新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

2月11日 その2 トランプ大統領は本当に無知なのか

2017-02-11 12:35:08 | コラム
無知と疑える材料が多過ぎる:

10日のPrime Newsでも司会の反町に問われた甘利元大臣は暫く逡巡してから「知らないと思わせる点が多々あるが、あるいは知っていて知らん振りをしているのかと思わせることも・・・」と断定を避けたものの、無知論に傾いているかのような印象だった。

私も選挙キャンペーン中から「本当に無知か、あるいは何もかも承知で知らない振りをして暴言や妄言を吐いているのかの判断が難しいが、どちらかと言えば前者に限りなく近いと思わせる」と論じてきた。

実際に大統領に就任してからの言動を見ていれば、トランプ氏は物事を知らないと見るよりもその知識(と経験の幅)は極めて限定されているというのが正確かと思うようになった。極論をいえば「個人経営の不動産業者のオウナー社長がまかり間違って大統領になってしまったのだから、政治・経済・軍事・外交・海外事情・貿易業務の実態等々に精通していなくても何ら不思議ではない」のだと考えるようになった。

実は、私自身で「大統領として心得でいるべきでもご存じでないことは、百戦錬磨で経験も知識も豊富な側近たちから必要に応じてブリーフィングを受けて補って行かれれば何とかなるのではないか」などとおかしなことを言っていた。また、誰だったか(デーブ・スペクター?)は「彼は他人が言うことに耳を傾けまい」とも言っていた。これはあり得ることだと思っていた。

私は22年以上のアメリカの会社勤務で多くの最高責任者、副社長、副社長兼事業本部長、マネージャー等に接してきたし、ある日突然何処からともなく現れて着任してきた偉い人たちに出会ってきたし、一緒に仕事もしてきた。だが、ただの一度も「俺は新任でこの部門の仕事の実態を知らないので、これから一所懸命に勉強するから宜しく。色々教えてくれ」などと言われたことはない。

だが、彼らは着任して3日もすれば昨日までその仕事をしてきたかのように、何から何までこちらが聞きたいほど精通しているところを見せるのだ。一体全体何時の間にそこまで仕込んだのかと驚倒させられた人物もいた。だが、部下たちは誰も驚かない「当たり前だ。彼がこの中で最も年俸が高いのだから」と言うだけだった。それがアメリカだ。そうなのであり、上司は全知全能で、全てを知っていてその部下たちを管理・監督して運営するのだ。その全知全能になるためには恐らく何日も不眠不休で勉強していると察してきた。

屡々評論家や有識者の方々は「トランプ大統領の周囲にいる側近(aides)が必要があるか、ご下問があったときにご進講申し上げるだろうから、その知識不足は補えるのでは」というようなことを言っておられた。だが、アメリカ合衆国の最高責任者である大統領が「マテイス君。尖閣諸島関連の安保のことを教えてくれ」と言うだろうか。あり得ないだろうピーター・ナヴァロが「大統領、中国は一つって意味お解りですか」としゃしゃり出るだろうか。ゴールドマンサックス出身者を呼んで「為替の知識を教えろ」と言うだろうか。

本来ならば、トランプ氏は大統領当選が確定した日から不眠不休で英語で言う“home work”に勤しんでいなければならなかったはずだ。それでこそ大統領だ。だが、遺憾ながら、私には未だにトランプ大統領が諸般の事情に何処まで通じておられるかは解りようがない。ここまで来れば、トランプ大統領の知識の深さや幅を論じるよりも、彼自身の器量の大きさの問題ではないかと思うのだ。

貿易赤字だけをお考えのトランプ大統領は片手落ち

2017-02-11 10:04:31 | コラム
アメリカとオーストラリアに駐在経験がある輸出入の専門家は言う:

専門商社の知人から興味深い意見が寄せられたので、紹介する次第。

>引用開始

経常収支赤字188位のどん尻であるアメリカは、輸入元を責める前に構造的に何かおかしいと考えなければならないでしょう。 観光収益などで赤字をカバーしている部分もあるので、それを差し引いた貿易収支だけを見れば赤字額はもっと大きいと思います。 

