私の経験の範囲にもいた普通のアメリカ人だと思う:
繰り返し述べてきたことだが、我が国とアメリカの間には大きな文化の相違がある。その違いを考えずにトランプ大統領を見ていると、これまでは余りに“unpredictable”であり暴言や放言が多く、何処に判断の基準を持っていけば良いかと、やや困惑させられていた。惑わされた最大の原因はあの経験したことがなかった粗暴な言動だったと思っている。但し、一度だけ「石原慎太郎君を思わせる小心な人ではないか」とは指摘した。この点はそのままこの正体論の中に残して置いても良いと思う。
非常に広義にアメリカ人、それもビジネスの世界にいる連中を定義すれば、順序不同で
(1)上意下達の世界で部下には命令忠実実行型を求める。(2)謝罪の文化はなく、自ら我と我が身の非を認めるような思考体系の持ち合わせがない。(3)会社の意志と意向と政策に忠実で、そこを得意先に対してほぼ絶対的に認めさせる努力する。即ち、得意先の意向や反論を会社側に伝えて方針変更を進言したりすることは回避することが評価される。この辺りは(1)とやや重複するが、我が国の企業社会の文化と思考体系ではあり得ないことだ。
(4)自社と自社製品に対して絶対(あるいは過度の)の信頼と自信を持っており、平気で得意先に向かって“It’s a mistake, if you don’t buy our world’s greatest product.”のようなことを躊躇わずに言える感覚を持つ。即ち、先手必勝的に自社にとって最も有利に運ぶような売り込みをかける。その裏にあることが「謙り」の精神がないということでもある。この手法は屡々我が国では高飛車だと解釈される。
(5)妥協という二文字は彼らの辞書にはない。故に落としどころを探るような交渉術は採らず、勝つか負けるかの二者択一的な姿勢で交渉していく。しかしながら、賢明な者たちは玉砕戦法を採ることなく“alternative”というか代替案乃至は“contingency plan”とでも言うべき安全弁を用意して臨んでいく。何れにせよ、飽くまでも「デイール」が成り立つか成り立たないかだけを目指してくる。
(6)国際感覚は我が国ほど鋭くないし、馴れていないと思ってそれほど誤りではない。
もうこの辺りで十分だろう。トランプ大統領のこれまでの手法に上記の項目を当て嵌めてみると、先ず(1)は適用されるだろう。大統領という地位に就けば上意下達で押し通せるし、自分の指令(大統領令乃至はキャンペーン中からの公約)を部下が忠実に実行するのは当然だと思っておられるのだろうと見た。(2)は非常に怖い。自動車問題などを考える時に、自らの非を潔くその場で認めるだろうか?
(3)は現在まで自営業を営んでこられたことでもあり、命令忠実実行型の部下たちを使ってこられたご経験しかなかったのではないだろうか。何処までの強気で押すだろう。(4)は既に実証済みではないか。いきなり「ドカン」とアメリカと大統領にとって最も好都合な条件をぶつけてから話を進める手法を採用してこられたと見た。(5)最初から妥協を考えるとか、落としどころを考えた交渉をするアメリカのビジネスマンなどに出会ったことがなかった。
(6)も最も恐怖だ。不動産王であったかも知れないが、世界の市場でその国の最高の学歴と頭脳と交渉能力と外国語によるdebate経験が豊富な一流の製造業の“representative”たちや、商社や貿易業者と所謂「タフ・ネゴシエーション」のご経験がどれほどおありだったかとの点では疑問を感じる。私の経験の範囲にも、我が国にはアメリカの精鋭たちが震え上がったほどの鋭い論客は幾らでもおられたし、それを裏付ける英語での隙のない論旨を組み立ててこられた方には何度も出会った。彼らはアメリカ式の先手必勝的なハッタリなどに屈することなどなかった。
所謂有識者であるとか専門家の方々は、トランプ氏が一人の候補者であった頃には「アメリカ人には良識がある。まさか彼を選ぶことはあるまい」と予測して見せた。更には、当選した後ではキャンペーン中の暴言や放言のままで大統領には就任しないだろう。必ずや穏健化するか穏やかな政策に変えていくだろう」なども言って見事に外した。それだけではない、「(国会の承認が済んでいないが)彼が選んだ閣僚には立派な穏健派がおられるから、その献策を聞き入れることに期待」とまで言った。お聞きになっているのだろうか。
