MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『緑の霧』

2017年07月06日 | BOOKS
『緑の霧』
キャサリン・ヴァン・クリーヴ 作
三辺律子(サンベ リツコ)
ほるぷ出版


 「植物や虫と会話できる女の子」なんて言ったら、もっと子ども向けの魔法少女をイメージしてしまうかもしれないですけれど。
 でも、こちらはもっと複雑。
 もしかしたら、大人になってから読んだほうが分かる部分も多いのじゃないかとさえ思う物語です。
 嶽まいこ(ダケ マイコ)さんの描く表紙とその深い緑色の落ち着いたイメージが、この本に取って大きなプラスになっていると感じます。(挿絵も地図も素敵です)

 主人公のポリーは11歳。口にしないほうが良いことまで口にしてしまう悪い癖がある女の子。
 兄姉には劣等感を感じているし、人間の友だちはいないし、周りにある不思議なことを共有できる人もいません。
 それでも穏やかだった日々が、緑の霧が再び現れたときから、トラブルだらけの日々になってしまいます。
 自分の不安・恐れと向き合って、家族と農場を救うために、成長していくポリー。
 まずはポリーの気持ちで最後まで読んで、今度はもう一度エディスおばさんの気持ちで読んでみることをおススメします。

 臆病で自分に自信がない女の子と、「家族のため、家のため、人生を犠牲にすること」について深く悩む大人の女性。
 この物語は、どちらか片方の気持ちだけでは成り立たないものです。
 自分を大切に思う気持ちと、家族を大切に思う気持ち、農場や家を大切に思う気持ち、そして自分らしい人生を大切に思う気持ち。
 田舎を出て暮らしている私も、共感するところが多い物語でした。

 原題は「Drizzle」、「霧雨」という意味ですね。
 降らなくなってしまった「奇蹟の雨」が生まれ変わる瞬間、そんなイメージを持ちました。
   
 英語版の表紙は、なかなかポップ。タイトルの下に「Welcome to a magical farm where vegetables taste like chocolate!」って書いてあります。「チョコレート味の野菜がある、魔法の農園へようこそ!」ってところでしょうか。

 アニメ映画とかにも向いてるんじゃないでしょうか。
 高学年から中学生の読書感想文にもピッタリだと思います。


 
コメント
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