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サウジアラビアで映画産業振興

2017-09-06 06:00:00 | 報道/ニュース

8月22日 キャッチ!


イスラム教の発祥の地である中東のサウジアラビア。
世界各地から多くの巡礼者が訪れる聖地メッカなどがあり
イスラム教の教えが厳格に守られてきた。
首都リヤドやジッタなどの大都市でも映画館は1軒も見当たらない。
宗教界が映画館を“堕落”と表現しており
特に西洋で作られた映画を公の場で上映することが認められてこなかったためである。
また不特定多数の未婚の男女が建物の中で同席することがないサウジアラビアは
映画館の存在そのものがこれまで否定的に見られてきた。 
しかし街なかには数は多くはないものの映画を販売するビデオ店を見かけることはある。
店内ではアメリカの映画など外国映画が数多く売られていた。
(ビデオ販売店 店員)
「アメリカ映画が売れます。
 アクション映画が特に人気で
 映画館がないので皆家で楽しんでいます。」
伝統的価値観が色濃く残っている社会でも
一般の人々の西洋の文化や映画への関心はますます高まっている。
サウジアラビアではこうした社会のニーズをくみ取ろうとする新たな動きが出始めている。 
リヤドの中心街で映画の上映イベントが行われた。
若者たちに映画産業の魅力を紹介するのが狙いである。
会場では映画の撮影方法を学んだり
アニメーションの制作を体験するワークショップが開かれ
男女問わず多くの若者たちが参加していた。
(参加者)
「映画を将来作ってみたい。
 いまこの国には新しい波が来ていると実感しているわ。」
映画産業を振興するするその新たな動きを仕掛けているのが
6月に正式に王位継承者となったムハンマド・ビン・サルマン皇太子である。
皇太子は一昨年より発言力を急速に強め
経済や軍事 外交といった政府の重要政策に関与してきた。
今回のイベント開催は国内で新たな産業の創出を目指すもので
ここ数年の原油価格の低迷を受けて
政府が石油に依存する経済からの脱却を図るために行われた。
皇太子が直轄する財団の今回のイベントを主催した担当者は
若者たちの高い関心に手ごたえを感じている。
(ミスク財団 ナダ・トゥジャリさん)
「若者たちが将来
 映画やアニメの分野で活躍できるよう後押ししたい。」
こうした動きはサウジアラビアの社会にもう1つの大きな変化をもたらそうとしている。
それは女性の社会進出である。
サウジアラビアでは女性が車を運転することが禁止され
家庭によっては男性の許可がないと外出できないなど特別な状況に置かれているが
いま映画作りを通して社会に進出しようとする女性が出てきた。
大学3年生のヌーラ・ムワンナトさんとヌール・アミルさん。
2人は映画監督を目指し大学で映画制作を学んでいる。
彼女たちが製作した短編ドキュメンタリー映画「バス」。
女性専用の通学バスを利用する女子学生たちの日常をありのままに捉えている。
(短編ドキュメンタリー映画「バス」より)
「お菓子やコーヒーをもってきて
 みんなで楽しく分け合うの。」
作品は学生たちが歌を口ずさむシーンなど
サウジアラビアの女性の何気ない日常を映し出している。
(映画「バス」監督 ムーラ・ムワンナトさん)
「私たちは苦しんでいるばかりでなく
 厳しい中にも喜びを見つけています。」
ふだんカメラが入ること自体が難しい女性の生活空間に密着した作品とあって
注目を集めている。
2人が通う大学で行われた発表会では地元紙の記者や映画監督から高い評価を受けた。
(地元新聞記者)
「まるで自分がバスの後ろに座っていたかのように感じました。」
ただ国内での上映の機会は
映画祭や大学のイベントを除けばいまだに限られているのが現状である。
2人は今後映画の上映の機会が増えるだけでなく
大学卒業後に女性が映画製作の現場で働いていけるよう
社会が変化することを望んでいる。
(映画「バス」監督 ヌール・アミルさん)
「ドバイやベルリンなど大型の映画祭に出品して
 これまで一般には知られていない状況を知ってもらいたい。
 サウジアラビアにも映画は出来るわ。」


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