8月21日 首都娟ネットワーク
町が寝静まる午前2時。
築地市場でいち早く動き始める場所がある。
氷販(ひょうはん)と呼ばれる氷の販売所である。
集まってきたのはこれから魚を仕入れる築地の仲卸たち。
夏場に築地全体で使われる氷の量は1日100トンに及ぶ。
150年以上続く仲卸の5代目
門井直也さん。
魚の種類に合わせてどう氷を使うかが腕の見せ所だと言う。
(仲卸 5代目 門井直也さん)
「弱い魚はどうしても水に浮かす感じにしないとつぶれちゃう。
水を吸いやすいものは下氷の方がいい。」
たとえば高級魚のノドグロ。
皮が薄いので下に氷をひく下氷で冷やさないと水を吸って味が落ちてしまう。
一方
表面が傷つきやすい青魚は氷を入れた海水に浮かべる水氷で冷やす。
ここで登場するのがプロの技である。
(仲卸 5代目 門井直也さん)
「氷と一緒に入れたのは塩です。
あと愛情。」
入れる塩の量が多いほど水温を下げることができる。
門井さんはこの塩の量を魚によってほんの少し変えている。
兵庫県産とと北海道産の真イワシ。
塩の濃度はそれぞれ1,1%と1,5%。
北海道産の方の塩を増やしてより冷えるようにした。
(仲卸 5代目 門井直也さん)
「北海道産は身が少し水っぽい。
おなかが薄い感じで少しゆるめなのでぴしっと冷やす。
兵庫県産はきめが細かくてがっちりしているタイプ。
塩が濃すぎると凍ってきちゃう。」
実際に身を見ると
それぞれ確かに身の質が違う。
塩分の調整は自分の舌を頼りに行う。
仲卸歴30年の技である。
一方エビを扱う仲卸。
普段の水温はエビが好む20度ほどに設定している。
氷を使うのは出荷直前。
大量に入れて一気に10度まで冷やすのである。
(活魚・エビの仲卸 安田健二さん)
「温度が高いときにどうしてもエビが暴れちゃう。
なかなか箱におさまってくれない。」
暴れるのを防ぐことでエビの質も保つことができる。
(活魚・エビの仲卸 安田健二さん)
「うちでは冷やしてなるべく暴れさせない状態で
いい状態で
お客さんに提供することを心がけている。
氷は夏場なくてはならない存在。
これがないと致命傷。」
築地の暑い夏を支える冷たい氷。
そこには新鮮な魚介を届けるためのプロの技があった。