H5年11月
登山口近くの1000m道路迄は順調に来られたが三ツ石林道入り口が見つからず
1000m道路を行ったり来たり
一度通った少し先で浄化槽工事現場の人達に尋ねると地図を見て
「今、居る所がどうもそうらしい、もし違ってたら戻ってくればいいがね」と明るく笑った
45分間のロス
(略)
平坦な林道を進むと前方に水量豊富な赤褐色をした滝が流れ落ちていた(赤滝)
近づくと直ぐ脇に岩屋が有り中には二体の真新しい仏像が安置されている
この滝の色は鉄分を含んでいる為、空気に触れるとこの様に赤くなるらしい
赤滝を後にし次に見たのが血の池
湿地帯となっているので池と言うのはこの辺りを指すらしい
尚も進むと濁川の源泉地に出る
穴の奥から流れ出る清水は確かにここでは未だ透明だった
一見、山男がもう一人の如何にも山慣れない男性に水を飲ませていた
「砂糖を入れる事により炭酸飲料の様になるんですよ、飲んでみますか?」
確かにサワーの様では有ったが・・・そう沢山は飲めない・・・かな!
そう言った一見 山男は教師、もう一人の男性は新聞記者で
この辺りをルポして回っているのだそうだ
そこから漸く山登りらしくなり右に浅間山を木の間越しに、左に石尊山を眺めながら
落ち葉を踏みしめ歩くと時々土がむき出しになり当たり前の話だが急に静まり返る
鳥の囀りさえ聞こえない
もうこの辺りは紅葉の時期は当に過ぎて枯れ葉の季節を迎えていた
石尊山を半分ほどトラバースした所で砂地の広場に出ると
ここからは八ヶ岳、西上州・山梨の山々の眺めが何とも素晴らしかった
石尊山へは、ここから東に向かって直登するがススキに覆われた山道は
霜柱が立ち冬到来を告げている
山頂に着くと血の池で会った二人が居た
追い越されたはずも無いので聞いてみれば他のルートから来たと言う
どうやら血の池から直登する道が有る様だ
話はそこそこに360度の展望に目を奪われる
槍ケ岳、乗鞍、八ヶ岳、左に目を転ずれば上州、山梨の山々が波の様に重なり合い
瑞牆の石群も金峰山の五丈岩もはっきり確認する事が出来た
そして何と言っても目の前にデッカイ浅間山
此方側からの眺めは横綱の風格、さしずめ剣ヶ峰とここ石尊山は
太刀持ちと露払いと言ったところか
多分このカメラでは写らないだろうと思いながら槍ケ岳に向けてシャッターを切る
先程の二人「ここは穴場なんですよ」と言いながらリュックからリンゴを出し
私達に分けてくれた
この先生「中山道一人旅」と題して紀行文をつい最近、書き終えたらしい
この辺り、熊やカモシカが生息していて、剣ヶ峰でテントを張っていたら夜
テントのすぐ脇を通り肝を潰したという友人の話や浅間山が登山禁止の為
学校行事として登る事は出来ないので余暇を利用して生徒と登って来た話
実は今、居る場所も禁止区域である事・・・等々色んなエピソードを話してくれた
(略)
下山は此処に来て見つけた「座禅窟まわり」で帰る事にした
余り通る人も無いらしく道が解りずらい
誰が付けてくれたのか手拭いの切れ端を追って歩きやすい所を選んで下ったが
何しろ藪の中、倒木も多い
暫くはその手拭いに感謝しつつ下るが使用する手拭いも尽きたのかルートを示して
くれるものが無くなってしまった、勿論、道らしきものも無い
雄さんが見当をつけて進むと直ぐ横を、並行して微かな踏み跡らしきものが
下っているのを見つけた。しかし、それも束の間、また道が消えてしまった
「後から山頂にやって来た4人のパーティが真似して降りて来なければいいが」
雄さん、ボソリとつぶやく 熊の事も時々よぎった
四苦八苦しながら急坂を落ち葉に足を取られながら下ると前方に立つ
白い標識が目に止まった、標識目掛けて駆け降りると
座禅窟と書かれた文字の下に矢印が今、来た方を指していた
20mほど引き替えし岩と岩の間から垂れているロープを攀じ登ると30人くらい坐れそうな
岩屋が有り仏像が一体、安置されていた
そこから20分ほど下ると朝、通った林道は目の前
家に帰り登山書を読むと「座禅窟への道は唐松の倒木が多く荒れている」と有った
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駐車場に戻り三ッ石林道へは戻らず浅間谷林道を通ってみる事にした
途中「浅間山登山口」と言う標識が目に止まった
以前はこの辺りもリュックを背負った登山者が列をなしていたのだろうが
登山禁止となった今、登る人も絶え草が生い茂っているばかり
ふとその時、新聞記者が言っていた事が頭に浮かんだ
「林道までよく車で来られましたね。営林署で鍵を借りて来られたのですか?
この林道は時間になると、全て閉鎖されてしまうんですよ」
尚も車を走らせると不安は的中 仕方なく元来た道に引き返したが林道というものは
何処も同じ景色に見えて途中で間違えて行ったり来たりしながらも、どうにか
駐車した場所に戻る事が出来た
朝、入って来た所も工事人が帰ってしまっていたらアウトだ
やがて工事現場が見え工事人の車を確認しホッとした想いで1000m道路に入った
ホッとして改めて周囲に目をやれば赤や黄に染まった木々があり
信濃追分まで来ると諏訪神社の楓が一際、目をひいた
朝、通り過した旧中山道通りに車を停め暫く散策 堀辰夫文学記念館の横を通りながら
「堀文学は女性っぽくて、どうも好きになれない」そんな事を言っていたっけ
帰路に通った旧碓氷峠は紅葉のトンネル道
実は来る時に寝ていて見せて上げられなかった紅葉を見せたいと
新碓氷峠を通らずに、わざわざ又、旧道を走ってくれたのだ
アスファルトの道を猿が悠然と歩いていた
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