新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

2月10日 その2 トランプ大統領対NORDSTEOM

2017-02-10 08:45:03 | コラム
NORDSTROMは良い百貨店だと思っていた:

ここでは特にトランプ大統領の批判をする気はない。ただ、あれほど信用していた百貨店を批判されたとはと感じただけのこと。

既に報じられていたようにノードストロム(ノードストロームと表記する向きもあるようだ)はスエーデン人が起こした店で、アメリカ西北部ワシントン州のシアトル市に本店がある。私にとっては長年親しんだ店で、品揃えも良いし、店員の対応のアメリカの小売業としても優秀だと評価していた。元はと言えば靴屋から発展しただけに、その取り扱いブランドも素晴らしかったが、その売り場の店員たちの対応も優れており、私が在職中に履き潰した数多くの靴の80%以上はこの愛称「ノーデイース」で買っていたものだった。

何故履き潰したというのかは、何分にも頻繁にアメリカと日本を往復し、言わばアメリカ中を飛び回り歩き回り、日本にいれば国中を来日する者たちと動き回っていたので、従来の革底の靴では長期間は保たなかったと言うだけのこと。その靴売り場の何処が優れていたかと言えば、先ずはサイズを幅広く在庫していた点がある。

それは私のように足が小さくて、メーカーによっては24でも大き過ぎて23.5(アメリカのサイズで5.5=five and a half)ではないと合わないような者には、アメリカと欧州のブランド品だとそのような小さいサイズの靴は置いていない(在庫していない)のだ。その点では比較的東洋人が多いシアトルの本店では、アメリカサイズの5.5でも幅広く在庫しているのだった。

一度はセールの時期に出会って、憧れのスイスブランドの“Bally”の靴の5.5が出ていた。しかし、セールと言っても高価なので躊躇っていると店員は私の腕を掴んで「このサイズが売れることは滅多にない。もう貴方は放さない」と言って、試履(っていうのかな)を勧め、何と隣の靴下売り場から商品を持ってきて「売上げのためにはこれくらいは辞さない」と言って来た。結局はその濃紺の靴を買うことになったのだが、彼が言うには「実は同じデザインでブラウンもあるので、2足纏めて値引きするが如何と勧めてきた。これは謹んで辞退して1足だけにしたが、こういう遣り取りをしたこともあった。

その後この男性店員とは顔見知りの間柄となって、シアトルに入る度には見に行ってはお買い得があれば買ってしまうことになっていた。また2007年9月に家内とともにアメリカに仕事以外で出かけるという珍しいことをした際にも、ノーデイースでNikeのテニスシューズ(スニーカーというのは日本語だと思うが)に気に入ったものがあった。だが、本店には家内のサイズの在庫がなく、他店から取り寄せてホテルまでその日のうちに配達するからという条件で買ったこともあった。アメリカの百貨店ではそこまでやるのだ。

尤も、Brooks BrothersでもBurberryでも、寸法直し等は店に常勤しているtailorが即刻やってくれ、矢張りその日のうちにホテルの部屋まで配達はしてくれていた。工賃はそれほど高くはなかった記憶があるし、ズボンの裾上げは無料だった気がする。アメリカの小売業では案外細かいことまでやるものだ。

そのノードストロムはそもそもが反トランプのワシントン州はシアトルにあるのから、イヴァンカさんのブランドが売れ行き不振だからと言う理由で取り扱いを止めても不思議ではないかなという気もする。それでも、トランプ大統領がそのことをTwitterで採り上げたのは「一寸ねー」と思うのだが。


何を今更「アメリカの対中国制裁本格化」報道

2017-02-10 07:46:11 | コラム
アメリカはオバマ政権下で保護主義政策を採っていた:

ご記憶の方がおられると思って言うのだが、私はオバマ政権がTPP参加を言い出す前から、商務省(DOC)がアメリカ製紙業界の請願を受けて慎重審査の結果、国際貿易委員会(ITC)の承認を得て中国、インドネシア、韓国等の新興勢力から輸入される塗工紙(印刷用紙であってCoated paperと表現しても良いだろう)に反ダンピング関税(AD)と相殺関税(CVD)を合計で最高200%以上を課する決定を下し、アメリカ市場から閉め出していた事を繰り返して採り上げて、寧ろ批判してきた。批判の理由はここでは敢えて省略する。

私はこの件を繰り返し自分のブログにも採り上げたし、機会があれば語ってきた。即ち、このような政策を採る国が「聖域なき関税撤廃」を唱えるTPPの盟主然として君臨するかの如き姿勢は如何なものかというのが私の論旨だった。だが、この世界の製紙産業界としては重大な話題を採り上げて語ったメデイアはなかったと記憶する。明らかな保護貿易姿勢は何もトランプ大統領が打ち出したものではないのだ。

余談になるかも知れないが、DOCは矢張り業界の請願を受けてキャッシュレジスターでレシーとして使われている輸入の感熱紙についても、中国やドイツ製品に対して高率のADとCVDを課して閉め出している。これも報じられた気配はなかった。これが嘗ては世界最大の製紙国(今や超過剰設備を抱える中国に抜かれて2位に転落したが)アメリカがしたことである。情けなかった。

10日の産経は一面に「米、中国制裁本格化」として中国から輸入される硫酸アンモニュウムにADが493.46%、CVDが206.72%と合計で700%に迫る関税を賦課と決定した旨を報じていた。他には既に道路舗装資材にADが372.81%、CVDが15.62~152.5%を課すことも決定していた。確かに、トランプ大統領が不公正な貿易に対しては手を打つと公言された通りだろう。だが、これは今になって改めて始まったことではないのだ。

これも、私は何度も繰り返して論じてきたことだが、アメリカ連邦政府は第一次クリントン政権(言うまでもないが民主党政権だ)時代に、我が国が製紙の原料であるパルプやウッドチップばかり輸入して世界最高の品質を誇る(悲しいかなな独りよがりであって正しいとは言えない)紙類を輸入しないことに不満を表明し、もしも買わないのであれば「スーパー301条を適用する」とまで表明して圧力をかけてきた実績がある。これが、ある意味での典型的なアメリカ商法で、何もトランプ様のみの手法ではない。

DOCもアメリカの製紙産業も全く世界市場に配慮するというか先行きの見通しが不明確だったために、アメリカに続いてEUも中国等の新興国からの塗工紙に関税をかけて閉め出す措置を講じた。その当然の結果として、過剰生産能力を抱えただけではなく内需が未成熟な中国製の紙が世界中に溢れ、先の見えない紙販売の不況を招いてしまった。

そして、トランプ政権誕生の後での「アメリカファースト」政策が実行段階に入っていくようだ。私はオバマ政権下での保護貿易的な姿勢を見ていたので、トランプ大統領の対中国の強硬姿勢には事改めて驚きは感じなかった。既に採り上げたが、アメリカファーストの旗印の前にあっては、アメリカ市場から閉め出された製品が世界の他国に与える影響には、“I don't care what happens afterwards.”と割り切っておられるのかと疑っている。因みに、この慣用句は我が国では「後は野となれ山となれ」となっているが、英語では“After me, the deluge.”とも言われている。

私はアメリカ時間の10日から始まる安倍総理のトランプ大統領との第1回首脳会談は、このようなアメリカの体質を思う時に、極めて難しい重要なものとなると予想している。