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『マルセル・モースの世界』

2014-06-24 01:06:57 | 読書。
読書。
『マルセル・モースの世界』 モース研究会
を読んだ。

まず、19世紀から20世紀にかけて活躍したフランス人の
マルセル・モースという人をみなさん知らないと思います。
僕も知らなかったし、帯を読むまでこの本を読んでみようなんて思いませんでした。
その帯とは、
「レヴィ=ストロースが畏敬し岡本太郎が唯一の師と仰いだ20世紀思想の源流」
というものでした。
レヴィ=ストロースは構造主義の祖といわれるフランスの人類学者で、
岡本太郎はご存知のように「太陽の塔」などが知られる芸術家。
そんなわけで、わくわくはしますけれども、なかなか難しい本でした。

モースやその師匠である人たちって、その当時研究紙を刊行していたようですが、
それってきっと、今でいうと、東浩紀さんが刊行する
『思想地図β』みたいなものかもしれない。
あるいは、モースのほうはもっと専門家向けだったのかなとも思いました。
そこにモースは書評や論文を多数掲載していたらしい。
博識の才人人類学者だったようです。

そんなモースの仕事をいろいろ解説している本書ですが、
これがけっこう難しいので、理解しがたいところが多々ありましたが、
そんな中、「供犠論」というのはなぜだか聞いたことのある内容でした。
生け贄をささげるときに、聖なる世界と俗なる世界がいっしょになるという話。
生け贄がそれらの世界の連絡橋のようになるという話。
文化がまだ未成熟というか、近代化していない、アジアなんかの部族の話ですが、
まぁ、現代人からしたら物騒だし、怖いと思うような習慣ですよね。

そして、モースといえばこれだといわれるような主著だそうですが、
『贈与論』というのがあって、この解説を読んだ時には、ちょっと面白い発見があり、
この本を読んだ甲斐があったとおもったほどです。

『贈与論』現代に応用するように頭の中で考えてみるとすごく深いのです。
温故知新的ですし。これって現代の、成熟社会に進んでいくこれからに役に立ちそうと思えました。
トレーサビリティには、隠されたというか、
みんな気付いていなそうなコトがこの『贈与論』であぶり出されています。
誰それのとった魚です、誰それの農家で作られた葡萄です、誰それの牧場の牛乳です、などなど、
そういうのって最近増えてきたけれども、そういう連帯の感覚があってこそ生産性は伸びるのだ、
というのがモースの考えのひとつです。
技術革新があっても、賃金が増えても、そういう人から人への贈与の感覚が欠如していて、
誰のために作ってるんだかわからないという状態だと、
生産性は低下していくんだよとのことで、それってなんかわかる気がするんですよね。

たとえば『ほぼ日』の商品って顔が見えるでしょう。
ああいうのは、古代からの贈与の感覚である
「自分自身の何か、自分の生命、自分の時間がモノに宿っていてそれを交換している」というのと
繋がると思うんです。モースの『贈与論』はそういうところで深くて温故知新。
そういう、顔が見える商品、商品に込められた生産者の時間や生命力みたいなのを
感じながらやっていくという経済活動って古代の感覚で、
そこに回帰・再考することで経済の活力、みんなの働く意欲も増すんじゃないかって思えてきます。
イノベーション以上に大事なんじゃないだろうか。根本なんです。

現代でも、このモースの『贈与論』を源として、
連帯というものに注目して論じる本を出している研究者もいるようです、あとがきによると。
僕なんかもこの本を読んでハっとしましたから、すごく重要なコンセプトのように思えます。
現状や21世紀の停滞した先進国の経済や労働状況を打破するヒントになるんじゃないかな。

モースは社会主義者ですが、共産主義者でもマルクス主義者でもないということです。
なんだかわかりにくいですが、違うものだそうです。
そういえば、日本は社会主義国だって言った自民党の議員の人がいましたが、
現代にモースがやってきて、日本という国の有り様を見たら、
なんていったでしょうね、意外と気に入りそうな気がするんですけども。


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