先月末、「和食とワイン」をテーマに、日本ソムリエ協会関東支部の例会セミナーが都内で開催されました。
講師は、ソムリエ世界一となって20周年を迎えた田崎真也氏と、京都の日本料理店「木乃婦」の店主である高橋拓児氏。
両氏は2年前から協会機関誌の対談を連載してきましたが、今回は約750名の会員の前での公開セミナーとなりました。
まず、和食とは?
定義付けが難しいと高橋氏は言います。
ザッとまとめてみましょう。
多様性がある
北海道から沖縄まで、気候も土壌も栽培方法も異なるため、地域によってさまざまな食材があり、その土地ならではの食べ方、伝統食があり、多様性を生かした和食がある。
健康的である
一汁一菜、一汁三菜など、米、味噌をはじめとした発酵食品や、植物性タンパク質、少量の油などで構成される和食は、健康にもいいものである。
季節感がある
日本は季節変動が激しく、1年の中に二十四節気があるように、気候の変化に合わせて体調を整える対応を食事でも行なっている。
年中行事と連動している
正月(1/1)、桃の節句(3/3)、端午の節句(5/5)、七夕(7/7)、重陽の節句(9/9)といった、歳時記に応じた料理がある。
こうしたことが評価され、和食はユネスコの世界文化遺産に登録されました。

和食には、かつお節や昆布の出汁、味噌、しょうゆ、みりんといった調味料が使われます。
昆布には、グルタミン酸、アスパラギン酸が、かつお節には、イノシン酸、ヒツジン酸が含まれています。
西洋のブイヨンは、昆布とかつお節より多い14種のアミノ酸!を含むため、複雑な味わいになります。
例えば、蕪(かぶ、かぶら)を昆布&かつお出汁、ブイヨンで煮た場合、昆布&かつお出汁は素材そのもののおいしさを生かすので、かぶらの味が際立ちます。
ブイヨンは素材のおいしさを吸い取り、素材はブイヨンの味に同化するようになります。
中華料理の白湯もブイヨンと同様です。
それゆえ、フランス料理ではソースにワインを合わせます。
洋食は油脂と塩のコンビネーションで、和食は出汁と塩のコンビネーションです。
和食は塩で味を決め、必要に応じてしょうゆとみりんを加えます。
和食の出汁には、真昆布のヨード香、かつお節の血合いの鉄さびの香り、かつお節の燻製香が感じられることがありますが、特に鉄さびの香りがあると、しょうゆを加えてバランスを取る必要が出てきます。例としては、かつお出汁のそばつゆ、天つゆなどは、しょうゆやみりんを配合しているので、よくわかりますね。
かつお節のスモーキーフレーバーをはじめ、金属的なヨード香、はちみつ、ほんのりとしたカラメルの香りは、“ワインの熟成香”におさまってくる香りですから、ワインとのマリアージュを考える時は、この共通点で合わせるとよさそうです。
しょうゆには、うすくち、こいくち、白口、たまり、再仕込み、の5タイプがあります。
うすくちは味をつけ、こいくちはコクを追加するしょうゆです。
しょうゆが熟成するプロセスは、ワインに似ている?いや、むしろコーヒーに似ている?
何の話かというと、「メイラード反応」のことです。
メイラード反応とは、アミノ酸類と糖類が化学的な変化により、食品が褐変する非酵素的反応のこと。
例えば、瓶詰め後のシャンパーニュの色がだんだんと褐色がかってきたり、熱処理を加えてつくるポルトガルのマデイラワインの色が熟成期間などにより色に深みを増したりするのも、メイラード反応によるものです。
しょうゆにもメイラード反応が起きていますから、メイラード反応を起こしているワインとのなじみがよくなります。
日本の調味料にはメイラード反応を起こしたものが多く、みりんも、酒もそうです。
これらの調味料を使い、調理時にさらに砂糖を加えた料理には“甘さ”があります。
甘さのある料理を辛口ワインと合わせると、ワインの渋みや酸味が目立ち、バランスが悪くなります。
この場合は、甘いワインに合わせるとバランスがよくなります。
味噌の場合は、チーズと似たコンビネーションを考えるといいようです。
味噌も色々な種類がありますが、甘さのある白味噌は甘口のワインに、黒っぽい色の八丁味噌はメイラード反応が起きているので、ある程度熟成の進んだワインが合うようです。
合わせ味噌で田楽を作るなら、甘口のレチョート・ディ・ヴァルポリチェッラ、木の芽を加えるならニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランや仏ロワールのシノンのカベルネ・フラン、柚子味噌ならグリューナーフェルトリナーやリースリング。
なお、和食はうまみを重視し、酸味はあまり料理の中に使われません。
ですから、酸味の少ない和食には、酸味の強いワインは合わせにくいことがわかります。