トランプ大統領はアメリカ自動車産業界の経営者たちと会談の後で、一層の勢いをつけて我が国の自動車産業の批判に出てきた。(2)で既に指摘したことで、アメリカの自動車産業の連中が「大統領様。我々がボンクラでした。碌な自動車も造らず世界市場で敗れ、自国の市場を日本車(とドイツ車だろうが)に蹂躙されました。申し訳ありません」と言うか。彼らは「悪いのはトヨタ以下の日本のメーカーでアメリカ市場で安売りしています。何とか彼らを退治してデトロイトを復活させて下さい」としか言えないだろう。
それを聞かされた歴史と事情に疎い大統領様が「よし、解った。来たるべき安倍晋三総理との会談では思いきり言ってやる」と言われても不思議ではないと思う。デトロイトの連中には「アメリカ産の日本車が何十倍にも増えたとか、日本市場では無関税でも売れないのは左ハンドルしか造っていないからではない。買わない日本のユーザーが悪いのだ」程度の認識しかなくとも私は驚かない。
最後に、我が国が為替操作をしているとの発言は「周囲にいる者たちが適切な助言をしていないか、資料をチャンとお読みでないのか、あるいはいきなり大統領になったばかりでは外国為替なるものの微妙さや扱いの難しさを把握されていないが故に出てきた妄言だとしか思えない。安倍総理が説明された通りで、金融緩和は最初からデフレ対策と銘打たれていたし、アメリカ大使館だってその程度はワシントンDCに報告を挙げていたはずだ。
今更ここまでを纏める必要もあるまいが、トランプ大統領が今後どれほど学習する意欲をお持ちかと、現状と歴史を認識して行かれるかに懸かっていると思う。未だ未だ慣らし運転中であり、今後は十分に実地に経験を重ねられて、アクセルとブレーキをお踏み違いなきようにと祈るだけだ。
繰り返し述べてきたことだが、我が国とアメリカの間には大きな文化の相違がある。その違いを考えずにトランプ大統領を見ていると、これまでは余りに“unpredictable”であり暴言や放言が多く、何処に判断の基準を持っていけば良いかと、やや困惑させられていた。惑わされた最大の原因はあの経験したことがなかった粗暴な言動だったと思っている。但し、一度だけ「石原慎太郎君を思わせる小心な人ではないか」とは指摘した。この点はそのままこの正体論の中に残して置いても良いと思う。
非常に広義にアメリカ人、それもビジネスの世界にいる連中を定義すれば、順序不同で
(1)上意下達の世界で部下には命令忠実実行型を求める。(2)謝罪の文化はなく、自ら我と我が身の非を認めるような思考体系の持ち合わせがない。(3)会社の意志と意向と政策に忠実で、そこを得意先に対してほぼ絶対的に認めさせる努力する。即ち、得意先の意向や反論を会社側に伝えて方針変更を進言したりすることは回避することが評価される。この辺りは(1)とやや重複するが、我が国の企業社会の文化と思考体系ではあり得ないことだ。
(4)自社と自社製品に対して絶対(あるいは過度の)の信頼と自信を持っており、平気で得意先に向かって“It’s a mistake, if you don’t buy our world’s greatest product.”のようなことを躊躇わずに言える感覚を持つ。即ち、先手必勝的に自社にとって最も有利に運ぶような売り込みをかける。その裏にあることが「謙り」の精神がないということでもある。この手法は屡々我が国では高飛車だと解釈される。
(5)妥協という二文字は彼らの辞書にはない。故に落としどころを探るような交渉術は採らず、勝つか負けるかの二者択一的な姿勢で交渉していく。しかしながら、賢明な者たちは玉砕戦法を採ることなく“alternative”というか代替案乃至は“contingency plan”とでも言うべき安全弁を用意して臨んでいく。何れにせよ、飽くまでも「デイール」が成り立つか成り立たないかだけを目指してくる。
(6)国際感覚は我が国ほど鋭くないし、馴れていないと思ってそれほど誤りではない。
もうこの辺りで十分だろう。トランプ大統領のこれまでの手法に上記の項目を当て嵌めてみると、先ず(1)は適用されるだろう。大統領という地位に就けば上意下達で押し通せるし、自分の指令(大統領令乃至はキャンペーン中からの公約)を部下が忠実に実行するのは当然だと思っておられるのだろうと見た。(2)は非常に怖い。自動車問題などを考える時に、自らの非を潔くその場で認めるだろうか?
