「白鳥の湖」に出てくる、
王子様を誘惑するほうの鳥が黒鳥すなわちブラック・スワンなんです。
「白鳥の湖」はお姫様が白鳥に変えられてしまうんですが、
王子様がその白鳥姫に恋焦がれて求める話のようです、
僕はこの映画を観てはじめて知りました。予備知識なさすぎです。
白鳥と黒鳥は裏表みたいな感じですかね、その名のとおり、白と黒です。
ナタリー・ポートマン演じるバレリーナ、ニナが主人公。
ネタバレになるので、極力ストーリーは書かないですが、
それでも、僕の解釈部分が、この作品の言わんとしている
大事なところを暴露してしまう可能性もありますし、
もしかすると、的外れな事を書くかもしれない、
そのあたりは人それぞれの感じ方があるということです。
まず第一に、干渉力の強い親がいることが一つの問題なんです。
子離れできなくて、子どもに無理強いめいた気の遣わせ方をさせてしまう親が登場します。
これが、おおきく、主人公ニナの人格に影響を与えているものと思われます。
自分を抑えてしまう、感情のままに行動するということがまったくできない、という点ですね。
……うーん、やっぱりこの後はネタバレしてしまいますので、
できれば、映画を観た方で読んでも良いぞという方が読み進めてみて、
ご自分のご感想と比較して楽しんでみてください。
ネタバレしても気になどせぬわ!という猛者の方はこの後も
どうぞ読んでやってください。
さて。
この映画は、ニナの精神にスポットを当てて作られているようです。
スポットを当ててとはいうものの、舞台監督やライバルのリリーが
ニナの性格を言い当てたり指摘したりということが彼女の精神を表わすことながらも、
それよりも、ニナの行動や、ニナの気持ちにひっかかる物事、錯視(幻覚)などが、
極度のプレッシャーと頑張りと自己改革、そして子離れしない親を抱える心の闇などの
複合的な心の絡まり具合を表現していると言えます。
三島由紀夫風に表現すると、「もつれた毛糸玉のような心」というわけです
(『音楽』という小説にそんな感じの表現がありました)。
そういった、ニナの精神面を一番の優先事項として表現した映画でしょう。
なので、観ている最中はけっこう辛いものがあります。
村上龍さん風に表現すると(今日はこんなんばっかだな)、
「自分が自分のカウンセラーでなければやっていけない世界に彼女はいる」ということです。
そして、些細で奇妙な偶然が彼女をかき乱していることは、
映画の中でわかりやすく描かれてはいませんが、自明のことと思いました。
ああやって、疲弊した心が病的になっていくものです。
まだ20代の後半にもなっていないだろうニナ。
繊細で臆病で、子離れできない親を抱えて余計自分を抑えて生きています。
そんな彼女に黒鳥を踊るためには自分を解放しなければいけないと舞台監督は言うのです。
激しさを見せろ、と。
これが映画らしい映画、エンタメですねぇっていう感じのものだとか、フィクションだねぇ
っていう色の濃いもので古風なものならば、彼女は見事に健康的にそれをやってのけるでしょう。
でも、今は21世紀の現代です。
ナタリー・ポートマンが華麗に一流のバレエを踊るところや、
恥じらいの強い演技をするところなどがフィクション色が強いとしても、
キャラクターの心理の流れ、乱れというものは真実を射抜いていました、と僕は思います。
…ここからもっとネタバレ。結末に触れます…。
さて。
ニナは破綻と成功というアンビバレントな結末を一挙に手にしました。
それこそが現代的でリアリティがあるのです。
繊細で臆病で子離れできない親を抱えて自分を抑えて生きている彼女には、
舞台監督の言う「自分を解放しろ」という注文は、破滅への誘いであったわけです。
それは、冒頭でのニナの夢にも表れているような気配があります。
どうしても越えられないものを無理くり越えさせようとするものではない例があるということを
この映画は言っているようにも思います。
また、逆に、子離れできない親の存在というか、そういう親の環境で成長することによって
子どもにこのような「成功できない足かせ」をはめることになるとでも言っているようにも思えます。
僕自身似たような経験がありますから、こんなことを言うのですが。
ニナのように、無理に「自分を解放する」という新しい世界に足を踏み入れて、
混乱、または錯乱といった事態に陥ることは十分ありうることです。
ましてや人生経験の乏しいであろう若い人には。
話は内容から女優さんに変わります。
ナタリー・ポートマンはすごくきれいになったなぁと思いました。
やせぎすではあるのですが、表情がとても美しいです。
感情表現も抜群で、アカデミー主演女優賞を獲るのも納得というか、
それ以上じゃないでしょうか。
びっくりしたのが、ウィノナ・ライダーです。
あの役は怖すぎです。ウィノナ史上もっともホラーな役柄だったように思います。
けっこう歳も取ったなぁというふうにも見えました。
『スター・トレック』でスポックの母親役をやりましたが、
そのときはまだまだいけるぞという見え方がしたのです。
もう40歳だもんなぁ。しかし、ウィノナ節とでもいうべき、キレる具合は往年のままでしたね。
そんなわけで、観ている最中はちょっと精神的に辛い所があり(それはもっとへんちきりんな描写が
挿入されるのではないかという不安も関係していると思う)、
観終わるとまんざらでもない気分になる映画でした。
軽く、心理的に生々しい性描写があるので、初々しい恋人同士では観に行くのはやめたほうが
いいかもしれません。さばけた恋人同士は行くといいです!
