6月20日 キャッチ!ワールドEYES
#MeToo
SNSでこの言葉を使って世界中の女性たちがセクハラを告発する動きが広がり続けている。
きっかけを作ったのはニューヨークタイムズと雑誌ニューヨーカーの記者たちである。
ハリウッドの大物プロデューサーやテレビ番組の看板キャスターもセクハラを告発する記事を書き
5月 アメリカの優れた報道に贈られるピューリツァー賞を共同で受賞した。
社会を変えた報道がどう生まれたのか。
アメリカはセクハラの意識が変わりつつある。
5月に行われたピューリツァー賞の授賞式。
ニューヨーク・タイムズのエミリー・スティール記者は
FOXニュースのビル・オライリー氏のセクハラを明らかにした記事で
ピューリツァー賞を受賞した。
FOXニュースでは一昨年CEOが元キャスターへのセクハラで辞職。
オライリー氏も10年余前にセクハラがあったと報道されていたが
その後聴かれなくなっていた。
スティールさんたちは“背景に何かあるかもしれない”と取材を始めた。
ところが
(ニューヨーク・タイムズ紙 エミリー・スティール記者)
「女性たちは自分の話を信じてもらえないと思い
誰も話したがりませんでした。
話すことでキャリアを失うのではと恐れていました。
とても難しい取材で8か月もかかりました。
とにかく事実を積み重ねました。」
スティールさんたちは実名で告発してくれる女性を探そうと
オライリー氏の番組出演者100人を超える人たちに連絡した。
そしてある女性が「セクハラを受けた」と打ち明けた。
(ニューヨーク・タイムズ紙 エミリースティール記者)
「オライリー氏は女性をホテルに誘いました。
女性が拒否すると
オライリー氏の番組やFOXニュースへの出演はなくなりました。
女性は私にこの話を公にしたくないと言いました。
私はあなたは声を上げられると説得しました。」
オライリー氏のセクハラは組織ぐるみで隠ぺいされていた。
会社は女性たちに口止め料として合わせて45億円以上支払っていたのである。
この報道の後
番組からスポンサーが次々に離れ
オライリー氏は辞任に追い込まれた。
(ニューヨーク・タイムズ紙 エミリー・スティール記者)
「会社がセクハラをする人をどう組織的に守っていたか
明白にしたかったのです。
そうすることで女性たちが声を上げる環境を整えることができました。」
記事から始まったセクハラを告発する動きはあらゆる分野に広がり
セクハラを許さないとする組織変革にもつながっている。
スタンフォード大学で化学を教えているマリア・デュレイ研究員。
研究員になりたてのころ上司に体を触られるなどのセクハラを受けた。
(スタンフォード大学 マリア・デュレイ研究員)
「体を触られたり
不快なこと
皆さんがよく言うハラスメントですね。
それが1年も続きました。
仕事がとても不快でした。」
自分に起きた被害を信じてもらえないかもしれないと悩んだデュレイさん。
#MeTooの広がりを受けて
大学のウェブサイトに実名で被害を告発した。
こうしたなか大学は調査や対策を進め
この1年間で7人をセクハラで解雇。
セクハラが起きない組織にしようと
学内のあちこちにセクハラを防止するためのパンフレットを置き
相談態勢を充実させている。
(スタンフォード大学 マリア・デュレイ研究員)
「#MeTooのうねりがセクハラの被害を語る後押しをしてくれました。
すばらしいことで
世の中が変わるきっかけになったと思います。」
どのような行為がセクハラになるのか。
組織としてどう対応すればよいか。
全米規模の学会でセクハラの問題に取り組んできたジョージア州ベリー大学のメアリー・ボイド副学長は
男性側の意識も変わり始めていると言う。
(ベリー大学 メアリー・ボイド副学長)
「どうすればすべての人が尊重され
快く働ける環境をつくることができるのか
採用の際どうすればよいのかなど
相談が来ます。」
この日は
過去にセクハラにつながるような行為はなかったか
どうすればお互い働きやすい職場にできるか
男性の研究者と話し合った。
(ボイド副学長)
「無意識に女性が不愉快になったかもと思うことは?」
(研究者)
「学生のころ研究室に若い女性研究者と二人きりになりました。
大柄な私と暗い部屋にいましたが
彼女が不愉快なのかどうか気づきませんでした。」
男性に自分の行為を振り返ってもらうことで
女性にとっても働きやすい環境になっていくと感じている。
(ベリー大学 メアリー・ボイド副学長)
「だれもが責任ある行動を求められています。
男性もそのことに気づき始めています。」
報道から始まった#MeTooの動き。
いまアメリカの社会を大きく変えようとしている。