新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカの大手企業はスイートルームをどのように使っていたか

2017-02-19 10:20:46 | コラム
我々はこのように活用していた:

既に採り上げたように、石原元東京都知事が在任中に海外出張で一流ホテルの高額なスイートルームに泊まっていたことは、かねがね批判されていたが、週刊文春が最近になってその経費の濫用(?)を採り上げていた。いや、「それを経費の濫用である」と非難するかの記事を載せたと言う方が正確かも知れない。勿論、同期の英雄である石原君を擁護したい気持ちはあるが、そこを離れてここではW社在職中に経験したアメリカの企業がどのようにスイートルームを使うかをご参考までに紹介してみよう。

我が事業部では隔年に全米の何処かの大都市で開催される食品とその関連の業界の“Convention”(“a large meeting of the members of a professional, a political party, etc.”と呼ばれる関連業界の大規模な展示会で、全米と全世界から関係者が参加するもので、Expoとも呼ばれていた)には事業部のほぼ全員が出展者として参加していたし、私も日本市場の担当者として詰めていた。開催された都市はシカゴが最も多く、他にはアナハイム、アトランタ、アトランテイック・シテイー等だった。

その際にアメリカのトリプルAの格付け(当時)のメーカーとしては、その格に相応しい各都市の一流のホテルに全員で宿泊していた。そこでは必ずスイートルームを取ってそこには幹事役のマネージャーが入り、副社長兼事業部長は言うなれば普通の部屋に泊まっていた。ではスイートルームをどのように使うかだが、その点にアメリカ式の経費の使い方の妙があると思う。

それはスイートルームの大きな方の部屋には、言わば世界中の名酒(銘酒でも良いか?)やコーヒーやCola等の飲料の他に適当なおつまみを用意して、日中に来訪されたお客様との商談にも簡単な接待にも使えるように準備されていた。また、夜は部員たちが思い思いに集まって何もホテルのバーに行くまでもなくその場で談笑も出来るし、会議にも反省会にも使えるし、更には重要な打ち合わせの朝食会の会場としても活用されていた。ここまででも経費節減に役立っているとお解り頂けるだろうか。

幹事役のマネージャーは奥まったベッドルームで寝ていても、先ず騒音に悩まされることはないとも聞いていた。展示会に出展するアメリカの大手製紙会社は皆それぞれがその都市の一流ホテルに宿泊して、スイートルームにお客様をお招きして接待も商談も可能なようにしていた。我が社はシカゴでは、かのリッツ・カールトン(The Ritz-Carlton)を定宿にしていた。それは贅沢でも虚栄の為でもなく、お客様との良好な関係を促進する目的もあったのだ。

石原元東京都知事にせよ、舛添前都知事にせよ、「トップだからその年の一流ホテルに泊まるのだ」などということを言わずに、「その土地でも都市でも重要な方との会合のためにご招待する時のためにスイートルームを取ったのだ」と言えばあれほど非難され批判されることはなかったのではないかとすら思うのだ。即ち、アメリカの企業社会におけるスイートルームの活用法を少しでも学んでおけば良かったのではないかということだ。換言すれば、彼らアメリカの企業は予算の立て方というか、経費の有効的な使い方を心得ているのだと思う。

私は私の職務とは関係がないことなので、The Ritz-Carltonのスイートルームの部屋代が如何ほどかなどは知る由もない。だが、シカゴではあのメゾネット方式で階下にはグランドピアノまで置いてあったのを見れば、一度くらいはこういう部屋に泊まってみたいと誰しもが思うだろうと感じた豪華さだった。今となっては単に回顧談だが、一般論として外国の企業のホテルの活用法にはこういうこともあると紹介した次第。