8月19日 おはよう日本
タイの首都バンコクで行われたオークション。
現地の人たちの熱い視線の先には日本のニシキゴイ。
この日の最高額は日本円で45万円。
実にタイの平均的な初任給の1年分にもなる。
経済成長が続く東南アジア。
所得が伸びるなか富裕層の間でニシキゴイを飼う人たちが増えているという。
オークション会場にいた宝飾品会社の経営者の屋敷。
美術品が並ぶ部屋を進むとその奥には選りすぐりのニシキゴイが20匹余。
なかには1匹100万円以上するものもある。
金に糸目は付けないという。
「日本のニシキゴイは質が一番高いです。」
手間をかければより美しく成長する。
努力すれば将来は良くなり
自らと明るい未来がコイに重なるという。
「コイが期待通りに成長すると喜びを感じます。
真心を込めれば込めるほど美しい姿を見せてくれます。」
そんな成長するアジアで販売を目指す会社が愛知県小牧市にある。
ニシキゴイを専門に飼育販売する会社である。
厳選して仕入れた3万匹を飼育。
東南アジアを中心に欧米など世界15カ国に輸出。
いまや売り上げの7割を海外が占める。
社長の成田隆輝社長(43)。
23歳で父親から会社を引き継いだ際いきなり不況に。
国内でコイが売れないのである。
(ニシキゴイ販売会社 成田隆輝社長)
「コイを飼うにあたり池が必要。
日本には池を作る場所も無い。」
そこで目を向けたのが海外だった。
父親の代には値段の手ごろな稚魚をたくさん売る方法だったが
アジアの国々の発展を見るうちに正反対の戦略に切り替えた。
数を絞り高級な魚に育て
海外の富裕層に売り込むのである。
そのために取り組んだのが世界一権威があるという日本の品評会で優勝すること。
そうすれば世界中に評判が広がりPRになる。
成田さんは父親から受け継いだ技術で丹念な飼育を心がけている。
天候や育ち具合に合わせこまめに水温を調節。
水質も徹底管理し
コイのストレスを減らすことで色味や模様を美しく際立たせる。
これまで13匹が優勝。
勝つたびに世界の愛好家の間で知られていった。
「1番をとれれば宣伝をしなくともよいので
全世界の愛好家にわかってもらえる。
ビジネスにはすごくつながってくる。」
コイの輸出に成功した成田さんはいま
全く新しいビジネスモデルに挑戦している。
海外の愛好家からコイを預かり品評会で1位を目指す“委託飼育”である。
次々と依頼が舞い込み
現在100匹が小牧市の池にいる。
なかには持ち主が1位を目指し1千万円で買った最高級のコイも。
1千万円のコイのオーナーであるタイの弁護士パラドーンさん。
自宅の池で自慢の最高級コイの鑑賞が出来なくても
日本の品評会でぜひ賞を取りたいという。
(弁護士 パラドーンさん)
「日本の品評藍で優勝するのが夢ですが簡単ではありません。」
所得が増えるなかで心の満足を求め始めたアジアの人たち。
成田さんはそうした価値観を見極め
これからも極上のコイを育てていきたいという。
(ニシキゴイ販売会社 成田隆輝社長)
「オーナーの夢をかなえるためにすごく責任を感じながら
飼育技術を磨いて
1番目指すことが会社の利益につながる。
そこに1番重きを置いてやっている。」
ニシキゴイの品評会はアジアやヨーロッパでも多く開かれるようになっているが
各国の愛好家は
本場の日本で開かれる「全日本総合ニシキゴイ品評会」など
伝統ある大会での優勝を目指しているということである。