セミナーでは、出汁の試飲があり、それにしょうゆを垂らしたりしながら、シャンパーニュ、日本のマスカット・ベイリーAの赤ワイン、マデイラの5年熟成の3種をマッチングさせました。
その後、刺身、八寸、お椀、焼物…といった和食に合わせながら(話のみ)、講師2名がワインとのマッチングを語りました。
内容が多いので割愛させていただきますが、詳しく知りたい方は、下記で紹介する両氏が著者の『和食とワイン』を参考にしてください。

書名:「和食とワイン」
著者:田崎真也 高橋拓児
発行:日本ソムリエ協会
出版年月:2015年7月
版型:B5変形版(天地257ミリ左右148ミリ)
ページ数:本文192ページ
本体価格:3300円 (税別)

家庭では、料亭のような流れの料理ではなく、もっとくだけた和食(きんぴら、肉じゃが、豚しゃぶetc...)が食卓に出てきますが、和食とワインを組み合わせる際には、以下のルールを覚えておくといいですね。
かつお出汁の料理には、共通する熟成香のあるワイン
メイラード反応がある調味料を使った料理には、ある程度熟成感のあるワイン
酸味のない、少ない料理には、酸の穏やかなワイン
甘さのある料理には、甘さのあるワイン
まずは気軽にあれこれ試してみましょう
講師は、ソムリエ世界一となって20周年を迎えた田崎真也氏と、京都の日本料理店「木乃婦」の店主である高橋拓児氏。
両氏は2年前から協会機関誌の対談を連載してきましたが、今回は約750名の会員の前での公開セミナーとなりました。
まず、和食とは?
定義付けが難しいと高橋氏は言います。
ザッとまとめてみましょう。
多様性がある
北海道から沖縄まで、気候も土壌も栽培方法も異なるため、地域によってさまざまな食材があり、その土地ならではの食べ方、伝統食があり、多様性を生かした和食がある。
健康的である
一汁一菜、一汁三菜など、米、味噌をはじめとした発酵食品や、植物性タンパク質、少量の油などで構成される和食は、健康にもいいものである。
季節感がある
日本は季節変動が激しく、1年の中に二十四節気があるように、気候の変化に合わせて体調を整える対応を食事でも行なっている。
年中行事と連動している
正月(1/1)、桃の節句(3/3)、端午の節句(5/5)、七夕(7/7)、重陽の節句(9/9)といった、歳時記に応じた料理がある。
こうしたことが評価され、和食はユネスコの世界文化遺産に登録されました。

