6月25日 国際報道2018
サウジアラビアでは
禁止されていたスタジアムのスポーツ観戦が今年1月に解禁
映画館の設置も4月に解禁
義務付けられていた女性の黒い衣装についても緩和の方向に向かっている。
そして車の運転も6月24日に解禁された。
この一連の改革を主導したのが
次期国王と言われるムハンマド皇太子である。
サウジアラビアは国の収入の70%以上が石油に依存していて
近年の原油安によって巨額の財政赤字を抱えている。
ムハンマド皇太子はこの石油依存からの脱却を目指していて
そのためには女性の社会進出が必要だと考えている。
女性の社会進出が進めば
労働人口が増加し
生産力が増す。
もう1つのねらいは外国からの投資の呼び込みである。
サウジアラビアが持たれがちな“閉鎖的で変わった国”というイメージは
外国の投資家にはリスクとうつり
投資を控える原因になっているとも言われている。
ネガティブなイメージを払しょくするための改革の1つが
今回の女性に運転の解禁なのである。
サウジアラビアで初めての女性専用の運転教習所。
今年 政府が女子大学の中に新たに設けた教習所である。
免許の取得を目指す女性たちがシュミレーターを使って車の運転方法を学んでいる。
(教習生)
「今日は最終日。
免許がもらえたら祖母を乗せてカフェやスーパーに行きたい。」
サウジアラビアの慣習に配慮して教官も女性である。
海外の免許を持つなど運転経験のある女性たちがかき集められた。
(教官)
「実際に道路に出るとどんな危険があるか予測できるよう彼女たちに教えています。
女性の運転解禁でサウジアラビアの経済レベルが高まると思います。」
6月24日長年禁止されていた女性の運転が許可された。
日付が変わるとともに女性たちは次々とハンドルを握りドライブに出かけて行った。
(女性ドライバー)
「歴史的な日です。
こんなことが起こるとは・・・。
でも現実になったのです。」
運転免許を取得したマイスーン・アブバクルさん。
サウジアラビア国内でジャーナリストとして働いている。
(マイスーンさん)
「免許証を手に入れてとても誇らしいです。」
これまでマイスーンさんは自分で運転ができないためドライバーを雇っていた。
予定の変更が多いジャーナリストの仕事を続けるうえで
どこに行くにもドライバーと予定を調整しなければならず
行動に制約を感じていたと言う。
(マイスーンさん)
「自分自身の力で行きたい所へ行くのが夢でした。
運転が許可されたらジープを運転して広大な大地を駆け巡りたいです。」
自宅の駐車場で車庫入れなどの練習をして解禁を心待ちにしていたと言う。
そして迎えた運転解禁日。
マイスーンさんは初めて公道で車を運転した。
(マイスーンさん)
「これがキングファハド通り
リヤドのメインストリートです。」
長年の夢がかなったマイスーンさん。
充実した一日を過ごし
運転できることの素晴らしさを実感した。
(マイスーンさん)
「今日は家から仕事に行って
それからスーパーに買い物に行きました。
家事と仕事を両立している女性にとって運転は本当に便利なことだと思います。」
車の販売店も新たな顧客の誕生に期待を寄せている。
女性客に対応するため新たに女性スタッフを雇用した販売店。
新スタッフは「運転解禁で車の売り上げだけでなく女性の雇用も増える」と期待している。
(新スタッフ)
「女性のお客様が最適な車を選べるよう
きちんと説明したいです。」
女性の運転を解禁する一方で
政府は強権的な姿勢も見せ続けている。
運転の解禁をはじめとする女性の権利向上を訴えてきた活動家らを一斉に拘束。
政府メディアは
“外国政府から支援を受けスパイ行為を行なった裏切りもの”と報道した。
この拘束の背景には
改革を快く思わない保守層の反発をかわす狙いがあるのではとの見方もある。
ただ専門家は
こうした強権的な支配体制のイメージを払しょくしないかぎり
近代化に欠かせない外国企業の誘致は難しいと指摘している。
(サウジアラビア専門家 ジェーン・キニンモントさん)
「サウジアラビアは外国の投資を求めているが投資は増えていない。
女性の運転解禁はサウジアラビアのネガティブなイメージを変えることにつながると思うが
一連の拘束劇はキャンペーンに水を差しかねない。」
イエメンへの軍事介入といった強硬な外交姿勢など
危うさもはらんでいるムハンマド皇太子だが
その改革は今後も勢いを保つのか
国際社会は今後も引き続き注視していくことになる。