新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

文化・文明論

2023-02-26 07:48:16 | コラム
紙の消費量は一国の文化・文明のバロメーターであり得るのか:

この辺りを、最近の紙業タイムス社発行の「FUTURE誌」の記事を参考にして考えてみよう。要点は嘗ては「紙の消費量が多いことがその国がどれほど文化と文明に優れているのか」を表していると認識されていた。そして、その昔は世界最大の生産と消費の国がアメリカで、我が国は第2位だった。

それが、中国が成長発展を続けてきた結果で、今や世界最大の紙生産国となり、アメリカは2位で我が国は3位となってしまった。だが、人口1人当たりの年間の消費量では、2021年の統計では中国は77kgであり、200kg台前半のアメリカと日本の3分の1程度だ。だが、ICT化やデイジタル化は非常に進んでいるようだ。

すなわち、「人口1人当たりの消費量の上位20ヶ国を占めているのは皆先進国なのである。だが、近年ではその先進国では年々消費量が縮小し続けているのだ。この現象が示すことは「紙の消費量が減少することはICT化とデイジタル化の進展の度合いを示しているのであり、もはや文化と文明のバロメーターではなくなってきたのではないか」なのだ。

その辺りを先頃日本製紙連合会が発表した「2023年の内需と消費の見通し」から我が国について考えてみよう。

まず、この連合会の統計から、2019年の紙・板紙の実績と2023年の見通しを比較してみた。19年の実績は2,623万トンだったのに対して、23年度の見通しは2,047万トンなので実に23%に近い減少なのだった。中でも新聞用紙と印刷用紙の減少が最も大きく、2011年との対比では44%もの減少なのだ。これすなわち、印刷(紙)媒体がインターネットにその地位を奪われていたことをハッキリと示しているのだ。

中でも、新聞用紙の需要は19年度の実績と対比しても29%の落ち込みとなるのだ。11年度と比べれば49%という大幅な減少だった。新聞用紙の需要が減退した理由を、ここに私が述べるまでもないと思うが、統計を見ると今更ながらその厳しさが見えてくるのだ。

ここで重ねて強調することは「紙の消費量の減少がその国のICT化とディジタル化の進捗状況を表している点」なのである。

一方では、アマゾンが代表的であるように通販の成長がめざましいので、段ボール原紙(凾)は2011年には880万トンだったものが、23年の見通しは924万トンと、なんと5%の成長が見込まれているのだ。段ボール原紙は「板紙」の分類になるのだが、包装材料の需要は停滞していなかったのだ。

だが、私が在職中に担当していた牛乳やジュース類用のパックになる液体容器原紙は、我が国では生産されておらず全面的にアメリカと北欧からの輸入だった。だが、22年の輸入実績は17万5千トンで、最盛期の25万トンからは30%もの減少である。

その背景には人々の牛乳についての趣向が変わったことと、学童の数が減ったために学校給食の需要が減退したことにあると聞いている。北海道では生乳が余って廃棄すると報道されているが、液体容器原紙の輸入の減少と軌を一にしているようで残念だ。

参考資料:紙業タイムス社刊 FUTURE誌 2023年2月13日号と3月6日号