Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『ガラスの街』

2015-02-25 00:02:14 | 読書。
読書。
『ガラスの街』 ポール・オースター 柴田元幸 訳
を読んだ。

海外の現代作家の作品を読むことって、
あまりなかったりませんか?
何かと古典ばかり読むようにしていたりしがちなのは、
僕だけではないはず。
それで、じゃあ、現代の海外の作家にはどんな人がいるのかと調べてみると、
いろいろ出てくるのでした。
その中でも、新潮文庫のメールマガジンに載っていたのが本書です。
よさげだ、と、びびびっと来て購入しました。
思っていたように、やっぱり面白かったですね、現代作家の作品は。
村上春樹さんだとか、日本の現代作家の本が面白いんだもの、
外国人のが面白くないわけがない。
とはいえ、本作は30年くらい前の作品なんですけどもね。

探偵小説の皮をかぶってるオオカミみたいな作品かなあ。
オオカミまで行かなくても、我が強くて人なれしないネコが
正体として皮をかぶっているようなイメージでも持ってもらうといいのかな。
本性としては、探偵小説ではないです。
では、なにかと問われると、もう、ポール・オースターというジャンルだとしか、
僕のように現代小説を読んだ経験の浅い人には言えないですね。
アメリカ的な純文学とでも言えばいいのか。

時折出てくる内面描写が秀逸で、
「そういう気持ちわかるわー」と思う箇所がいくらかありました。
なかでも、とある作家の家族と主人公が逢う場面で、
家族という温かさに疎遠な主人公が、その作家の家族愛の幸福さを目にして、
「食中り」ならぬ、「幸せ中り」を起こすところが僕には共感できてしまった。
何気ない描写も、すんなり気持ちに入ってきて、
著者は詩人でもあるとのことなので、そのあたりのセンスなのかもしれないです。

本書の最初のほうに書いてあるセンテンスこそが、
この物語の読み方を表していると思うので、
それを抜き書きして終わりたいと思います。

___

問題は物語それ自体であり、
物語に何か意味があるかどうかは、
物語の語るべきところではない。
___

そんな小説でした。
面白かった。


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