからきし弱くやっとスマホを使い始めた日本の50代駐在員のおじさんたちもほとんどキャッシュレスマンになっている。多分日本にいたらコンビニでスイカも使わないような人たちなんだけどね。
これに対する日本のメディアや評論家、有識者の論調は判で押したように以下のポイントに集約されているんだけど、これがまあトンチンカン。
【よくある論調A】 中国でキャッシュレスが急速に発展したが日本では不要な理由
1.中国は偽札が多く、貨幣に対する信頼がないからキャッシュレスが急速に広まった。
2.中国はスリや強盗が多く、現金を持ち歩くのが危険
3.日本のようにコンビニにATMがなく、現金を引き出すのが不便
4.日本では以上のような不便がないからキャッシュレスは必要ない
正直なところ店舗決済に限れば利便性は現金にまさるものはないわけですよ。すべての商店で使えるし、お釣りはお店が計算して渡してくれる。
スマホを忘れても大丈夫だし、電波やバッテリーの心配もない。キャッシュレスは「財布忘れても大丈夫」だけど現金は「スマホ忘れても大丈夫」。どっちもどっちだ。
ではなぜ中国で急速に発展したのか?上記の1~3は、実は在住者の生活感からは全くピンとこないんですね。
確かに偽札は有るけど決して頻繁に遭遇するわけではないし、スリは確かに日本より多いけどそれも理由ではない。スリが怖いのは現金よりパスポートやカードでしょ。
ATMは町中なら銀行が沢山あるからむしろ日本より探しやすいかもね。違う銀行でおろしても手数料取られないし。
急速に発展した理由はまったく違う理由なんです。微信、支付宝という2つのキャッシュレス決済プラットフォームが通販決済、自転車、モバイルバッテリ、マッサージ等のシェア、自動販売機、タクシーの配車から支払い、レストランの予約、注文から支払い、高速道路支払い、駐車場、出前の支払い等、すべての生活の場面で利用できるから。
こればっかりはここで生活してみないとわからないでしょう。
はっきりいって店でのレジ支払いはその生活の中の一部分でしかないんです。おそらく、日本の論調はそれを実感として理解できていないし、XXPAYが乱立するのもそこがわかってないから。
乱立するXXPAYは間違いなくどれも発展せずに終わるし、便利どころか消費者にとっては面倒なものでしかない。ポイントカードと同じ感じだよね。あれ、ビックカメラはポイントカード持ってたっけ?ってなもんで。
【よくある論調B】 日本ではQRコードは普及しない、もしくはフェリカのほうが優れている
1.せっかちな日本人はスマホでソフトを立ち上げる手間を容認しない。まだレジで混乱する。
2.すでに交通カード系フェリカが先行しており、決済スピードやセキュリティはこの方が優れている。
まず、QRコードは手間がかかるというのは実はそうでもない。ホーム画面のショートカットから指紋認証であればあっという間。(実際中国人もかなりせっかちだよ)
レジでも混乱はある程度たてば問題なくなる。実際中国ではすでに確実に現金払いやカード(PINインプットとサイン)のほうが時間がかかる。但し、店によってアプリとその操作が違うんであれば確かにそのとおり。あれ、これはどこ押すんだっけ?ってなっちゃう。だから乱立XXPAYはだめなんです。
交通カード先行は確かに事実だし、決済スピードも速い。でも小売店への機器導入が進んでいないのも事実。交通系カード事業者が腹をくくって読み取りレジをばらまけば間違いなく日本はフェリカのキャッシュレス国になるけど、どうやら交通系の各社さんにはその気がないようで。(これ本気でやったら相当なビジネスチャンスだとおもうんだけどね)
さらに言えば、それをしたところでレジ支払い以外への拡張が期待できない。繰り返すけど、キャッシュレスはレジだけの問題ではないんです。
QRコードならパソコン画面から支払いできるが、フェリカはできない。シェア自転車全部にフェリカリーダーを付けることもできない。読み取り機器投資がある以上は完全な生活に溶け込むエコシステムの構築はできない。
中国のキャッシュレスは生活のすべての局面にシームレスに入り込んでいる、という視点がないとまるでトンチンカンな議論になっちゃう。
しかも突然では無く、じわじわと感度を失っていく。
完全に読めない時にはもう保証期間外という…
しかも機器固有の紐付けハードだから、おサイフケータイを機種変した時の煩わしさは以下略。
ご指摘の点に加えて、店側が手数料を取られないことと専用機器が不要で格安スマホがあれば導入できることも大きな理由だと思います。
QRコードなら電源いらずでどこにでも貼れましすね。