9月2日 編集手帳
武田信玄の重臣が筆録したとされる『甲陽軍鑑』に、
国を滅ぼす大将の特徴が4点記されている。
<愚か><臆病>の他、
<強すぎる><利口すぎる>も当てはまるという。
強すぎる大将は知恵に優れるが、
気性が激しい。
常に強気に出るので忠臣を討ち死にに追いやり、
周りは<猿のごとくなる侍>ばかりになる。
例として武田勝頼を挙げた。
利口すぎる大将にはうぬぼれがある。
何事も自分の才覚頼みで家臣に疑心を抱き、
のっぴきならぬ対立を招く。
指導者には、
バランスの取れた資質が肝心だということなのだろう。
この人も、
大将として失敗した過去を持つ。
民進党の前原誠司新代表である。
優秀さは誰もが認めていたのに、
稚拙な運営で民主党代表を追われた。
前原氏は「失敗したからこそ、その痛みや怖さが分かる」と強調する。
党存亡の危機にひんしているだけに、
有言実行が問われよう。
<下々の批判よくよく聞き届け、
縦(たと)いいかように腹立ち候とも、
堪忍あり>。
こんな一文も『甲陽軍鑑』の中にある。
まずは辛抱強く、
「寄り合い所帯」と呼ばれる党内と向き合うことから始めてはどうだろう。