(3)は現在まで自営業を営んでこられたことでもあり、命令忠実実行型の部下たちを使ってこられたご経験しかなかったのではないだろうか。何処までの強気で押すだろう。(4)は既に実証済みではないか。いきなり「ドカン」とアメリカと大統領にとって最も好都合な条件をぶつけてから話を進める手法を採用してこられたと見た。(5)最初から妥協を考えるとか、落としどころを考えた交渉をするアメリカのビジネスマンなどに出会ったことがなかった。
(6)も最も恐怖だ。不動産王であったかも知れないが、世界の市場でその国の最高の学歴と頭脳と交渉能力と外国語によるdebate経験が豊富な一流の製造業の“representative”たちや、商社や貿易業者と所謂「タフ・ネゴシエーション」のご経験がどれほどおありだったかとの点では疑問を感じる。私の経験の範囲にも、我が国にはアメリカの精鋭たちが震え上がったほどの鋭い論客は幾らでもおられたし、それを裏付ける英語での隙のない論旨を組み立ててこられた方には何度も出会った。彼らはアメリカ式の先手必勝的なハッタリなどに屈することなどなかった。
所謂有識者であるとか専門家の方々は、トランプ氏が一人の候補者であった頃には「アメリカ人には良識がある。まさか彼を選ぶことはあるまい」と予測して見せた。更には、当選した後ではキャンペーン中の暴言や放言のままで大統領には就任しないだろう。必ずや穏健化するか穏やかな政策に変えていくだろう」なども言って見事に外した。それだけではない、「(国会の承認が済んでいないが)彼が選んだ閣僚には立派な穏健派がおられるから、その献策を聞き入れることに期待」とまで言った。お聞きになっているのだろうか。
トランプ大統領はアメリカ自動車産業界の経営者たちと会談の後で、一層の勢いをつけて我が国の自動車産業の批判に出てきた。(2)で既に指摘したことで、アメリカの自動車産業の連中が「大統領様。我々がボンクラでした。碌な自動車も造らず世界市場で敗れ、自国の市場を日本車(とドイツ車だろうが)に蹂躙されました。申し訳ありません」と言うか。彼らは「悪いのはトヨタ以下の日本のメーカーでアメリカ市場で安売りしています。何とか彼らを退治してデトロイトを復活させて下さい」としか言えないだろう。
それを聞かされた歴史と事情に疎い大統領様が「よし、解った。来たるべき安倍晋三総理との会談では思いきり言ってやる」と言われても不思議ではないと思う。デトロイトの連中には「アメリカ産の日本車が何十倍にも増えたとか、日本市場では無関税でも売れないのは左ハンドルしか造っていないからではない。買わない日本のユーザーが悪いのだ」程度の認識しかなくとも私は驚かない。
最後に、我が国が為替操作をしているとの発言は「周囲にいる者たちが適切な助言をしていないか、資料をチャンとお読みでないのか、あるいはいきなり大統領になったばかりでは外国為替なるものの微妙さや扱いの難しさを把握されていないが故に出てきた妄言だとしか思えない。安倍総理が説明された通りで、金融緩和は最初からデフレ対策と銘打たれていたし、アメリカ大使館だってその程度はワシントンDCに報告を挙げていたはずだ。
今更ここまでを纏める必要もあるまいが、トランプ大統領が今後どれほど学習する意欲をお持ちかと、現状と歴史を認識して行かれるかに懸かっていると思う。未だ未だ慣らし運転中であり、今後は十分に実地に経験を重ねられて、アクセルとブレーキをお踏み違いなきようにと祈るだけだ。