6月5日 キャッチ!ワールドEYES
10年以上に及ぶ交渉の末
3年前に欧米など6か国とイランの間で結ばれたイラン核合意。
核合意では
イランが核開発を制限する見返りに
アメリカやEUなどはイランへの経済制裁を解除した。
しかし5月
アメリカは国際社会の反対を押し切って離脱し
経済制裁を再開すると表明。
これを受けて関係各国とイランは
アメリカ抜きの合意維持に向けて協議を進めている。
イランにはヨーロッパから自動車やエネルギーなどの基幹産業で進出が相次ぎ
EU域内からの貿易額は約2倍にまで増えていて
イランの経済的な利益を今後も確保でできるかが課題になっている。
イランではすでに貿易や金融取引で影響が出始めている。
テヘラン市内で医療品を扱う会社。
ドイツやスイスなどヨーロッパを中心とした国から医療用のチューブやガーゼなどを輸入している。
2年前に経済制裁を解除されてからは取り扱う商品が増え
売り上げは約20%増加。
従業員を70人から100人に増やした。
しかしアメリカのトランプ政権が経済制裁の再開を表明した5月中旬
取引先のスイスの銀行からある文書が届き
衝撃を受けた。
“まことに残念ながら今後の取引を停止せざるを得なくなりました”
5月以降の新規の取引を全て打ち切るという内容だった。
ヨーロッパの銀行がイランとの間で取引を停止すれば
貿易の決済は仲介業者に頼らざるを得なくなる。
支払いが難しくなり
海外の販売元との関係を維持することも厳しくなると言う。
(衣料品輸入会社代表)
「制裁で医療品は対象外ですが
金融機関への影響を間接的に受けます。
外国企業はイランとのビジネスに消極的になっていきます。」
イランとヨーロッパ主要3カ国は
アメリカが離脱した直後から合意維持に向けた協議を開始。
イラン側はアメリカの制裁から企業活動を守る対策を早期に示すよう求めている。
(イラン ザリーフ外相)
「核合意ではイラン国民に与えられるべき経済利益が示されています。
核合意にとどまっている各国が具体的行動を示せるか
注目しています。」
しかしこうした協議とは裏腹に
ヨーロッパの企業がイランから撤退する動きが加速している。
フランスのエネルギー大手「トタル」は
アメリカの制裁がこのまま適用されれば撤退せざるを得なくなると表明。
デンマークの海運大手「マースㇰ」も
イラン市場からの撤退を表明した。
ヨーロッパの企業はなぜイランからの撤退を加速させているのか。
5月にテヘランで開かれた石油見本市では
企業から苦しい胸の内が聞かれた。
2年前にイランに進出したオーストリアのエネルギー関連企業。
主力の石油化学では
売り上げの多くをアメリカで稼ぐ一方
まだ進出して日が浅いイランでは収益を得られていない。
そのためアメリカの経済制裁はなんとしても避けたいという。
(オーストリア エネルギー関連企業の幹部)
「制裁が米市場とつながっているなら
米を優先せざるを得ません。
制裁は脅威です。」
イラン側にさらに追い打ちをかける事態が起きている。
アメリカのポンペイオ国務長官は
新たに発表した対イラン戦略の中で
制裁を過去最大レベルまで強化していく方針を明らかにしたのである。
こうした状況にイラン国内では厳しい見方が広がりつつある。
5月にテヘランで開かれたシンポジウム。
「核合意を守る」と題されたイベントでは
国内を代表する経済学者らが
ヨーロッパ企業をイランにつなぎとめる対策を提案した。
(経済学 専門家)
「石油収入を公共事業に割り振り
欧州の企業が優先的に事業を行なえるようにします。
そうしてアメリカ市場に対抗するのです。」
しかし会場からは
ヨーロッパの企業はいずれアメリカの圧力に耐えられなくなるだろうという意見が出された。
「このような提案でアメリカの妨害を乗り越えられるのか?」
(参加した市民)
「欧州を米から切り離すことができるかもしれないと望んでいますが
それは絶対に起こりえないでしょう。」
専門家は
イランで核合意を維持するかはすべてヨーロッパの対応にかかっていると指摘する。
(テヘラン大学 モハマド・マランディ教授)
「ヨーロッパは努力しているが
重要なのはイランが受け入れられる対策を示せるかです。
経済的な利益が得られないのであれば
間違いなくイランは核合意から離脱します。」