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「来た時よりも美しく」

2018-07-23 07:00:00 | 報道/ニュース

7月1日 編集手帳

 

 子供の無垢(むく)なる問いかけにたじろぐことがある。
「人数の多い方が正しいってどうして言えるの」
「正義のヒーローは悪者を殴っていいの」
「ついていい嘘(うそ)とついちゃいけない嘘って」

『答えのない道徳の問題 どう解く?』(ポプラ社)では、
著名人が自分なりの答えを披露している。
なるほどと膝を打ったり、
むむむと考え込んだり。
例えば谷川俊太郎さん。
<嘘と本当を黒と白みたいに、
 正反対なものとしてとらえるのは単純すぎる>

回答の向こうに、
それぞれの来し方が透けて見える。
個々の内面的な原理として働く道徳を、
どんなふうに教えるのか。
今春から小学校で道徳が教科になった。
国語や算数と同様、
教科書を使い、
評価もする。

現場では戸惑いの声も聞かれよう。
けれど、
ヒントになる題材は方々にありそうだ。
「日本の観客は、
 なぜ競技場のゴミを拾うのか」。
サッカーのW杯、
外国人記者の質問に吉田麻也選手が応じていた。
「日本には『来た時よりも美しく』という言葉がある」

大事な一戦を前に、
さらりと自国の美学を説ける。
そんな技量もまた、
道徳力を測る指標と言えまいか。


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