MOONIE'S TEA ROOM

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『うちの子は字が書けない』

2017年07月11日 | BOOKS
うちの子は字が書けない 発達性読み書き障害の息子がいます』
著者:千葉 リョウコ
監修:宇野彰(筑波大学教授、NPO法人「LD・Dyslexiaセンター」理事長)
ポプラ社


 「発達性読み書き障害(ディスレクシア)」のことが、本当に分かりやすく、気軽に読める1冊です。
 マンガの部分だけでも、読む価値があります。
 もっともっと多くの人が知識を持っていたら、「困りを抱えた人」を支えられるはず。
 是非、たくさんの人に読んでいただきたいと思います。

 「40人学級で3人の確率でいる」と帯にも書いてありますが、 実際、私が教育支援ボランティアで通っていたクラスにも、数人気になる子がいました。
 「板書や教科書の内容を(見えているのに)ノートにうつせない」「ひらがな・カタカナが思い出せない」「教科書を見ずに記憶で音読する(教科書を見ると読めない)」など。もちろん、テストの時間もつらそうにしています。
 ノートに赤鉛筆で文字や数字を書いてあげて、それをなぞらせるというサポートをすることもありましたが、授業中のちょっとしたサポートでは「焼け石に水」で、虚しくなることもしばしばでした。
 学年が上がると、漢字も増え、板書も多くなり、大変さは倍増します。3年生になる頃には、多くの子が「どうせ僕なんて」「私はやってもできないから」と、劣等感と あきらめを抱えているように見えました。

 この本は、息子さんのことを描いたマンガと、専門家である宇野先生との対談形式の情報コーナー「発達性ディスレクシアのこと、もっと教えて!」で構成されています。
 先生の解説の言葉は、どれも優しくて、とても親身で分かりやすいです。

 息子さんが実際に書かれた字や作文、字の練習のためのトレーニングカードの写真なども非常に参考になりますし、「幼児期・小学生から高校生まで、そして将来の職業選択を考える段階」まで描かれているのが素晴らしいと思います。
 「世の中には、こんな障害があって、こうやって乗り越えてきた先輩がいるんだな」という情報って、悩んでいる親にも子どもにも、本当に貴重です。

 発達障害があるということは、たしかに大変なこともいろいろあります。
 でも、早くに周りが気付いてあげることで、適切なサポートやトレーニングを始めることができたら、「知らないまま」よりも生きやすくなるはずです。
 適切なサポートができるところは、まだ限られていると思います。
 この本でも、適切なサポートが受けられているかというと、必ずしもそうではありません。
 それでも、家族全員が理解して共感して支えてあげているところが、この本の大きな魅力になっています。
 
 ほとんどの漢字に ふりがながあるので、小学生でも読むことができると思います。
 これを読んで、困っている同級生を理解できる子になってほしい……。娘にも すすめるつもりです。


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