アメリカ純粋の土産が無いと言われるように、衣類、靴、電気、車、その他のブランド品も海外生産に移したお蔭で国内生産は空洞化してしまった訳で、自らの国策が招いた結果でしょう。 その代り、ITC面での開発は目覚ましいものがあり、発明による特許で生きる道を選んだような気もします。 

海外の輸出国はけしからんと言うのは自らの間違った判断を認めずにイチャモンをぶつける如くであり、理屈が合いません。 今更競争力のある物作りに戻れるのか知りませんが、輸入品に高関税掛けたら自分の首を絞めるだけではないでしょうか。 Fashion Districtで売っているような生活用品はアメリカ人には不可欠になってしまっているのですから。 

大統領は赤と青のネクタイ以外はお使いにならないのかもしれませんが、そのネクタイが中国品ではない事をいつか中国の要人と面談される前にお調べになった方が宜しいかと思います。 日本も同様にアメリカ筆頭に食糧、石油などは輸入に頼っていますが、各国とも国産品だけで自給自足生活は不可能ではないでしょうか。 

<引用終わる

私は以下のように応じました

思い出すことに「アメリカの過去の栄光」があります。私が転進した1972年頃でも既に赤字で対日輸出などは不振でした。しかし、物事を良く承知していた人は言いました。「紙が売れていなくても、アメリカは印刷用のコート紙、NCR(ノーカーボン紙)等々のの多くの特許を保有し、そのライセンスをおろし多くのライセンシーからローヤルテイーで十分に稼いでいる。そこが我が国との根本的な力の違いだ」との解説です。先進国だったのです。

この点は10日のPrime Newsにゲスト出演した甘利元大臣が「トランプ大統領が拘泥されているのは物の貿易の赤字であって、貿易外収支には触れていない。アメリカが全世界で展開しているこの面の収入を考えれば、物の貿易による赤字などは綺麗に相殺されてしまう」という誠に尤もな指摘をされていました。失礼を顧みずに言えば、不動産王だったトランプ大統領がそこまで目を配り切れていなくとも不思議ではないと思うのです。

自分が関係した業界のことだけ取り上げれば、確かに牛乳パックというかカートンのアメリカのPure PakはEX-CELL-O(XLO)社のライセンスを十條製紙(現日本製紙)が受けたて製造しているもので、(覚えていませんが何%だったかの)ローヤルテイーを支払っていました。アメリカにR&Dに頭脳を集める等手広く積極的に投資して次々と新規のアイデイアやソフトを開発してきました。そして、各種のライセンスを我が国に下ろしていたのです。

即ち、40年以上、イヤもっと前からアメリカは知財で商売をしていたのでした。既に述べたかも知れませんが、Mead社は山陽パルプ(現日本製紙)にコート紙のライセンスを与えていましたので、オウナー兼VP-InternationalのNelson Meadはその監視のために毎年来日していました。だが、自分から販売活動に出ていかれることはありませんでした。そこには凸版印刷と合弁のMead-Toppanがあり、凸版は、話が違いますが、Toppan-Averyを設けましたしビジネスフォームの世界的大手のカナダのMoore社と組んでToppan-Mooreも持っていました。Weyerhaeuser Japanだって、本社が投資した別会社の形でした。

その他の業種ではかの“McDonald’s”、“Kentucky Fried Chicken”、“Burger King”等々のファストフード店だったアメリカ企業の投資かライセンスでしょう。その他に外資系と言われる我が国に設立された合弁事業が一体何社あるかということでしょう。テレビのCMを見ていれば連日“P&G”等の広告を見ない日があるでしょうか。

しかし、特許は何時か切れるもので、その栄光は今何処です。トランプ様にはそういう歴史と事実認識が必要でしょうが、現代ではマイクロソフトがあり、アップルもあり、Googleもあり、Facebookもあって、物を造らずとも十分に稼いでいるのですが。貿易赤字だけご覧になって我が国を非難するのは、と申し上げたくもなります。