Fish On The Boat

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『日本人のための科学論』

2011-09-05 00:31:22 | 読書。
読書。
『日本人のための科学論』 毛利衛
を読んだ。

2010年12月に出版された、宇宙飛行士・毛利衛さんの本です。

今年3月の大震災に端を発した原発事故によって
揺らいだ日本の科学技術への信頼。
みなさんの中にも、原発事故発生後に転換してしまった、
戻れない原発観、ひいてはネガティブな科学技術観、未来観を持った方が多いかもしれない。
そこまではいかなくても、何かしら、世界観がかしいだ方も多くいらっしゃるでしょう。

3月以前の世界がどうだったか、その空気すらよく思いだせないようなことはないでしょうか。
本書は、本当にその直前の空気感から、科学を論じてくれている貴重な本です。
3月以前の世界から今へと取りもどせるものは、
この本から感じることから取りもどしていけばいい、
そう感じさせられる本でした。

ただ、いかんせん、気になるところの、原発への言及は浅いです。
原発事故のリスクについて考えなければならないし、そのうえで使っていこうみたいな論調です。
そのなかで、原子力発電による核廃棄物については触れられていないのは、
ちょっと残念でした。そこも、3.11以降の常態となったアタマのポジションによる、
昔は敏感さだととらえられていたような、検証の姿勢なのです。

しかし、僕はこの本を通して読んでみて、そこのところを悪くは取りませんでした。
それはそれで、良い意味での、本書の軽さ、テンポなのです。
それに、本論の部分ではありません。

本論では、横断的な総合智の重要性だとか、
科学リテラシーを広く持ちあわそうという提言みたいなものだとか、
著者の毛利さんが館長を務める科学未来館の紹介だとか
そういったことが語られていますし、第二部の対談を含めて、
十分に骨のある内容になっています、軽さとテンポの良さを失わないままに。

それ、言ってほしかったんだ!ということがちらほらでてきます。
一見役に立たない研究が、急きょ役に立つ場合もあることや、
自分の枠組みが変わることを恐れる人は、どんな本を読んでも
自分の読みたいように読んでしまって、
逆にますます自分の発想の正しさを確固たるものにしてしまい、
そういうことが、高みから批評家発言をする態度を生みだすこと、
そういう人は新鮮な発想に出会っても気付こうとしなくなること。
気をつけなきゃなぁと思わせられました。

また、自分の中に落とし込むことが大事だとも書かれています。
勉強するということは、知識をガリガリ詰め込むことじゃない、と。
僕の言葉でいえば、自らの手で練り込むことが大事かなと思いました。
ここのところは、仕事に通じる部分でしたね。
あぁ、文章を書くことにだって通じます。

そんな、気付きや新たな観点をくれる本でもありました。
すぐ読めますから、気になる方は読んでみてください。
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