王子様を誘惑するほうの鳥が黒鳥すなわちブラック・スワンなんです。
「白鳥の湖」はお姫様が白鳥に変えられてしまうんですが、
王子様がその白鳥姫に恋焦がれて求める話のようです、
僕はこの映画を観てはじめて知りました。予備知識なさすぎです。
白鳥と黒鳥は裏表みたいな感じですかね、その名のとおり、白と黒です。
ナタリー・ポートマン演じるバレリーナ、ニナが主人公。
ネタバレになるので、極力ストーリーは書かないですが、
それでも、僕の解釈部分が、この作品の言わんとしている
大事なところを暴露してしまう可能性もありますし、
もしかすると、的外れな事を書くかもしれない、
そのあたりは人それぞれの感じ方があるということです。
まず第一に、干渉力の強い親がいることが一つの問題なんです。
子離れできなくて、子どもに無理強いめいた気の遣わせ方をさせてしまう親が登場します。
これが、おおきく、主人公ニナの人格に影響を与えているものと思われます。
自分を抑えてしまう、感情のままに行動するということがまったくできない、という点ですね。
……うーん、やっぱりこの後はネタバレしてしまいますので、
できれば、映画を観た方で読んでも良いぞという方が読み進めてみて、
ご自分のご感想と比較して楽しんでみてください。
ネタバレしても気になどせぬわ!という猛者の方はこの後も
どうぞ読んでやってください。
さて。
この映画は、ニナの精神にスポットを当てて作られているようです。
スポットを当ててとはいうものの、舞台監督やライバルのリリーが
ニナの性格を言い当てたり指摘したりということが彼女の精神を表わすことながらも、
それよりも、ニナの行動や、ニナの気持ちにひっかかる物事、錯視(幻覚)などが、
極度のプレッシャーと頑張りと自己改革、そして子離れしない親を抱える心の闇などの
複合的な心の絡まり具合を表現していると言えます。
三島由紀夫風に表現すると、「もつれた毛糸玉のような心」というわけです
(『音楽』という小説にそんな感じの表現がありました)。
そういった、ニナの精神面を一番の優先事項として表現した映画でしょう。
なので、観ている最中はけっこう辛いものがあります。
村上龍さん風に表現すると(今日はこんなんばっかだな)、
「自分が自分のカウンセラーでなければやっていけない世界に彼女はいる」ということです。
そして、些細で奇妙な偶然が彼女をかき乱していることは、
映画の中でわかりやすく描かれてはいませんが、自明のことと思いました。
ああやって、疲弊した心が病的になっていくものです。
まだ20代の後半にもなっていないだろうニナ。
繊細で臆病で、子離れできない親を抱えて余計自分を抑えて生きています。
そんな彼女に黒鳥を踊るためには自分を解放しなければいけないと舞台監督は言うのです。
激しさを見せろ、と。
これが映画らしい映画、エンタメですねぇっていう感じのものだとか、フィクションだねぇ
っていう色の濃いもので古風なものならば、彼女は見事に健康的にそれをやってのけるでしょう。
でも、今は21世紀の現代です。
ナタリー・ポートマンが華麗に一流のバレエを踊るところや、
恥じらいの強い演技をするところなどがフィクション色が強いとしても、
キャラクターの心理の流れ、乱れというものは真実を射抜いていました、と僕は思います。
…ここからもっとネタバレ。結末に触れます…。
さて。
ニナは破綻と成功というアンビバレントな結末を一挙に手にしました。
それこそが現代的でリアリティがあるのです。
繊細で臆病で子離れできない親を抱えて自分を抑えて生きている彼女には、
舞台監督の言う「自分を解放しろ」という注文は、破滅への誘いであったわけです。
それは、冒頭でのニナの夢にも表れているような気配があります。
どうしても越えられないものを無理くり越えさせようとするものではない例があるということを
この映画は言っているようにも思います。
また、逆に、子離れできない親の存在というか、そういう親の環境で成長することによって
子どもにこのような「成功できない足かせ」をはめることになるとでも言っているようにも思えます。
僕自身似たような経験がありますから、こんなことを言うのですが。
ニナのように、無理に「自分を解放する」という新しい世界に足を踏み入れて、
混乱、または錯乱といった事態に陥ることは十分ありうることです。
ましてや人生経験の乏しいであろう若い人には。
話は内容から女優さんに変わります。
ナタリー・ポートマンはすごくきれいになったなぁと思いました。
やせぎすではあるのですが、表情がとても美しいです。
感情表現も抜群で、アカデミー主演女優賞を獲るのも納得というか、
それ以上じゃないでしょうか。
びっくりしたのが、ウィノナ・ライダーです。
あの役は怖すぎです。ウィノナ史上もっともホラーな役柄だったように思います。
けっこう歳も取ったなぁというふうにも見えました。
『スター・トレック』でスポックの母親役をやりましたが、
そのときはまだまだいけるぞという見え方がしたのです。
もう40歳だもんなぁ。しかし、ウィノナ節とでもいうべき、キレる具合は往年のままでしたね。
そんなわけで、観ている最中はちょっと精神的に辛い所があり(それはもっとへんちきりんな描写が
挿入されるのではないかという不安も関係していると思う)、
観終わるとまんざらでもない気分になる映画でした。
軽く、心理的に生々しい性描写があるので、初々しい恋人同士では観に行くのはやめたほうが
いいかもしれません。さばけた恋人同士は行くといいです!