私は校長のとき、よく職員に言っていました。生徒にも言っていました。
「自立とは、他者に頼らず、なんでも自分でできるようになることではない。
自立とは、自分でできることは自分でやるが、できないことに対しては他者に助けてもらえる人間関係をつくることである。」
生徒は中学生なので、おとなとして完全に自立は無理です。
そこで、「自立に向かう人」となり、卒業していってほしいと伝えていました。
ところで、今の時代は仕事でも何事においても、能力主義・成果主義の価値観が覆っています。
「できること」はいいことだ、「できる人」はいい人だという価値観を刷り込まれています。
みんなが「がんばらなければ」と思い、知らず知らずのうちに、他者との競争に駆り立てられます。
それが度を越して、「優れているか、劣っているか」「抑えこむか、抑え込まれるか」という関係に陥りがちになるのです。
でも、本来、他者は頼るために存在しているのです。
自立したおとなは、自分だけの力でできることは自分でするが、他者に頼らないとできないことに出くわしたときには、「助けて」と言える関係をもっている人のことです。