6月19日 キャッチ!ワールドEYES
人口約14億人の中国。
人口が増え続けるなかで深刻なのが水不足の問題である。
中国で1人が年間使える水量は 2,018㎥で
世界平均のわずか3割程度しかない。
比較的 水資源に恵まれている南部に比べ
水不足に苦しんでいる北部の都市部では
大企業やベンチャー企業が節水を目指し対策を進めている。
人口2,000万を超える中国の首都北京。
頻繁に目にするのが市民への節水の呼びかけである。
“節水は光栄だ
水を守ることは高尚だ”
“水の節約はひとりひとりの責任だ”
“節水を習慣にしよう”
水を使う洗面所はもちろん
街のあちこちに節水を求める看板や標語が掲げられている。
その背景となっているのが慢性的な水不足である。
北京の年間の降水量は約600ミリ(東京の3~4割程度)。
生活用水の確保は中国建国以来の長い課題だった。
このため中国政府は
水の豊富な長江などから全長1,400キロの水路や貯水池の整備を計画。
5兆円の予算と12年余の工期をかけて
3年前ようやく開通した。
今ではこの水路で北京の生活用水の7割をまかなうようになっている。
しかし水不足が解消されたわけではない。
そのため企業側も長年節水への取り組みを強めている。
北京近郊にある石油化学工場。
年間1,000万トンの石油精製能力を備え
国内有数の規模を誇る。
機材の洗浄や冷却などのために工場内で使われる大量の水。
その節水の中核になっている設備は
11億円余をかけて導入し
工業排水を人間が飲めるレベルにまで浄化できるとしている。
他にも数多くの浄水設備を導入し
工場内での水の再利用を徹底していると言う。
(工場担当者)
「16年前の7,000万トンから5,000万トン節約しており
使用量が相当少ない工場です。」
一方 節水に役立つある製品がいま注目を集めている。
開発したのは北京にあるベンチャー企業である。
一見すると普通の蛇口だが
霧状の細かい水滴が手の汚れを溶かし
高速で吹き付ける空気がその汚れを吹き飛ばす仕組みである。
従来の蛇口と比較してみると
10秒間手を洗った場合
水の使用料は10分の1。
公共施設などでこの蛇口を使えば
蛇口1つにつき年間120トンの水が節約できると言う。
(ベンチャー企業CEO)
「この製品には非常に大きな節水効果があります。
節水革命を生み出すことができるのです。」
現在も大学院生であるCEOは
3年前に友人とともにこのアイデアを考案した。
各国の学生が参加する発明品のコンクールで相次いで最高賞を獲得。
それに自信を深め去年6月会社を設立した。
しかし起業後に直面したのは商品化の問題だった。
コストを抑えた量産品を作ることがなかなかできなかったのである。
このため大手メーカーから招いたベテランのエンジニアのアイデアを取り入れて
デザインや構造を変更。
7月からいよいよ量産を始めることになった。
この日評判を聞きつけた投資ファンドの担当者が訪れた。
(ベンチャー企業CEO)
「最も優れている点は霧の技術です。
中国でこの技術を開発した企業は他にはありません。
特許はすでに4つあります。
すでに申請し受理されています。」
投資家たちも実際に体験した。
(投資ファンドの担当者)
「非常にいいですね。
節水も実感できます。
この分野はライバルが少ないですし
きっといい投資対象になります。」
(ベンチャー企業CEO)
「蛇口だけでなく
シャワーや洗車など日常的に水を使うあらゆる分野で大量の節水が可能です。
それをこの会社で実現していきたいのです。」
若者たちのアイデアが生んだ新たな技術。
中国の水問題の解決に向けて動き出している。