「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)3月4日(木曜日)
通巻第6820号
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EVのめりこみは鼠の集団自殺に似ていないか
脱炭素2050など実現不可能なことは歴然としている
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豊田章男・トヨタ社長は2020年12月の自動車工業会で、「すべてがEVとなると、夏の電力不足は15%ほど不足する。原発十基分にあたる」と訴えた。
しかも日本は原発が止まっているので、発電は火力に依存している。となれば炭素は増えるのである。皮肉な話だ。
EVは鼠が集団自殺のために崖っぷちから海に飛びこもうと皆が走り出した構図である。
レミングは北半球の寒冷地に生息するネズミで、別名をタビネズミという。北欧やカナダで観測されるのはレミング鼠が崖から飛び降りて集団自殺すること、間歇的に大量発生し、そして絶滅寸前になる。
似ているなぁ。太陽光発電も風力発電も。そしてこんどはEVだ。
太陽光パネルの失敗は無惨な結果を生み出した。年間、2兆4000億円もの巨費が賦課金となっている。
風力発電も不発に近い。風が吹かない場所に風力発電設備を並べたのは、いかなる神経だったのか?
EVは政府補助金など、下請け企業の勃興のあとに待つ倒産の悲劇。当面株価が吹き上がるから米国の投機ファンドの20%が、じつはこのEVベンチャーに向けられている。
それゆえテスラ株価が豊田の三倍になるという珍現象を促した。
2019年度統計で日本の自動車のシェアは60・8%がガソリン車、34・2%がハイブリッド、残りはディーゼルが4%。そのほか、EVは0・5%でしかない。この0・5%のEVが将来の自動車市場席巻する、って話は誰が「創造」したのか?
長距離トラック、バス、長いドライブにEVは堪えられない。使用範囲は市内の定番コースとか、動物園や観光テーマパーク、世界遺産などの敷地内、工業団地内、通学バスくらいだろう。
▲「かれらの利権」の実態は何か
こうみてくると脱炭素とか「地球温暖化」という不思議な訴えは、その背後に「彼らの利権」が絡んでいることは言うまでもない。
クリントン政権下でゴア副大統領が地球温暖化の危機を訴えた。シロクマが絶滅の危機といわれた。ところがシロクマは増えていたことが分かった。珊瑚礁も増えていた。
「地球温暖化」は嘘だった。
だが、世界的規模で高校生らが地球を救えとデモ行進、グレタという煽動少女がヒロインとなった。温暖化は怪しいと言うと袋だたきに遭う。
正論を叫ぶ言論空間が圧殺されている。
無能な政治しか出来なかったオバマ政権は「パリ協定」を拙速に急ぎ、メディアの協力もあって世界的合意にもっていった。
たいへんな事態になることを本能的に関知したトランプ政権は、これを反古とした。ところがバイデンは就任初日にパリ協定復帰を声明した。そしてジョン・ケリー元国務長官を気象担当特使に任命した。ケリーとはまた、傲慢な人間を指名したものである。
悲劇はまたやってくる。
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昔、地球にストロー差し込んでどんどん資源を吸い取っていく天使(?)みたいなのがいて、遂には地球の中身がなくなってぺしゃんこになってしまう、というCMがあったっけ。公共広告機構だったか。
その頃、地球上の石油は後五十年ほどで枯渇するので新しいエネルギーを、と騒ぎ始め、ハイブリッドカーなら無駄が減る、その技術は既に実現可能だから、クルマ自体、あと五年もあれば作れる、と新聞記事で見た。
実際にプリウスが走り始めたのは記事を目にしてから十年以上経っていたように思う。
オイルショックの時はトイレットペーパーやペーパータオルがなくなった。冷害の時にはコメがなくなり、地震の時はインスタント食品がなくなり、ガソリンスタンドではガソリンがなくなり、コロナ禍では早々とマスクがなくなった。マスクは転売業者の買い占めだと言われているけど、以前のものと同じく、まずは個々人の買い占めがあったからこそ、だろう。
ハイブリッドカーを作れない欧州の会社はディーゼルエンジンを主流にしようと頑張っていたが、今度は「EV車は環境にやさしいから」と大量の石油を使って電気を作っている。
個々人のエゴと、各国・各団体の利権という名のエゴ。行き着く先は・・・・。そりゃ滅亡(破滅)しかないだろ。