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延長戦の死闘はもう見られないのか

2017-09-30 06:00:00 | 編集手帳

9月21日 編集手帳

 

 球場を包んだ高揚を伝えて今も色あせない。
『最高試合』という阿久悠さんの詩がある。
〈君らの熱闘の翌日から
 甲子園の季節は秋になった〉

高校野球を愛した作詞家をして最高と言わしめた試合は、
1979年夏の全国大会3回戦である。
箕島が延長に入って2度離されながらも、
本塁打で追いつき、引き分け再試合寸前の十八回に星稜を破った。
〈熱く長い夏の夜
 人々の胸に不可能がないことを教え
 君らは勝った〉
と詩はたたえる。

球史を彩る延長戦の死闘はもう見られないのだろうか。
来春の選抜大会でタイブレイク制が導入される。
延長十三回から、
あらかじめ走者を置いて攻撃を始め、
決着を早める制度である。

選手の負担を軽減し、
故障を防ぐのが目的らしい。
確かに一人が気力で連投を重ねる時代ではない。
選手の将来を守る意味は大きいが、
ときに〈不可能がないこと〉を教え得る高校野球の姿が変わっていくのは少々さみしい。

第100回を迎える来夏の全国大会でも採用されるという。
効果を検証し、
健康管理策の議論をつづけてほしい。
色あせぬ最高試合の系譜が連なるよう祈りつつ。



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