Fish On The Boat

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『暴露 スノーデンが私に託したファイル』

2015-02-21 20:21:26 | 読書。
読書。
『暴露 スノーデンが私に託したファイル』 グレン・グリーンウォルド 田口俊樹・濱野大道・武藤陽生 訳
を読んだ。

2013年6月、香港にて本書の著者やその他数人に対し、
アメリカ合衆国NSA元職員のスノーデンが自身の良心に従って、
行きすぎたアメリカの監視体制に関する機密文書数万点を暴露したことは、
日本でも大ニュースになり、みなさんもご存じだと思います。
その機密文書の内容は、アメリカやイギリスの新聞社から記事として発信され、
スノーデンはモスクワに移動して逮捕を逃れ、
本書の著者であるグリーンウォルドも共犯者とみられる向きもあり、
ブラジルのリオデジャネイロに住んでいながらも、
アメリカに帰国した際には連行される危険性も否定できないらしいです。

そんな危険を冒してまで、
政府に屈せずに報道をしていくのが、
真のジャーナリストである、と著者は述べていて、
昨今の、政府にお伺いを立ててから記事にするような、
たとえばニューヨーク・タイムズ紙の記者などを痛烈に批判しています。

そのようなスタンスで、
本書はスノーデンのリークした機密文書の紹介や、
香港で彼と著者たちが出会うまでについてや、
なぜNSAによるインターネット世界全監視システムであるプリズム計画などが
プライバシーを侵害することがよくないのかという、
どうしてプライバシーが必要なのかについての論考や、
そしてマスメディアの現在についての批判や記事発表後の
著者自身のあまりいいとはいえない状況などについて書かれています。

僕はこのNSAによる世界監視が暴露されたことは喜ぶべきだと思いました。
アメリカのオバマ政府は、
「国民の監視や盗聴や通信の傍受はしてないよ!外国人に対してだよ!」
というような苦肉の言い訳をしていて、
それに対して、マーク・ザッカーバーグ(FBの創始者)が、
「世界を相手にしているウチの商売に気を使えよ」的な愚痴を言ったとか。
そうなんです、世界監視には、フェイスブックもヤフーもグーグルも、
いろいろな企業が協力しているそうです。
そうやって、プライバシーを盗んでいるんですね。
そうしたことが秘密裏のままだと、
本当に闇の中でもっと権力を強めてしまいかねない。
日本もそうだけれど、政府っていうものは、国民やジャーナリストが厳しく見ていないと、
なにをしでかすかわかったものではないなと感じるところです。

また、著者の主張の優れているところの一つは、こういうところです。
肉体の安全を超一級の優先事項として、
精神的な価値すなわちプライバシーの安全などを明け渡すよう迫る
「監視国家是認」の言説は考えが浅いように思われるし、
詭弁として受け取れるというようなところ。
そうなんですよね、肉体の安全すなわちケガや死に対する不安を過剰に煽って、
それらを回避するためなのだから、精神的な価値つまりプライバシーを
さしだしなさいという、強引な論法なんです。

そして、読んでいて感じたのですが、
他人と違ったままでいたかったなら、知性を磨かなくちゃいけないと感じました。
労力がいるけれど、他人と違うという理由で自分に張られるレッテルを、
それはレッテルだとして説明したり論破したりしなければならないだろうからです。
へんなもので、人と違うことをすることには説明責任があるかのように扱われる。
アメリカじゃ、あいつは人格障害だとか社会不適合者だとか
レッテルを張られる場合があるらしい、問題が大きくなると。
こういうのは健全バカだと思う。
我田引水すぎるリテラシーのせいなのかな。
人権も侵害しているでしょう。

世の中の色合いってものは、
どうしても排他的な保守の色合いだったりする証拠なのかもしれない、
人と違うことをしたときに当たり前のように説明責任を持たされるのは。
説明できないと、病気だとか障害持ちだとか、
適当にレッテルを貼られてしまいます。

この件によって、ジャーナリズムの存在価値が見直されて、
国家に対する監視という立場を堅守するようになってほしいです。
そして、言論の自由ですよね。
驚いたことにイギリスでは報道の自由みたいなのって決められていないみたいです。
本書では、アメリカ、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアを
ファイブアイズという名前でもっとも親密な同盟として、
NSAの監視盗聴の恩恵を受ける国々としていたと書かれていました。

しっかし、世界をこういう感じで眺めてみると、
情報の暴露一つにしても、物騒だなと思いました。


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