オーストラリアにいる卒業生から、年賀状の返事が届いた。
年賀状は実家から転送されたのだろう。
7年?ほど前のこと、
彼女は大学を2年で中退しドイツ留学、留学中に大学への編入を思い立った
とのことで、編入試験の過去問の数学を教えて欲しいとのメールをよこした。
添付された問題は大学2年を終えての数学、つまり教養課程の数学だったが、
やってみると私にはやや難しかった。忘れていたか、ろくに学んでいなかった
ようだ。復習やら何やらで回答に時間がかかるようだと分かった。
教養課程の数学が分かるには高校時代に数学3と数学Cを履修しておく
必要があるのだが彼女は履修していなかったので、教えるのに自信もなかった。
思えば、私が学んだ大学ではいわゆる教養課程というものがハッキリして
はいなかったようだ。専門の数学を学ぶためにはどんな基本が必要な
のかも分からないまま卒業した。
他大学の理学部数学科とは違い、文理学部理科数学課程というところで学んだ
ので、専門の科目も教養程度でしかなかったのかも知れない。
加えて、大学紛争の時代であり、授業も中断した時期があったりした。
私は「ナンチャッテ数学科卒業生」なのだ。
その後、彼女は志望校を変更し、数学を必要としない別の大学の
編入試験を受けることになった。私は内心ホッとした。
帰国してからは国立大学の3年への編入試験を受験し見事に合格した。
優秀な生徒である。
このことがきっかけで、退職後、私は大学時代の数学の復習を始める
気持ちが高まった。その準備として、高校3年間の数学の復習を始め、
3ヶ月ほどで終らせることが出来た。
彼女のおかげで大学の数学の復習にも自信が持てるようになった。
私は教師としては十分な働きをしたという思いがなかったので、「教え子」
という言葉は使わず「卒業生」と言っているが、「学ぶ」ということでは、
この時は教え子に教えられた思いがする。
さて彼女だが一旦就職した後、再び海外に出ている。外国では事件も
報道されているので、若い女性の一人暮らしは親ではないが心配である。
ドイツでのドイツ語とオーストラリアの英語力でのキャリアを財産にした
彼女の活躍を楽しみにしている。