CubとSRと

ただの日記

ひやひや

2020年12月15日 | 日々の暮らし
 12月9日

 歯医者。9時半から。
 左側門歯の隣の歯の横っちょに、啄木鳥のつついた穴型の虫歯があった。
 やらしいことに、歯茎の辺りに隠れるようにして、在る。そいつを埋めてもらう。
 まず削るわけだが、
「麻酔をしないでやるので、ちょっと怖いかもしれませんけど、その方がきれいに治るので」
 、と能く分からない説明を受け、こっちも能くは分からないまま曖昧に返事をして、治療開始。
 もしかしたら、本当にもしかしたら神経に触るかもしれない。その時は当然激痛が走る。何十年も前の「歯の治療=ほぼ拷問」という凄惨な光景が展開され、大の男が悲鳴を上げてのたうち回り泣きわめき、治療後は涙を拭きながら診察室を出てくる、ということになるかもしれない。テレビで悲しい場面を見ただけで涙を流すような人間だ、自分のことで、それも神経を、なんてことになると一体どんなことになるか、戦々恐々。

 ということで、神経に触るかもしれない(歯科医からすれば、あり得ないことなんだろうけど)、と万が一の覚悟はしていたのだが、勿論、覚悟だけで終わった。
 とは言え、治療時の歯は安普請のアパートの壁を、手のひらで、バンバンと力一杯叩かれているような感じで、頭の震動具合も相まって、もしかして穴を削っていったら神経まで到達するかも、とスリル満点だった。
 だからこれが終わった時は、心の底からホッとしたのだけれど、続けて
 「今度は差し歯になっている方の前歯も虫歯になっているので、今日一緒に直します」
 、と言われる。
 
 以前から聞こうとは思っていたのだ。
 この歯は、何十年も前に差し歯にしたのだが、他の歯が経年劣化で短くなっていくのに、流石は差し歯、削れることなど全くなく、ここ数年で、逆にSRのフェンダーのメッキか豊胸手術、あ、いや、八百比丘尼のように全く歳を取らず衰える風がない。明らかに一ミリは他の歯より長い。セラミックだから当然だろうが、このままではますます一本だけ長くなって妙に目立ってしまう。
 それで今回の治療で、併せて差し歯をつけ直し、長さを合わせることは出来ないか、と思っていた。
 先に切り出された。
 「歯を使ってないので、仕事をしてないと思って伸びて来てるんです」

 他の歯がすり減ったのではなく、この歯だけが生長している、のだそうだ。
 差し歯の根元となる前歯は、差し歯の中に在って歯の先端として色んな情報を入手しようとするんだけれど、他の歯と違って歯同士噛み合うことがない。いつも差し歯という頑丈なヘルメットをかぶった形でいるから、情報を得ることができない。で、それならば、と他の歯と噛み合えるように伸びようとする。外観は差し歯のせいで普通であっても、歯の神経の立場からすれば「お前も一緒に働け。ついては背丈を伸ばせ」と指示をしているということになる。結果、差し歯だけが伸び続けるということに。
 片方のはさみだけが大きいシオマネキ、みたいなもんか?違うか。
 
 その辺の事情はともかく、おかげさまでまたもや「痛いかもしれない」という恐怖と、研磨機に依る強烈な脳震動と、戦うことになった。

 9時半から始まって10時前に一旦終わり、三十分のインターバルをとって、10時半から再開。病院を出たのは11時過ぎ。
 12月どころか確実に年越しになって、一月の半ばまで予定が入ってしまった。

 ・・・・・泥濘は続く・・・・。
コメント
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