たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

思い出に残る山(37) 浅草岳 「新潟県」

2019年08月05日 | 心に残る思い出の山

 平成8年10月10日

登山組11名  釣り組3名

 

 前夜、仕事の打ち合わせが有ったりで家を出たのが21時半  

大自然の中に溶け込んでしまいそうな小さな無人駅を右に見て

浅草岳登山口の広い駐車場に着いたのがちょうど24時  

一組テントを張った登山者が未だヘッドランプを点けて夜を楽しんでいた

見上げれば満天の星 天の川も鮮明だ   直ぐにテントを設営 雄さんは車で私はテントで睡眠を取った

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5時半起床、辺りは未だ暗かったがボチボチ登山者の車が到着し始めた

仲間が到着したのは6時半だった  「戸部ちゃん!今日は晴れたね!」雄さんが皮肉る

俺は晴れ男だと豪語するが燕岳で2日間とも台風、雲の平は日本列島を大型台風が直撃したために中止

彼は嵐を呼ぶ男なのだ

作って置いた「けんちん汁」を皆に振る舞い7時15分出発した

暫くは只見川沿いのブナ林の中、途中2カ所壊れた橋が架かる沢を渡り最後の水場「大久保沢」「熊の爪痕

手分場→熊狩りの時、ここから左右の沢に入る」と呼ばれる所を過ぎると

左に鬼ヶ面(おにがつら)の荒々しい岩壁が樹間に見えてきた

朝の斜光を受けて山ひだの陰影がクッキリ刻まれその沢筋を雪渓が張り付いている

紅葉の衣を纏った浅草岳の山頂は頭上に高いが鬼ヶ面の厳つい形相と相まってこちらは穏やかな山容だ

振り返ると田子倉湖が十字の形で輝いていた  随分、高度を稼いだと実感できる場所だ

青さんが「戸部ちゃんは陸上の選手として活躍した沖電気の星と言われた男」と言った

「今や沖電の星も星屑!」と冗談を言うと「今の言葉はビデオにしっかり録音されているから」と大野さん

当の本人は、そんな事を言われているとも知らず今どこを歩いている事やら・・・

岩壁を滑り落ちる滝を右に遠望しながら展望台までやってきた

鬼ヶ面は間近に一層迫力ある姿で迫り遠く先日登った八海山が懐かしく望まれる

その左は中ノ岳、駒ヶ岳だ  近くに居た登山者が荒沢岳と燧ヶ岳を教えてくれた

下を見ると田子倉湖がまた一歩遠のいた

展望台で心地よい風を受けたのも束の間、この先またもや痩せ尾根の急坂になる

浅草岳は目の前に迫って来てはいるが未だまだ遠い、相変わらず頭の上に在る

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「桜井さん、魚の連れ具合はどうですか?」 青さんが下に居る釣り組と盛んに交信している

「釣れて釣れてどうしようもない」と下は下で楽しんでいる様だ

剣ヶ峰への痩せ尾根は五葉松とのコントラストが見事で今までの疲れを一気に解消してくれる様な場所だった

「この一角をそのまま自宅の庭に据える事ができたらなぁ」 思う事はみな同じだ

相変わらずの痩せ尾根をいったん下って再び背の低くなったブナ林に突入

熊合わせ」「重右ェ門岩」を廻り込んで、いよいよ山頂への急登になる

 登って来る間は、それ程とも思わなかったが山頂はこぼれ落ちそうな混雑ぶりだった

大半が比較的 楽に登れる五味沢コースから登りあげた登山者なのだろう

記念撮影も順番待ちの山頂は山座同定する事さえままならない

押し出される様に西側の前岳との鞍部に移動

 (後方の山は守門岳

周辺一帯のウネリは小さな池塘の点在する湿原となっていて木道も敷かれている

が、木道を歩く者は殆どいない

ここも山頂を押し出された登山者がジメッとした草地の上にシートを広げ陣取っている為

私達は用をなさない木道に腰を下ろし先ずはワインやビールで登頂の祝杯をあげた

(略)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

下山は鬼ヶ面の稜線を歩いて帰りたいと内心思っていたが、ここがグループ山行のままならないところ

浮石に足を取られ赤土の付いた岩に滑ったり蛇に何度か脅かされたりの山道を

半ば駆け足状態で下り「鬼ヶ面眺め」でもう一度、浅草岳の素晴らしい景観を前に後続組を待った

 大分、経過したが何時まで経っても来ない  後から解った話だが後続組にアクシデントが発生していたのだ

山平のママが岩稜帯の下りに掛かった時、岩と岩の間に出ていた木に足を取られ一回転してしまったのだ

幸い飛んだ眼鏡も見つかり怪我も無かった

三人の付き添いとしてOKした戸部ちゃんは、そんな騒ぎの中、その場におらず

どうしたのかと友部さんが引き返してみると気持ち良い顔で寝ている戸部ちゃんを発見

足が攣り休んでいる内ウトウトしてしまったらしい

ブナの原生林に入り更に高度を下げた時、先を行っていた青ちゃんがいきなり林の中から

キノコを見つけたと興奮しながら出てきた

苔むした倒木にナメコが可愛らしくはり付いている 私は思わずカメラを向けた

キノコ採りは青ちゃんと雄さんに任せ私、大野さん、城田さん夫婦は最後の下りをユックリ楽しんだ

2時下山 後続組が到着したのが3時を廻っていた

 

 

 下では釣り組がカレーうどんを作りバーベキューの用意をして待っていてくれた

そこで聞いたのが後続組のハプニングだったのだ

しかし私達中高年として注意しなければならない事は十分な睡眠と万全な体調

決して無理をして山に挑むべきでは無いという教訓を受けた今回の登山であった

浅草岳は朝4時前に家を出発して登る山ではないのだ

 締めくくりは国民宿舎、浅草山荘近くの「洞窟温泉」で山旅の疲れを癒し

私達はここで皆と別れ家路へ向かった

 (本日もコメント欄を閉じております)