9月2日 おはよう日本
今年5月に運行が始まった東日本を走る豪華寝台列車トランスイート四季島。
ここで採用されたのが玄米茶である。
(トランスイート四季島 岩崎均総料理長)
「おいしいですね。
何種類か飲ませていただきまして
飲んだ瞬間に『列車で使いましょう』と即答してしまいました。
雑味のないクリアな味
一番打たれた。」
玄米茶を作ったのは
塩釜市で80年以上にわたって続くお茶屋の老舗「矢部園」3代目
矢部亨さんである。
茶葉に氷とミネラルウォーターを入れる“氷水仕立て”と呼ばれる淹れ方で
強い香りと深い味を引き出す。
(茶を製造・販売 矢部亨さん)
「この氷水で出すとカフェインが出ない。
カフェインは味の表記でいうと“苦み”。
苦みが出ないということはうまみの輪郭が際立つ。」
矢部さんの祖父の代から店を構えてきた塩釜は
東日本大震災で津波による大きな被害を受けた。
矢部さんの店は天井まで浸水。
お茶の道具や大切な茶葉もすべて流されてしまった。
震災が起きたあの日
矢部さんは東京でお茶の専門家「茶匠」の試験を受けていた。
しかし香り高いお茶を入れられる資格を手にしたその日から店は休業。
その期間は4か月間に及んだ。
自分の代で店をたたむことも頭をよぎったが
再建に向けてエネルギーになったのも“地元を復活させたい”という思いだった。
(矢部亨さん)
「お店もどこもなくて寄るところもなくて
仮設住宅にずっといなければいけない。
だからちょっとでも
“ほっとできるわよね ずいぶんがんばって 矢部園さんうれしい”
“ここに明かりがともっていると落ち着くわね”
というような気持ちになってもらえればうれしい。」
矢部さんは冷たい氷水で高い香りと深い味を引き出すため
茶葉と玄米にこだわった。
矢部さんは
年に1度最も良いタイミングで摘んだお茶の葉のうち
わずかしかとれない先端のみを使う。
玄米も味や香りが濃いという東松島産の“かぐや姫”を使う。
矢部さんのこだわりを支えたのは
同じく被災しながらも質の高い原料を供給し続けた生産農家だった。
玄米を収めている木村正明さん。
震災の津波でほとんどの田んぼが塩害の被害にあった。
震災前は3人いた生産農家は震災後には木村さんただ1人となったが
矢部さんから玄米の香り高さを評価されたことが復活の1つの原動力となった。
(玄米を生産 木村正明さん)
「生産者冥利に尽きるというか
それが仕事でいけるのであれば歯を食いしばってできるとこまでやろうかと。
言葉では説明できないエネルギー
生きる
足を踏み出す力強さに魅入られて
私もあとをついて行くような感じ。」
震災を乗り越えて復活した矢部さんのお茶。
「伊達茶」と名付けられこの夏から一般販売が始まった。
(客)
「すごく複雑な味
甘みと
いい意味でスカッとした苦み。」
その完成披露会。
生産農家の木村さんも招かれ喜びを分かち合った。
(茶を製造・販売 矢部亨さん)
「風評もあってなかなかお茶が売れにくかった。
そこを乗り越え
農家が命を懸けて作っているお茶
われわれも伝えるに値するものだなと。
全国から“お願いだから売ってください”というお茶になってほしい。