和食には、かつお節や昆布の出汁、味噌、しょうゆ、みりんといった調味料が使われます。
昆布には、グルタミン酸、アスパラギン酸が、かつお節には、イノシン酸、ヒツジン酸が含まれています。
西洋のブイヨンは、昆布とかつお節より多い14種のアミノ酸!を含むため、複雑な味わいになります。
例えば、蕪(かぶ、かぶら)を昆布&かつお出汁、ブイヨンで煮た場合、昆布&かつお出汁は素材そのもののおいしさを生かすので、かぶらの味が際立ちます。
ブイヨンは素材のおいしさを吸い取り、素材はブイヨンの味に同化するようになります。
中華料理の白湯もブイヨンと同様です。
それゆえ、フランス料理ではソースにワインを合わせます。
洋食は油脂と塩のコンビネーションで、和食は出汁と塩のコンビネーションです。
和食は塩で味を決め、必要に応じてしょうゆとみりんを加えます。
和食の出汁には、真昆布のヨード香、かつお節の血合いの鉄さびの香り、かつお節の燻製香が感じられることがありますが、特に鉄さびの香りがあると、しょうゆを加えてバランスを取る必要が出てきます。例としては、かつお出汁のそばつゆ、天つゆなどは、しょうゆやみりんを配合しているので、よくわかりますね。
かつお節のスモーキーフレーバーをはじめ、金属的なヨード香、はちみつ、ほんのりとしたカラメルの香りは、“ワインの熟成香”におさまってくる香りですから、ワインとのマリアージュを考える時は、この共通点で合わせるとよさそうです。
しょうゆには、うすくち、こいくち、白口、たまり、再仕込み、の5タイプがあります。
うすくちは味をつけ、こいくちはコクを追加するしょうゆです。
しょうゆが熟成するプロセスは、ワインに似ている?いや、むしろコーヒーに似ている?
何の話かというと、「メイラード反応」のことです。
メイラード反応とは、アミノ酸類と糖類が化学的な変化により、食品が褐変する非酵素的反応のこと。
例えば、瓶詰め後のシャンパーニュの色がだんだんと褐色がかってきたり、熱処理を加えてつくるポルトガルのマデイラワインの色が熟成期間などにより色に深みを増したりするのも、メイラード反応によるものです。
しょうゆにもメイラード反応が起きていますから、メイラード反応を起こしているワインとのなじみがよくなります。
日本の調味料にはメイラード反応を起こしたものが多く、みりんも、酒もそうです。
これらの調味料を使い、調理時にさらに砂糖を加えた料理には“甘さ”があります。
甘さのある料理を辛口ワインと合わせると、ワインの渋みや酸味が目立ち、バランスが悪くなります。
この場合は、甘いワインに合わせるとバランスがよくなります。
味噌の場合は、チーズと似たコンビネーションを考えるといいようです。
味噌も色々な種類がありますが、甘さのある白味噌は甘口のワインに、黒っぽい色の八丁味噌はメイラード反応が起きているので、ある程度熟成の進んだワインが合うようです。
合わせ味噌で田楽を作るなら、甘口のレチョート・ディ・ヴァルポリチェッラ、木の芽を加えるならニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランや仏ロワールのシノンのカベルネ・フラン、柚子味噌ならグリューナーフェルトリナーやリースリング。
なお、和食はうまみを重視し、酸味はあまり料理の中に使われません。
ですから、酸味の少ない和食には、酸味の強いワインは合わせにくいことがわかります。

セミナーでは、出汁の試飲があり、それにしょうゆを垂らしたりしながら、シャンパーニュ、日本のマスカット・ベイリーAの赤ワイン、マデイラの5年熟成の3種をマッチングさせました。
その後、刺身、八寸、お椀、焼物…といった和食に合わせながら(話のみ)、講師2名がワインとのマッチングを語りました。
内容が多いので割愛させていただきますが、詳しく知りたい方は、下記で紹介する両氏が著者の『和食とワイン』を参考にしてください。

書名:「和食とワイン」
著者:田崎真也 高橋拓児
発行:日本ソムリエ協会
出版年月:2015年7月
版型:B5変形版(天地257ミリ左右148ミリ)
ページ数:本文192ページ
本体価格:3300円 (税別)

家庭では、料亭のような流れの料理ではなく、もっとくだけた和食(きんぴら、肉じゃが、豚しゃぶetc...)が食卓に出てきますが、和食とワインを組み合わせる際には、以下のルールを覚えておくといいですね。
かつお出汁の料理には、共通する熟成香のあるワイン
メイラード反応がある調味料を使った料理には、ある程度熟成感のあるワイン
酸味のない、少ない料理には、酸の穏やかなワイン
甘さのある料理には、甘さのあるワイン
まずは気軽にあれこれ試してみましょう

